2026年4月、ブロッコリーが52年ぶりに「指定野菜」に加えられた。消費拡大が続く中、安定供給への期待が高まっている。一方で産地の現場では、資材価格の高騰などを背景に生産の維持・拡大に課題も浮かび上がっている。岩手県の主産地・宮古地域を取材すると、期待と不安が交錯する現状が見えてきた。
52年ぶり新指定・消費量は3倍に
「指定野菜」とは、国内で特に消費量が多く、安定供給が求められる野菜を国が指定するものだ。キャベツやキュウリなどが対象となっており、価格が著しく下がった場合には、生産者が補償を受けられる仕組みになっている。

ブロッコリーは今回15品目目として加えられた。新たな指定は52年ぶりだ。
ブロッコリーは1970年代に日本に広まったとされ、近年は健康志向の高まりなども背景に家庭での利用が急速に広がっている。

国の統計によると、1人あたりの購入量は1990年の540グラムから、2022年には1619グラムへと約3倍に増加した。
出荷量も7万7000トンから15万7000トンと、約2倍に伸びている。
生産地は北海道から九州まで全国各地に広がり、国内需要を支える重要な野菜の一つとなっている。
宮古地域が主産地・農家の期待感
岩手県内では、宮古市や田野畑村を中心とする宮古地域が主な産地だ。2002年からブロッコリーの栽培が始まり、作付面積は着実に拡大してきた。
2025年度は25ヘクタールと、県全体の約半分を占める規模にまで成長。収穫は5月下旬から7月上旬にかけて行われ、現在はまさに最盛期を迎えている。
宮古市でブロッコリーを栽培する「ビレッジファーム新里」の代表・久保田智治さんも、この日収穫作業に追われていた。
久保田さんは、指定野菜への追加を前向きに受け止めている。
「指定野菜になってブロッコリーが注目を集めるのはとても良いこと。それだけ消費量も増えているということで、ブロッコリー農家としてはどんどん生産を頑張っていきたい」と話し、需要の伸びを実感する中で、生産拡大への意欲は大きい。
資材高騰が直撃
しかし、その思いに水を差しているのが資材価格の高騰だ。背景には中東情勢の影響などがある。
ビレッジファーム新里では、収穫したブロッコリーを鮮度良く出荷するため、氷を入れた発泡スチロールに詰めている。この発泡スチロールの価格が大きく上昇しているのだ。
久保田さんによると、農業を始めた2017年と比べて3倍以上に跳ね上がっているという。
コストの上昇は「指定野菜」化に伴い生産量の拡大を目指す生産者にとって大きな妨げとなっている。
久保田さんは、「発泡スチロールの高騘が、面積を増やして頑張ろうというところの妨げになっている。もし高騰がなければ、もっと産地として生き生きできると思う」と話す。
指定産地の壁・行政も支援強化
指定野菜の補償制度を活用するためには、「指定産地」として登録される必要がある。その条件の一つが、地域全体の作付面積が20ヘクタール以上であることだ。
宮古地域は2025年度、25ヘクタールと条件を満たしているものの、資材高騰の影響で生産規模を縮小する農家も出ており、先行きの見通しが不透明な状況だ。このため、現時点では指定産地の申請に踏み切れていない。
制度の恩恵を受けるためのハードルが、現場の課題と重なっている。
こうした中、県やJAでは新規就農者向けのマニュアルを作成するなど、宮古地域の生産量の維持・拡大に向けた取り組みを進めている。
宮古農業改良普及センターの小原貴子産地育成課長は、「宮古地域では20年前と比べて20倍以上の作付面積になっている。資材高騘の影響を大きく受けていて、今は様子を見ている状況。今後、皆さんの意見を伺いながら産地の取り組みを進めていきたい」と話す。
求められる制度支援
指定野菜の生産者への補償制度は、市場に出したものが対象となっている。
久保田さんは、「ものが無ければ勝負にならないので、しっかり作って出すのが農家の一番の仕事」としたうえで、「栽培を工夫して安定して出せるように頑張りたい」と語る。
同時に、「安定供給のために出荷する前の段階でもコスト面での補償があれば」とも話す。
指定野菜への追加で注目されるブロッコリー。消費の広がりとともに今後の成長が期待される一方、産地では資材高騰という課題にも向き合っている。
安定した供給を続けていくためには、生産現場をどう支えていくかが鍵となりそうだ。
