「突然、蛇口をひねっても水が出ない」

そんなリスクが全国でも高まっている。

老朽化の恐れのある水道管
老朽化の恐れのある水道管
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■59年前の水道管が限界!? 大阪市で緊急点検 「今日安全でも明日は破裂も」

記者リポート:西淀川区にきています、ここでは水道管の検査が行われています。

3日、大阪市水道局が緊急で行ったのは、老朽化の恐れのある水道管の検査。水道管は59年にわたり使用されていたという。

検査を始めた理由、それは…。

大阪市水道局北部水道センター 安部進所長:大阪市で起きた漏水を受けての調査になります。古い管もたくさん残っている。きのうまで点検で安全だった所が、きょう破裂するというのが出てきますので…。できるだけ早く手をつけて、できるものからやっていく。

5月、大阪市城東区で発生した道路の冠水。老朽化した水道管の破損が原因だった。

さらに、ことし4月、京都市でも…。

記者リポート:割れた道路から、大量の水があふれ出ています。

周辺は1分もたたず川のような状態に。広範囲に渡っての浸水被害となった。

ことし4月京都市で起きた道路冠水
ことし4月京都市で起きた道路冠水

■「穴だらけ、土むき出し」 50年前の水道管の内部映像が物語る都市の危機

老朽化した水道管の中はどうなっているのか。

これは交野市が制作した動画。50年以上前に設置された下水道管の中の映像だ。

内部にずれがあったり、さらには管が割れ、土がむき出しに。

この状態に気づかずどんどん穴が大きくなると、道路の陥没などを引き起こす恐れがあり、交野市は水道管の破損による事故を未然に防ごうと、こうしたカメラでの調査を行っている。

交野市下水道課YouTubeより
交野市下水道課YouTubeより

■大阪の水道管、35.6%が限界 専門家「地球4周分の老朽管が崩壊の危機」

そもそも…なぜ今、水道管の老朽化によるトラブルが相次いでいるのか…?

上下水道事業に詳しい近畿大学の浦上拓也教授に話を聞くと。

上下水道事業に詳しい近畿大学 浦上拓也教授:水道管が整備されたのが高度成長期。普及率が90%超えるのが1980年ですから、それまでに急速に整備された水道管が今、現在一気に老朽化しています。

当時、水道が整備されたのは都市部から。そのため、今人口が多いエリアを中心に老朽化が進んでいて、こうした水道管は全国でおよそ17万キロに。

これは、地球およそ4周分の距離にあたる。

そして、全国でみると大阪府は老朽化率35.6%と全国ワーストに。

なぜ水道管の更新が進まないのか?

上下水道事業に詳しい近畿大学 浦上拓也教授:一番安い水道管でも工事するのに、例えば1キロあたり1億円とか、都市部になると2億円以上と非常に大きなお金がかかる。(全国で)更新を計画的に進めようとすると、年間1兆8000億円の投資額が必要とされています。ただし実際にどれだけの投資がされてるかというと、1兆3000億円で、5000億円が過小投資になっています。更新されなければならない水道管が先延ばしされてる。

上下水道事業に詳しい近畿大学 浦上拓也教授
上下水道事業に詳しい近畿大学 浦上拓也教授

■人工衛星とAIで水道管の危険箇所を特定! 的中率5割の新技術

このままの状態が続けば、より高まる水道管破損のリスク。

そんな中、最新技術を使って効率よく検査を進める大阪の自治体がある。

摂津市水道施設課 名古屋幸祐課長:人工衛星から電磁波を出しまして、水道水の広がりを見つけるシステム。

摂津市が去年12月末に試験的に導入したのは、AIと衛星画像を用いた解析調査。

人工衛星から地中に向けた電波が、水道管から漏れ出した水道水に反応。それをAIが解析することで、水道管の漏水が疑われる地点を特定できるシステムだ。

摂津市水道施設課 名古屋幸祐課長:黒い線がですね水道管になりまして、黄色く塗られている箇所、こちらの方が漏水が起きている可能性がある。

摂津市内にある水道管は241キロあり、これまでは漏水検査を5年かけ、全ての区間で行っていたが…AIと衛星画像により、漏水が疑われる地点を絞ることができ、今はその情報をもとに調査を進めている。

摂津市水道施設課 西口哲也係長:赤、黄、緑で色分けしまして、赤のところについては一番漏水の可能性が高いと判断した。赤の方から我々で調査しようと、現在やっている最中。

漏水が疑われる場所を調査したところ、実際におよそ5割が漏水していたということだ。

ただ、早期発見や被害を最小限に抑えるためには、“人の目”も必要だという。

摂津市が試験的に導入したシステム
摂津市が試験的に導入したシステム

■「雨じゃないのに水が?」街の異変で漏水を発見

私たちが漏水の予兆に気づくことはできるのか、専門家と街を歩いてみると…。

上下水道事業に詳しい近畿大学 浦上拓也教授:雨水が通る水路なんですけど、雨が降ってないのに、ちょろちょろ水が流れていたりすると、横から水道管の水が漏れ出て、流れている可能性はあるかもしれない。

雨の日ではないのに道路に水が染み出ていたり、不自然に隆起していたりする場合は、地下で水道管が破損している恐れがあるという。

私たちの生活に欠かせない水道。老朽化して大きな事故になる前に…対策が急がれる。

「雨じゃないのに水が?」
「雨じゃないのに水が?」

■大阪では水道料金の値上げに踏み切る自治体も

大阪では水道料金の値上げに踏み切る自治体もある。

豊中市:ことし2月に平均8.9パーセント値上げ

東大阪市:ことし10月平均約19パーセント値上げへ(料金改定がなければ今年度中に赤字へ)

大阪市:10年前から料金据え置き(基本料金は月850円)だが、このままだと2032年度に赤字の可能性。

値上げに踏み切る自治体
値上げに踏み切る自治体

■「水道以外」の事業とともに予算に組み込むという案も

「水道事業は独立採算で、各自治体人口が減って、事業自体が立ち行かなくなる」と危機感を示した大阪大学大学院安田洋祐教授は、新たな提案をした。

大阪大学大学院安田洋祐教授:例えば水道管を地震に強い耐震性の高いものに変えるとか、電線やガス管と一緒に入れ替えれば、水道事業だけではなく、もうちょっと広く人々の暮らしに役立ちますよね。そういう名目があれば、水道事業の他から予算をつけるって事もやりやすくなるんじゃないか。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年6月3日放送)

大阪大学大学院安田洋祐教授
大阪大学大学院安田洋祐教授
関西テレビ
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