14年間親しまれてきた「富山きときと空港」の愛称を変えようという動きが出ている。浮上しているのは「高山」や「すし」を盛り込む案。インバウンド客を取り込み、赤字経営からの再起を狙う大胆な発想だ。では、県民や利用者はどう思っているのか。BBTが300人以上にふさわしい愛称は何かアンケートを実施した。

「赤字空港」が仕掛ける名前の勝負
発端は、今年4月から富山空港の運営を担う富山エアポートの岡田信一郎社長の一言だった。
「インバウンドに人気のある『高山』、寿司といえば富山の『すし』。『高山』『すし』を入れることによって富山にお越しいただこうと」
利用者が減り、長年にわたって赤字経営が続く富山空港。ピーク時には年間140万人いた利用者が、現在は40万人まで落ち込んでいる。そんな苦境を打開する策として浮上したのが、愛称の変更だ。


富山空港から岐阜県高山市までは直線距離で約60キロ。愛知県の中部国際空港・セントレアより断然近い。去年、高山に宿泊した外国人客は約98万人と、富山の約3倍にのぼる。「高山」という言葉を愛称に盛り込むことで、インバウンド客を富山空港経由で呼び込もうという狙いだ。

この提案に対し、新田知事も「正式名称である富山空港。ここに高山、すしを加えるのはいい案」と前向きな姿勢を見せている。
「きときと」への愛着は根強い
ところが街に出ると、聞こえてくるのは別の声だ。

「今までの名前でいいのではないか」「魚が新鮮な富山にふさわしい名前できときと空港は素敵」


「富山きときと空港」の愛称が決まったのは14年前。県の置県130周年記念事業として、県民への富山への愛着を深めるという目的のもと、公募によって選ばれた名前だ。
岡田社長はその点を踏まえたうえで、今回の変更は目的が異なると強調する。

「国際線は世界の何十億人を相手にしている。名前でマスマーケティングの観点でどーんとPRできないかというのが発想」
「きときと」は富山弁で「新鮮でぴちぴち」という意味だが、県外の人には伝わりにくい。岡田社長は「東京の知り合いに聞くと『きてきて』だと思っている。外国人には伝わらない」とも語る。インバウンドを意識したとき、愛称の「わかりやすさ」は重要な要素になる。
県民300人アンケートの結果は?

BBTは今月6日から4日間にわたり、県民や空港利用者など313人を対象にアンケートを実施。新たな愛称として何がいいかを聞いた。寄せられた回答には、個性豊かな意見が並んだ。

「魚が旨いと書いて鮨、この漢字を使ったきときと鮨空港がいい」(50代・県内)

「せっかく富山だからすし系がいいんじゃないかな。ますのすし空港で」(20代・県内)

「飛ぶものなので、ライチョウとか。立山系の方がいいかな。富山ライチョウ空港がいい」(20代・県内)

「ドラえもん空港」(10代・県外)

「富山ですもんね。ブラックラーメン空港」(40代・県外)

一方、否定的な声もあった。「高山は違うでしょ。富山の空港でどうして高山なのか、絶対おかしいと思う」(県内)という意見も少なくなく、当の高山市民からも「富山なのに高山っていうのも違和感がある」「必要ないと思う。富山は富山、高山は高山なので」と冷ややかな反応が返ってきた。


実際に高山を訪れる外国人観光客に取材すると、「羽田空港から来た」(ニュージーランドから)「大阪の空港から来た」(イスラエルから)など、富山空港を経由した旅行者はほとんどいなかった。高山を訪れるルートとしては、「セントレアから来られて岐阜、金沢を経由して旅行される方が多いイメージ」と、高山市内の宿泊施設、ワットホテル&スパ飛騨高山の森本鈴奈さんも話す。

1位「立山空港」、「高山」案は4%どまり

アンケートの結果、堂々の1位となったのは「立山空港」。24人から回答があり、「立山」が入った愛称を合計すると全体の13%を占めた。富山を象徴する山岳ブランドへの期待の大きさが見て取れる。
2位は「富山ドラえもん空港」。高岡市出身の漫画家・藤子・F・不二雄さんが生み出した国民的キャラクターを用いた愛称だ。3位には「富山すし空港」がランクイン。「すし」が入った愛称を合わせると全体の12%と、「立山」に次ぐ多さだった。そのほかの上位には、ホタルイカ、シロエビ、チューリップ、ライチョウを盛り込んだ愛称が並んだ。
一方、今回提案されていた「高山」を含む愛称は全体の4%にとどまり、必ずしも支持が高いとは言えない結果となった。

また、「富山きときと空港」のままでいいと答えた人も「立山空港」と並んで最多という結果になり、現在の愛称への愛着も改めて示された。
「ドラえもんも効くかもしれない」

岡田社長はアンケート結果についてこう語る。
「立山は海外の方にはどうなのかわからない。今回の愛称の狙いはインバウンド向け。すしというと『おもしろいね、この県行ってみよう』と思う可能性はある。ドラえもんもおもしろいと思う。商標の問題とか難しい部分はあるかもしれないが」

「すし」を空港愛称に使っている例は全国に存在しない。同じくすしのブランディングを進める北九州市の北九州エアターミナル総務課の担当者も「すしという言葉は入っていないですね」と答えており、富山にとってはチャンスともいえる状況かもしれない。
新田知事は今回の愛称変更について公募にこだわらず、7月上旬に予定されている岐阜県知事との懇談会までに決定したい考えを示している。「富山きときと空港」に代わる新たな顔となる名前が、どう決まるのか。富山空港の再起をかけた名前の行方に注目が集まる。
(富山テレビ放送)
