備蓄米の放出など、米の価格についての関心が高まる一方で、猛暑などの天候リスクもあり、農家の経営は不安定さを増しています。米作りをこれからも続けていくために、新たな試みも始まっています。
■「コメ不足」解消へ…暑さに強い“新品種”
愛知県豊田市の「はっぴー農産」では、田植えのシーズンを迎え、新しい品種の田植えが行われていました。

はっぴー農産 代表取締役 黒野貴義さん:
「だいちのかぜ」という品種を作っていたんですけど、ここ数年の高温で高温障害が出てしまっていて、収量も下がってしまっていて。「あいちのこころ」は高温に強いということなのですごく期待しています。
価格が高騰している要因の一つが「コメの不作」で、背景には高温や渇水により出来が悪いことによるコメの供給量の減少がありました。
そこで、愛知県内では高温に強い新品種「あいちのこころ」の生産を始め、はっぴー農産でも、暑い時期と収穫の時期をずらすために、5月の下旬から田植えをします。

5キロで2000円前後の備蓄米の販売が開始される一方で、コメの平均価格は4000円台と、1年前の2倍ほどの高値が続いています。

農家の立場では、コメの価格高騰をどうみているのでしょうか。
はっぴー農産 代表取締役 黒野貴義さん:
今までがすごく安かったというふうには思っているので。(今の価格は)急激に上がりすぎたのかなという印象がありますし。
気候や価格の変動など、米作りは様々なリスクを抱えています。そこで黒野さんはリスクの分散とコスト削減を狙い、苗を育てず種を直接水田にまき育てる「湛水直播(たんすいじかまき)」という方法も取り入れています。
■米粉でバームクーヘンも…収入の“新たな柱”に
米作りをこれからも続けるために、黒野さんは新たな取り組みを始めています。
はっぴー農産 代表取締役 黒野貴義さん:
ここに入れてあるお米が「ミズホチカラ」の玄米になります。白い部分が多くて普通に主食として食べるときは、パサパサしておいしくないんですけど、粉にするとすごく米粉に適したいい品種で。

ここで育てられているのは、米粉用米の「ミズホチカラ」です。「ミズホチカラ」を玄米のまま製粉してふるいにかけ生地をつくり、専用のオーブンで綿棒にまきつけた生地を回転しながら焼くとバウムクーヘンが完成しました。

一体、なぜ米農家が自らバウムクーヘンを作っているのでしょうか。
はっぴー農産 代表取締役 黒野貴義さん:
(数年前に)本当にコメが安くて、会社経営として、このままコメを作り続けていいのかなという危機感をずっと持っていました。それでも田んぼをやめちゃうわけにはいかなくて、その中で米作りを続けていくためには、米粉商品を作るなら田んぼを作りながら新しい商品ができるかなと思い、取り組み始めたのが最初で。
2年前には店も構え、バウムクーヘンの販売を始めました。米粉の玄米で作るバウムクーヘンはグルテンフリーで、小麦アレルギーの人も食べられます。

また、自身の畑で作った桃を生地に練りこみ、桃味の商品を作るなど、農家ならではの工夫もされています。
黒野さんはこうした取り組みを通じて、米作りを続ける環境を維持したいと考えています。
はっぴー農産 代表取締役 黒野貴義さん:
加工品ですと天候とか関係なく、まあ季節需要はありますけど、それでも安定した生産や販売ができるので、それは農業経営以外の新しい収入としてすごくありがたいなと思っています。私たちがお米作るということをしながら、地元の田んぼを守っているという意味合いもあるんじゃないかなという思いで、コメ作りを続けています。
(東海テレビ)