急速な高齢化社会を迎えている日本。
高齢者の終の住処として、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など様々な施設が提供されているが、施設に入らず、介護を受けながら住み慣れた自宅で暮らしたいとする高齢者も多い。
在宅介護とともに重要なのが「在宅看護」だ。お年寄りは、日々衰えていく体力、できなくなっていくことを実感すると心配事が増えていく。
少しずつ増していく不自由さに対して、「医療」ではなく「看護」で対応していくことがいま、在宅看護の分野で求められているという。

東京・豊島区にある一般社団法人「葵の空在宅看護センター」代表理事の入澤亜希さんは、「願いをかなえる」をモットーとして、日々の業務にあたっている。
「ご本人や家族の意向、どうしたいのか、逆にしてほしくないことを聞いて、それを一番に考えながら看護にあたっています。スタッフの年齢層は20代後半から50代。認知症の方もいるので、ご自宅へいってもカギを開けてもらえないというケースもありますが『来てくれると安心する』と言ってもらえた時などは、この仕事をやっててよかったなと思います」と入澤さんは話す。

ーー在宅看護の特徴は?
「葵の空在宅看護センター」代表理事 入澤さん:
看護師は医師ではないが、どういう状況で辛い症状がでているのか、治療歴なども踏まえて今後どのような症状がでる可能性があるのかを想定して、事前に対策をしておくことができます。症状が軽い場合は病院へ行かずに在宅で様子をみることもあり、高齢者への負担軽減につながることもあります。
訪問看護が社会的に注目されたのが、コロナ禍の時だという。医療現場がひっぱくするなかで、訪問看護が在宅の高齢者を支えた。介護士が現場に派遣されない場所では、食べ物が放置されごみのなかで寝ている状態の高齢者もいたという。看護だけでなく、掃除や洗濯まで手伝い、コロナ禍を乗り切ったそうだ。

10年来、在宅看護の必要性と看護の自立性を訴えている笹川保健財団の喜多悦子会長は、地域医療の質を維持するには、今、少し軽やかな在宅看護が重要だという。
「高齢化社会を迎えた日本は、プライマリー・ヘルスケアをより真剣に考える必要がある。つまり高齢者の健康維持のための予防活動が不可欠であり、それを判り易く説明できる相談相手が訪問看護師です。こうした取組みが広がることで、不要な検査や投薬が減り、膨れ上がる社会保障費の問題の解決にもつながります」と話す。
財団では、在宅・訪問看護事務所の起業支援活動を2014年から続けている。
【取材・執筆=フジテレビ社会部 大塚隆広】