能登半島地震から1年5か月が経過した今も、富山県滑川市では液状化被害の復旧対策に苦慮している。「人それぞれの意見がありまして全体的な意見が集約できていない」と担当者が語るように、比較的小規模な被害だからこそ直面する難しい課題がある。
県東部でも確認された液状化被害
能登半島地震による揺れは、県内に震度5強の揺れをもたらした。県の集計によると先月15日時点で県内の住宅被害は2万2806件に上り、氷見市が6763件、高岡市が5490件と県西部に集中している。

しかし、液状化現象による被害は県東部の富山市の一部や滑川市でも確認されている。滑川市の常光寺や堀江地区ではグラウンドに亀裂が入るなどの被害が発生した。
滑川市都市計画課の宮島秀嗣さんは「噴砂で砂が吹き出たり傾斜とか基礎もひびが入っていたり、一部は住家に関して傾いているところも多少は…」と当時の状況を説明する。
被害は小規模だが対策は難航

滑川市の住宅被害は212件、そのうち液状化被害を受けたのは15件と比較的小規模だ。被害の程度も全壊や半壊ではなく一部損壊にとどまり、住民は避難することなく住み続けている状況である。
「住民の方は住んでいる状態で避難しているとかではないので、大きな被害ではないと認識している」と宮島さんは述べる。

滑川市によると、この地域は近くに「暴れ川」と呼ばれる屈曲した上市川が流れており、河川改修によって地盤に砂の層が含まれていることが液状化発生の一因と考えられている。
「地下水位低下工法」の導入に住民負担 合意が壁に
対策として滑川市が選定したのは「地下水位低下工法」だ。この工法は地中に管を通し、ポンプで強制的に水位を下げる方法で、他の被災市も採用を決めている。
しかし、この工法には大きな課題がある。工事完了後もポンプの稼働が必要なため、電気代や地下水位の検証に継続的なコストがかかり、その住民負担をどうするかが問題となっている。
「現在、面的整備をさせていただくとなれば、地下水位低下工法という選択肢がありますよと提案している状態。するにあたっては住民の合意を得ないと進めないので、進めるにあたっても合意があってから実証実験とか長いスパンで見ていただかないと進めないとお伝えしてある」と宮島さんは説明する。
個別対応と全体対策の間で

市はこれまでに住民説明会を4回開催したが、個人で対策を行った住宅が数件あることや維持費の負担問題もあり、住民の合意形成には至っていない。
「人それぞれの意見がありまして、全体的な意見が集約できていない。周りの方では個別に対応されている方もいるので、意見集約ができていない」という現状だ。
能登半島地震から1年5か月が経過した今、被害が比較的小さかったがゆえの対策の難しさが浮き彫りになっている。復興へ向け、県東部の市も課題に直面している。