バス業界の慢性的な乗務員不足と高齢化が続く中、2022年5月、道路交通法が改正されて年齢の要件が21歳以上から19歳以上に引き下げられた。それによって、10代の運転手によるバスの運行も可能に。
11月中旬のデビューに向け、奮闘する運転手の卵に密着した。

高齢化する運転手 ”10代の救世主”現る

行き先「教習中」のバスをリポートする五十川裕明 記者
行き先「教習中」のバスをリポートする五十川裕明 記者
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10月6日、広島交通高陽営業所の車庫。まもなく発車するバスの行き先には、「教習中」と表示されている。

このバスを運転するのは、フレッシュな10代の2人。2021年、広島交通に入社した寺田琉憧(るどう)さんと矢木龍希さんだ。

バスに乗り込み準備をする寺田さん(左)と矢木さん(右)
バスに乗り込み準備をする寺田さん(左)と矢木さん(右)

運賃表示、整理券番号、方向幕の確認など、出発に向けてあわただしく準備をする2人。2022年夏まで乗車券の販売など事務作業をしていたが、乗り物好きが高じて最近、大型2種免許を取得した。

広島交通・寺田琉憧さん:
家族でバスに乗る機会が多かったので、乗ったり見たりというのを繰り返していくうちに、だんだん「大きいバスを運転している運転手さんってすごいな」と思い始めました

広島交通・矢木龍希さん:
運転手の父の影響でトラックが身近だったので、乗り物好きになりました。いよいよ僕も運転手になるんだなという感じで、緊張しています

現在、広島交通の運転手は250人。全体の約6割を50代以上が占めている。乗務員不足と高齢化が進む中、若い2人は会社にとって救世主である。

教官を務める 広島交通・千早哲哉さん:
高齢化とコロナの影響もあって、慢性的な乗務員不足というのが、バス業界では非常に深刻な問題になっています

車内アナウンスや時間管理も教習中…運転中にもやることは山積み

住宅団地の循環線を運行する教習バス
住宅団地の循環線を運行する教習バス

道路交通法の改正を受け、思いがけず運転手としてのデビューが早まった寺田さんと矢木さん。週5~6日、客を乗せないバスで公道を走り、ベテラン運転手から指導を受けている。この日も「教習中」のバスが発車!

広島交通・寺田琉憧さん:
本日も広島交通をご利用いただきまして誠にありがとうございます。このバスは高陽団地循環線です。お乗り間違いございませんようご注意ください

まだ教習中というが、車内アナウンスや停留所の表示切り替えも、落ち着いた様子でこなしている。
住宅団地を通る循環線は、狭い道路とカーブが多い1周40分の難コース。運転技術以外にも車内放送や時間管理など、チェック項目は山積みだ。運行中、教官からこんな指摘も…

教習中のバスを運転する矢木さん。すると教官から指摘が…
教習中のバスを運転する矢木さん。すると教官から指摘が…

教官:
矢木くん、停留所の放送を送ってないで

矢木さん:
あ、すみません

【車内放送】
次は堂願橋、堂願橋でございます

運転に集中するあまり、次の停留所の車内放送を忘れてしまうこともあった。

教官を務める 広島交通・千早哲哉さん:
2人ともだいぶ上手になってきて、よく頑張っていると思います。運転技術と接客が乗務員として一番求められることだと思うので、そこをね、もうちょっと2人には勉強してもらいたい

「地域に愛される」「きちんとお礼が言える」運転手に…

広島交通によると、10代のバス運転手が誕生すれば広島県内初だという。

広島交通・矢木龍希さん:
やることが多くて頭がいっぱいになってしまうので、そこを気をつけてやっていきたいと思います

広島交通・寺田琉憧さん:
ブレーキのショックを減らして止まれたなとか、ギアチェンジを変えられたなというのはいくつかあるので、できなかったことをしっかり反省しつつ次につなげていけたらと思います

2人のデビューは11月中旬の予定で、10月中旬から、乗客を乗せた本格的な教習が始まっている。

広島交通・寺田琉憧さん:
広島交通は郊外の路線中心のバス会社なので、住宅街や団地を走ることが多い。その中で、地域に愛される運転手になりたいというのが一番です。頑張って目指していきたいと思います

広島交通・矢木龍希さん:
余裕を持って接客できるように運転に慣れていって、きちんとお礼が言える運転手になりたいと思います

独り立ちまで、あと少し。乗務員不足と高齢化が喫緊の課題となる中、10代の運転手の誕生に期待が高まっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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