石川テレビが制作した映画版「能登デモクラシー」が全国の映画館で上映されている。五百旗頭幸男監督に、作品に込めた思いを聞いた。

過疎と民主主義の崩壊、そして再生

「今回、映画化するにあたって番組によって町が変わっていくというところが実は大きな肝になっていて、番組版から比べると過疎と民主主義の崩壊、さらにそこに民主主義再生っていうところまでを捉えたのが今回の映画」と五百旗頭監督は語る。

五百旗頭幸男監督
五百旗頭幸男監督
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石川県穴水町で手書きの新聞を発行する元中学教師の滝井元之さん。滝井さんは、二元代表制が機能せず、利益誘導型の町政が蔓延する現状に警鐘をならしている。

滝井元之さん
滝井元之さん

五百旗頭監督は「地元局としてマンパワーの問題があったりして、なかなか報道では奥能登の小さな自治体には常に記者を置いておくということはできないし、でもそういったことが常態化したことによって震災前の穴水町の状態が生まれていたのは事実。そこに対するテレビ局としての反省は当然あって然るべきだし、そういう視点で取材に入ったっていうのもある。いろんなアレルギー反応も起こりました。そういったことも含めて撮っていこうという構想のもとに取材がスタートした」と話す。

民主主義の土台と相互尊重

取材を通し役場と議会のいびつな関係が浮き彫りとなる中、能登半島地震が発生。そして2024年5月、番組版の「能登デモクラシー」が放送される。すると町に変化が現れ、「民主主義」の再生が始まる。「町長や議員は自分がどういう風に描かれるかということを理解したうえでその後、僕の取材にちゃんと応じてくれている」と五百旗頭監督は話す。

「お互いの立場を尊重する、民主主義の根幹をなす土台となる部分っていうのは穴水町にすごく備わっていると、この2年間取材をしていて感じているので、そのあたりにも目をむけていただきたい」富山市議会の不正を暴いた「はりぼて」や石川県政などを軸にムラ社会の実像に迫る「裸のムラ」を手がけた五百旗頭監督。今回の映画にはこれまでの作品とは違った思いが込められているという。

制作を通じて芽生えた地域への思い

「作品を見た人の行動変容につながったり題材が変化していくっていうことはそれはそれでうれしいんですけど、それを目的化してしまうとそれは僕たちの驕りになるからすごく危険だなんていう風に自制的だったんですけど。今回、映画の制作段階に入ったときにそこは決定的に変わっていて、震災前後の穴水町、滝井夫妻のこともずっと取材していく中で素直に一人の人間として自分の作る作品によって穴水町がいまよりも良い町になってほしいなっていう風に切に思うようになったんです。それがたぶん今回の作品の肌ざわり、手触りの違いにはなっていると思うんですけど、引き続きそういうスタンスは変えずに取材はしていきたい」映画「能登デモクラシー」は全国の映画館で上映されている。

(石川テレビ)

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