県外生徒がもたらす新風――南砺平高校「全国募集」の挑戦

富山県の南砺平高校は、県立高校の再編が進む中、今年度から県内公立校で初めて「全国募集」を実施した。入学式には21人の新入生が並び、そのうち6人が県外からの入学だった。五箇山の豊かな自然や、全国大会で活躍する郷土芸能部の存在をアピールし生徒を募集。定員割れが続いていた小規模校に新たな息吹をもたらしている。

県外生は平日は学校近くの寮で生活し、週末は地元住民宅で下宿するという地域と密接に関わる生活スタイルを送っている。

「親が富山出身で興味を持った」「郷土芸能部で活躍したい」と、神奈川や山形、奈良など各地から集まった生徒たちは、新しい環境での挑戦に胸を膨らませている。山形県から来た生徒は「この3年間で郷土芸能部に入り、いろいろな大会で活躍できるよう頑張りたい」と意気込みを語る。
コーディネーターが支える多様な学びの場

この取り組みを支えているのが、京都府出身の地域おこし協力隊・杉山ゆうさんだ。伝統芸能への関心から南砺市に移住し、「全国募集」を支えるコーディネーターとして活動している。杉山さんは教員とは異なる立場で、募集活動や県外生徒と下宿先との調整、生活の相談役など多岐にわたる支援を行っている。月に一度の面談では、生徒たちの適応状況を丁寧に確認している。

「部活は少人数だが、みんな息がぴったりで心が合う」「不安なこともすぐ相談できる」と、生徒たちは新生活に安心感を持っている様子だ。

杉山さん自身も「小規模校は友達が少なくて寂しいのでは」と思っていたが、実際に関わる中で「一人ひとりが生き生きと役割を果たしている」と感じるようになった。郷土芸能部の練習にも顔を出し、「地域の方と生徒が仲良くなれば、卒業後も帰ってきやすい」と、地域を巻き込んだイベントの企画も視野に入れている。「生徒が南砺平に来るのも『コーディネーターがつないでくれるから』というくらいの責任感を持ってやっていきたい」と意気込んでいる。
多様性が生み出す学校の新たな魅力


全国募集とコーディネーターの存在は、学校の多様性と魅力を高めている。実際、こうしたスタッフを配置している学校では、学習環境を肯定的に捉える生徒の割合が高いという調査結果もある。県教育委員会は今後、南砺平での成果や課題を検証し、対象校の拡大も検討する方針だ。新たな風が地域と学校にどのような未来をもたらすのか、今後も注目される。