記録的な不漁が続くスルメイカ漁。北海道函館市では6月1日に漁が解禁となるが、漁獲量の見通しはどうなっているのだろうか。専門家によると、2025年は「注目する年になる」ということだ。
記録的不漁が続く函館のスルメイカ漁
6月1日の漁解禁を前に行われた大漁祈願。漁業関係者など約40人が集まり、豊漁や安全を祈願した。今シーズン、函館市からは15隻が漁に出る予定だ。
「おいしいイカを届けたい気持ちはあるが、いないものは取れない。期待はしない」
「イカの街・函館だから頑張って取りたいと思うが、漁船の燃料費もかかるので大変」(いずれもイカ漁を行う漁師)
函館市のスルメイカ漁は、記録的な不漁が続いている。

2024年は前代未聞の大不漁
2024年の初水揚げは約200キロ。2023年の1.3トンを大幅に下回る前代未聞の不漁だった。昨シーズンの市内の卸売市場での取り扱い量は400トンと、過去2番目の低さ。10年前の9分の1にまで減っている。

観光客でにぎわう函館朝市の名物「イカ釣り」だ。スルメイカが取れない今の時期はヤリイカを使っている。
釣ったイカはその場でさばいて刺し身に。

「コリコリしていて、おいしい!」(札幌市からの観光客)
「とてもすばらしい、おいしい」(香港からの観光客)
「きのう来たが休みだったので、またチャレンジしてきょう来た」(埼玉県からの観光客)

「イカ釣り」のコーナーが最も活気づくのが、スルメイカの取れる夏の時期だ。
2024年は不漁の影響で「イカ釣り」ができない日もあった。関係者は2025年の漁の行方に気をもんでいる。
「イカは大切な存在で、ないと函館は困ってしまう。期待感はある。今年は初水揚げの6月2日から『イカ釣り』ができるよう祈っている」(活いか釣堀 櫻庭のり子さん)

水産加工業界も地元イカに期待
水産加工業者にとっても漁獲の行方は切実だ。
「国内原料の比率は下がっていて、かつての10分の1以下。加工業界も地元のイカが取れるか取れないかが商売に大きく影響する。何とか、たくさん取れてほしい」(トナミ食品工業 利波英樹社長)

創業110年を超える老舗「小田島水産食品」。木樽で1週間発酵させて作るイカの塩辛が自慢だ。
「函館市に来たらイカを食べたいという要望が強い。スルメイカは昔から日本人が食べている貴重なイカなので、たくさん取れてほしい」(小田島水産食品 小田島隆社長)
期待が寄せられるイカ漁。漁獲量の見通しを、スルメイカの生態に詳しい専門家に聞いた。

「黒潮大蛇行」が終息の兆し―資源回復の兆しか
「大きな環境変化が見られないので急に増えることは考えにくいが、ひとつ変わってくるとしたら、太平洋側の黒潮など海流の変化」(北海道大学大学院水産科学研究院 中屋光裕准教授)

気象庁は、7年9か月続いた「黒潮大蛇行」が終息する兆しがあると発表した。黒潮は東シナ海から日本列島の南岸に沿って北上する暖流だ。
2017年以降、紀伊半島から東海地方の沖にかけ南に大きく蛇行していたが、それが終息し本来の流れに戻るというのだ。

「東シナ海で冬にスルメイカが産卵し、稚イカが生まれ黒潮に沿って北上する。イカが取れたころと同じような潮の流れになり、資源があったころの状況に戻りつつある。このように変わったということで、注目する年になる」(中屋准教授)
スルメイカ漁は6月1日解禁。翌2日の初水揚げが注目される。
