「ミスタープロ野球」として国民から愛され、選手・監督として輝かしい成績を残してきた読売巨人軍の長嶋茂雄終身名誉監督が6月3日の朝、肺炎のため亡くなりました。89歳でした。

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「サン!シャイン」では監督時代の長嶋茂雄さんと共に戦った元読売巨人軍の角盈男氏、元木大介氏、清水隆行氏、髙橋尚成氏に長嶋さんとのエピソードを伺いました。

長嶋さんの「オーラ」

MC 谷原章介:
印象に残っている長島茂雄さんとのエピソードは何でしょうか?

髙橋尚成氏
髙橋尚成氏

髙橋尚成氏:
数多くあるんですけども、その中の一つとして、1年目のキャンプで球団が家族を招待してくれるんです。その時に父が長嶋さんと初めてお会いして、長嶋ファンだったうちの父が、 あんなにうれしい顔をしたのは今まで一度も見たことなかったんですけど、それぐらい長嶋さんの存在というのは人のことをハッピーにさせるということを改めてそこで感じて…、親孝行ができたなというふうに思いました。

角盈男氏
角盈男氏

角盈男氏:
一番印象に残っているのは、監督に叱咤激励されるときです。
西本(聖)がデッドボール投げてそれで調子が狂って僕はコントロールが悪くてボール先行で監督に「2人、部屋来い」って言われて。監督が僕と西本の前を通りながら頭をこずくんです。

MC 谷原章介:
長嶋さんは怒る方なんですか?

角盈男氏:
あの時だけですね。今思うと、そういう叱咤激励を受けたのは僕と西本だけなので、僕と西本の宝物ですね。そのときも監督は目に涙浮かべながら俺は怒られてたんで「逃げるな!」って。それが一番ですね。

元木大介氏
元木大介氏

元木大介氏:
僕はプライベートですね。
野球の思い出もたくさんあるんですけど、仲人をしていただいたんで。
もともと(長嶋)一茂さんに仲人をお願いしていたんです。
そしたら長嶋さんが「俺がやってやるよ」って急に言ってこられたんで。恐れ多くて…と思ったんですけど「いいから俺がやってやろう」って言って。
僕の結婚なのに、親が長嶋さんが仲人の方を喜んでたっていう。

清水隆行氏
清水隆行氏

清水隆行氏:
最初にお会いしたときのオーラですかね。存在感が圧倒的だったので。学生の時は「オーラ」という言葉は聞いたことはあっても、どういったものが「オーラ」なのか分からなかったんです。入団発表の時に初めて、監督はスーツだったんですけど、その時にすぐ「これがオーラなんだ」って。光って見えました。大きく見えましたし、私だけじゃなくてお会いした人みんな言うんですよね。たくさん人がいてもそこだけが違う空間になっているような。どこにいるかすぐ分かるくらい。

「勝つ!」メンタルの教え

宮澤智アナウンサー:
大舞台で活躍されてきた長嶋さんですが、チームメイトの皆さんにどういうマインドでいればいいんだよという教えはありましたか?

角盈男氏:
入団して1年目か2年目か、ミーティングで監督にメンタルのこと言われたんですよ。40数年前ですから、その頃と言ったら根性根性ど根性の世界で、その時にメンタルのこと言われて。「全部自分でプラス思考、いいことを考えろ」と。
例えば、「9回サヨナラの場面でランナー2塁3塁1点差で負けてる、1塁空いてると。ワンちゃん(王貞治氏)が敬遠。俺の打席でピッチャーがこれ投げてあれ投げてこう投げてくるそれを打って三遊間のところへ行ってサードランナーが帰って同点、セカンドランナーが帰ってサヨナラ勝ち。俺は1塁ベースを踏んでジャンプしてヘルメットが飛んでヒーローインタビューはこう言ったあとこれで締めよう」と。そこまでネクストサークルで考えてた。
そういうことを細かく考えれば考えるほどそうなる確率が高いと言われたんですよ。

元木大介氏:
技術っていうよりも、精神面で「お前こうだぞ、いい結果出るんだから」っていう言い方はしてきますね。一番わかりやすいのは「勝つ、勝つ、勝つ!」
10.8決戦のミーティングで初めて、ああいうことを長嶋さんが大声で。
いきなり「さあ行こう」っていつも言う感じだったのが、急に「勝つ、勝つ、勝つ!!」って大きな声で言った瞬間に選手全員がブワーって出て行ってホテルを。本当に僕らも初めてゲーム前に鳥肌が立つっていう。「さあ始まる!」っていう感じでした。

清水隆行氏:
“勝つこと”に全員をフォーカスさせていたといいますか、個人的にどうこうというよりも、「とにかく勝つんだ」ということを常におっしゃられていましたし、マイナスなこと、ネガティブなことは言わないんです。どんなに連敗していても「きょう勝てばどうってことない」。負けが込んでいても「最終的にうちが優勝するんだ」っていうことはずっと言い続けられていたので。ミーティングで難しいことというよりもそういう話をよくされていました。

元木大介氏:
普通の監督と違うのが、ずっと連敗が続くと長嶋さんが気分転換で「お前たちでスタメン決めろ」ってスタメンが決まった時もありましたし。
最後ホテルに着いた時にいつも「明日頑張るぞ」って言って終えるんですけど、「きょうは門限なしだ!飲みに行ってこい!」って。
自分もやっぱり苦しかったのを覚えてるから、選手にもそうやってやらせてくれる。
そう言われたらみんな「おう行こう!」ってスッと忘れて。「長嶋さんがそうやって言ってくれたんだったらあした頑張らなきゃな」っていう気持ちにさせてくれるんですよね。

MC 谷原章介:
長嶋さんってバッターじゃないですか。ピッチャーへはどういう指導法だったんですか?

髙橋尚成氏:
とにかく気持ちを「逃げるな」っていうことをよく言われましたね。
僕はどっちかというとコントロール重視のピッチャーなので、どうしてもかわす方にフォーカスがいってしまうんですけど、「どんどん攻めて自分の持ち球をどんどん生かしていきなさい」ということをよくおっしゃっていましたね。

背番号「3」ファンのための“演出”

酒主義久アナウンサー:
皆さんにとっても長嶋さんの忘れられない言葉は何かありますか?

元木大介氏:
言葉っていうよりも「ファンを大事にする」っていうことをよく言われました。やっぱりファンあっての俺たちだっていうことで、背番号3番を見せた時もそうですし、なかなか脱がなかったじゃないですか。
あれも、何日ぐらいが一番お客さんが来るんだって言って、33番つけていたのを江藤(智)さんにあげた。
江藤さんがノックを受けているその中に僕も入ってたんですよ。終わってからの練習なんで、大体2人組なんですよ。長嶋さんが演出して「元木いらない」と。背番号3脱がした時に、つけていた33を江藤。江藤に「俺が打つんだ」って言ってそれを演出しているんです。
日曜日の一番お客さんが多いとこで、普通の球場だとスタンドがあるんで、ちょっと遠いんですよ。ああいうところっていうのはサービスするところなんでお客さまがネット越しに見れるんですよ。だからここでやろうって。全部自分で描いて、「魅せる」ていうのがあるんです。本当にファンの人を大事にしています。

(『サン!シャイン』2025年6月4日放送より)