安倍晋三元首相の妻・昭恵さんが5月29日、ロシアのプーチン大統領とモスクワで異例の面会をした。
面会では昭恵さんが涙ぐむ場面もあり、多くの人を驚かせた。
20年以上にわたり安倍元首相の“番記者”として取材にあたっていたジャーナリストの岩田明子さんは、5月31日放送の関西テレビ「ドっとコネクト」に出演し、昭恵さんを招いたプーチン氏の思惑について「弔問外交に加えて、タイミングを見てみると政治的思惑もなきにしもあらず」だと見解を述べた。

■「各国との橋渡しを担っていきたい」かねてから昭恵氏は発言
まずプーチン大統領と昭恵さんが交わしたやりとりをまとめる。
プーチン大統領は、「ご主人(安倍元首相)は固い決意と同時に、心温かく非常に誠実な人でした。彼が強く追求したのが両国の平和条約の締結だったことを私は知っています」と話した。
そして昭恵さんは、「ウクライナをめぐる困難な状況が始まった時、夫はプーチン大統領との会談を望んでいた。困難な時期にも文化や人々の交流が発展することを願っている」と応じている。
昭恵さんは去年12月に、アメリカ大統領就任直前のトランプ氏と面会している。
昭恵さんは、「各国との橋渡しを担っていきたい」ともコメントしている。

私人である昭恵さんが、この時期にロシアの大統領と会うことができたきっかけ・思惑について、プーチン大統領が以前から安倍元首相の弔問をしたいという意向は以前から伝えられていて、そのタイミングが「ここだったのか」と岩田明子さんは納得したと言う。
岩田明子さん:プーチン大統領が遅刻をしないで入ってきて、花束を渡すというのも、相当異例だと思います。私がいろんな人の同行で行くと、大体待たされる。それが定刻に現れたというのは、本当に珍しいことだと思いますが、どうも見ているとロシア主導で日程とかが決まっていったように私には見えました。

■弔問したい意向を伝えていたプーチン大統領 そのタイミングが「ここだった」と岩田氏
岩田明子さん:もともと安倍元総理が凶弾に倒れた時、岸田政権下で、ウクライナ侵攻が始まっていましたので、プーチン大統領の資産凍結や外交官の追放とか、事実上の外交が絶たれていた時でしたので、プーチン大統領はプライベートなルートで昭恵さんに手紙を送っていたんです。
岩田明子さん:そこには安倍元総理の実績とか努力とか、そういったことへの賛辞であるとか。それから『自分は友を失ったのに行けなくて悲しい』ということで、自分が行けなくなってしまった代わりに、安倍元総理のお母様の洋子さんですとか、奥様の昭恵さんですとか、家族のどなたかにぜひ会えればと手紙が送られていた。
岩田明子さん:国葬の時も文化芸術大臣が派遣されたのですけど、その時もまたプーチン大統領のメッセージが託されていて、弔問をしたいという趣旨が伝えられていたんです。だから接点が生まれるとしたらどこなのかなというふうに思っていたのですけれど、ここだったんだと。
岩田明子さん:私も当日夜中の1時40分~50分前に、モスクワの知人たちからワーっと電話が入って、キリル文字(ロシア文字)のショートメールがバーって入って、『なんか昭恵んが来ているらしいんですけど』って言われて。(日本のマスコミを含めて全然知らなかった?)はい、間もなくすぐにクレムリンから発表になって、夜中にバタバタになっていましたね。

■外交はやり取りする“パイプが多い”ことに意味があると岩田氏
プーチンさんは追悼をしたくて、昭恵さんをロシアに呼んだのか?
岩田明子さん:追悼したい、弔問外交したいということに加えて、このタイミングを見てみると、政治的思惑もなきにしもあらずだと思いますね。
岩田明子さん:アメリカが今、追加関税をしていて、同盟国との関係が微妙になっている。プーチン大統領はウクライナの問題で、トランプ大統領が怒っているという状況。6月2日ごろだったと思いますが、ロシアとウクライナの高官協議がイスタンブールで行われる。
岩田明子さん:非常にセンシティブな中で、ロシアは中国や北朝鮮と関係を深めていますけど、国際社会の中での孤立感を少しでも薄めるために、『西側陣営にもこういう親しい友がいるんだ』というアピールにはなるかなと。
石破首相に会うのではなくて、安倍昭恵さんなのか?
岩田明子さん:やっぱり民間人だというところも動きやすいです。

プーチン大統領の印象をよくするために利用されたのではないかという見方もでき、一私人である昭恵さんがこのような行動をとることに問題はないのだろうか。
岩田明子さん:本当だったら外務省や官邸とかと、少しタイミングを相談するという選択肢はありだったと思うんですけど、ただ“パイプ”という面で、外交はやはり相手が何を考えているのか全く分からなくなる状態が一番怖いので、万が一の時に何かメッセージをやり取りするパイプが多いというのは(意味がある)。
岩田明子さん:外交というのはものすごく熾烈なんですよ。だからドイツのメルケルさんもそうでしたけど、ロシアには制裁を打ったり、非常に厳しい対応をするけれども、水面下では交渉をやるという。これ(昭恵さんの面会)は交渉ではなく、弔問外交です。外交ですらありません。

(関西テレビ「ドっとコネクト」5月31日放送より)