運転手不足に悩まされ試行錯誤を続けるバス事業者。問題の解消に向け、“攻めの姿勢”で人材を確保しようと奮闘する会社がある。広島市中区に本社を置き、“赤バス”の愛称で親しまれている「広島バス」を取材した。
未経験者も参加できる見学会を毎月開催
広島市内を中心に路線バスを走らせる「広島バス」。車体の目立つところに「運転者急募」の幕が掲げられている。幕はほとんどすべての車両に見られ、運転手不足の深刻さが伝わってくる。
人員確保に向けて運転手の仕事に興味を持ってもらおうと、広島バスは2022年11月から毎月「見学会」を開催。地道に活動を続けてきた。
広島バス・安全教育課の大西偉夫課長は「1人でもバス運転者の魅力を感じて参加してもらえれば」と話す。

参加者の多くは転職希望者。そのほとんどが全く違う業種からだ。
まずはスライドを使って担当者が仕事内容を紹介する。
「ありがとうございますと笑顔で言っていただけると運転者のほうも気分は高まりますし、お客さまに対しても優しく笑顔で対応できます」

5月27日の見学会に参加したのはバスの運転経験がない2人。
参加理由を聞いてみた。
「日ごろから車を運転しているときに、バスの運転手ってちょっといいかなと思っていて。大型二種免許は持ち合わせていないのでこれから検討します。支援制度で免許もとれるみたいなので」
そして、実際にバスの運転席に座り、車体の大きさを肌で感じ取っていた。
運転手の初任給 3万4500円引き上げ
見学会を毎月開く背景には、減便をしてもなお続く危機的な人員不足がある。
運転手の時間外労働の上限が規制されたいわゆる「2024年問題」の影響で、広島県内のバス事業者も人手不足による減便が相次いだ。
広島バスも減便を余儀なくされたが、運転手の初任給を3万4500円引き上げたほか、平均2万3700円のベースアップを実施。“攻めの姿勢”で人材を確保してきた。

2024年3月、広島バスに入社した室原健一さん。高速バスの運転手から転身した。
決め手となったのは新たな待遇面だった。
室原さんは「転職してよかったと思います。降りるときにありがとうと言ってもらえてうれしいですね」と乗客から直接感謝されることに働きがいを感じているという。今では路線バス以外に空港のリムジンバスなどでも幅広く活躍している。
苦しい状況でも攻めの一手を打ち続けることで、広島バスでは2023年度に11人だった正社員の運転手の採用が、2024年度は25人と2倍以上増加。状況は少しずつ上向いてきている。

大西課長は「ここ最近では人員確保を感じる部分もありますが、まだまだ不足しているので、もうちょっと継続してやっていきたい」と話す。

広島県内ではバス運転手の不足に加えて、運転手の年齢構成も課題になっている。
県バス協会によると40歳以下の運転手の割合は全体の1割ほどで、しかも56歳以上が約半分を占めている。地域を支える公共交通の将来を考えると若い世代のバス運転手の定着も待ったなしの課題と言える。
(テレビ新広島)