今、日本の海で起きる異変。
漁師:初めてだな。
漁師:歴史的な漁獲になってその瞬間に立ち会えたのは嬉しい。
なんと!初夏の京都近海でクロマグロが大漁?!しかし、その一方で…
漁師:全部で何匹、てか4匹しかいないよ。
記者:イカはこれだけしかありません。
マグロは豊漁!イカは高級食材化!?食卓に欠かせない海の幸に何が?
緊急取材した。

■京都の海でクロマグロが60匹も水揚げ
いま、日本の海の幸に大きな異変が起きている。
これは今月1日、京都府舞鶴市の市場で撮影された映像。なんと京都の海でクロマグロが60匹も水揚げされたというのだ。
漁師:(網を)寄せたときはバシャバシャでしたね、うれしいですね。ボーナスに期待です!
漁師:歴史的な漁獲になっていつも元気いっぱいの社長ですけど、その日はいつも以上に若い子よりはしゃいでました。
クロマグロと言えばその希少性と高い価格から「黒いダイヤ」とも呼ばれ、鮨ネタなどでも人気の高い魚。
実はいま、全国各地でクロマグロの豊漁が相次いでいて、新潟県佐渡市では連日にわたり100キロ前後のマグロが水揚げされている。
東京・豊洲市場のクロマグロの取扱量も去年と比べて2割増しとなっている。

■残念ながら13日はクロマグロの水揚げはなし
大漁のクロマグロ。いったい海で何が起きているのか?
13日朝、取材班は一日で60匹を水揚げした京都の業者を訪ねた。
記者リポート:午前4時45分すぎ、漁船が出航していきました。
この船が行うのは様々な種類の魚を狙う定置網。クロマグロの水揚げを見ることはできるのか?
伊根浦漁業倉幹夫社長:きょうは操業してみないとわかりません、期待はしてますけどね、わかりません。
船が港に戻りぞくぞくと水揚げされる魚。しかし…残念ながら13日はクロマグロの水揚げはなかった。

■「単価的には下がったとしてもある程度の価格帯を維持するという印象」と専門家
とはいえ、なぜ今日本の海でクロマグロがたくさん獲れているのか。水産資源の管理に詳しい専門家に聞いた。
水産資源管理に詳しい近畿大学有路昌彦教授:(マグロは)国際的な資源管理が行われているんですけども、これがやはり一定の効果があったと言えるのではないかと思います。
近年、クロマグロは乱獲などにより資源量が減少。漁獲枠は国際的に制限されてきた。今年の漁獲量増加はそういった漁獲制限の効果に加え、温暖化による海水温の上昇なども影響しているのではと、指摘する。
一方で、気になるお値段への影響だが…
水産資源管理に詳しい近畿大学有路昌彦教授:(マグロは)処理に手間がかかるんですよ。結局、単価的には下がったとしても、ものすごく下がるという訳ではなくて、ある程度の価格帯を維持するという印象。
沢山とれているのに価格はあまり変わらないという、消費者にとっては少しもどかしい状況。

■獲れたイカはたった2匹の船も 初セリは中止
さらに取材を進めると消費者にとってはもどかしいどころか、厳しい話も聞こえてきた。
伊根浦漁業倉幹夫社長:(Qこれだけ?)そうそうスルメイカはきょうこれだけ。(Q多い時は?)これの3倍、4倍。6月に入ってからはこんな量。
日本人の食卓には欠かせないイカ。それが今、記録的な不漁に見舞われているというのだ。
イカ漁師:わたしゼロだもん。ゼロ。こんなの初めてだ。
今月1日、北海道・函館で解禁されたスルメイカ漁。漁場にはまったくイカがおらず…
記者リポート:この船で取れたスルメイカはたった2匹だそうです。
イカ“2匹”!?一方、こちらの船は。
漁師:4匹しかいないよ!イカ専業という感じだからね。イカがないと。我々もいなくなってしまうよ。
なんと初セリは中止になった。

■イカの入荷は厳しいが需要は変わらず
ピーク時からみるとこの減少。おととしは過去最低、去年もそれに次ぐ少なさだった。関西の食卓にも影響は出ているのか。取材班は大阪の市場に向かった。
記者リポート:中央卸売市場にきています。様々な全国から魚が並んでいますが…イカはたったこれだけです。
この日もイカの入荷はかなり厳しい様子。しかし、変わらず需要は高いようで…
価格交渉中:隠岐の一番手。1万1000円。勘弁してくださいよ~イナオカさん。
コッテコテの価格交渉が始まった。どうやら交渉が成立したようだ。
スーパーの仕入れ担当者:(Q価格交渉みたいなのが行われてましたが)そこが大事やからね。(イカが)超貴重品になっているんで今、全くない状態になってる。
百貨店の仕入れ担当者:漁獲量も減ったりしてお客様に安い値段で提供できない。
仲卸業者:全盛期に比べたら10分の1くらいになっている。

■専門家は複合的な要因を指摘「減ってくると余計にとろうと頑張っちゃう」
もはやイカは庶民的な食材ではなくなったようだ。さらに異変はマグロやイカだけにとどまらず…
仲卸業者:(Q海に異変が?)だいぶある。いままでこの季節にここでこれがとれるわけないのにってやつがとれたり。
一体今、海の中では何が起きているのか。専門家は複合的な要因を指摘する。
近畿大学・世界経済研究所有路晶彦教授:資源(水産物)がものすごく減る時期があって国際的に取りすぎちゃったよねというところもあって。イカが減ってくると経営を成り立たせる中で余計にとろうと頑張っちゃうんですよね。
少ないからこそ、さらに競うあうように漁をするという構図。

また、気象条件も関係していると言う。
近畿大学・世界経済研究所有路晶彦教授:一言でいうと暑すぎますよね。これは断言できると思います。海水温は確実に上昇していていて単に天然魚の漁獲だけでなく養殖魚にもものすごいダメージを与えている。
マグロの豊漁に、イカの不漁。
今、改めて海の資源管理を考える必要がありそうだ。
(関西テレビ「newsランナー」2025年6月13日放送)
