核保有国のインドとパキスタンの間で起きた軍事衝突。その余波は台湾海峡に新たな緊張をもたらそうとしています。

中国の空対空ミサイル「PL-15」の脅威

インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で勃発した核保有国同士の戦いで、世界の緊張が高まったものの、4日間で突如終結。戦いの地には、撃墜された戦闘機とみられるものが残されていました。

パキスタン側は、中国製の戦闘機で、160㎞以上離れたインド軍の戦闘機を撃墜したと発表。

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能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
これは驚きました。たとえ戦闘機のレーダーでも、40㎞以上離れていると標的を捉えるのが難しくなります。160㎞以上も離れたインド軍戦闘機を本当に撃墜したのなら、パキスタンの戦闘機は、それだけの射程を持つ高性能な空対空ミサイルで武装していたことになります。
その能力を持つのは中国からパキスタンに輸出された空対空ミサイル、PL-15Eです。

中国軍が配備しているオリジナルバージョンのPL-15は推定射程200㎞以上、ミサイルそのものにレーダーがあり、命中精度が高いとされるもの。その輸出バージョンであるPL-15Eの射程は少し劣るものの同じような性能があるとみられます。

撃墜の発表に対して、中国では、共産党系メディアの元編集長が「台湾軍はもっと震え上がるべきだ。軍事介入に対するアメリカの意欲と自信は、さらに揺らぐ」とSNSに投稿しました。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
ここで、なぜ台湾かというと、PL-15ミサイルの推定射程が200㎞以上に対して、台湾海峡の幅は平均およそ180㎞、狭いところで130kmです。
中国の戦闘機は領空を出なくても、数字上は台湾上空の台湾軍機を狙えることになります。

米軍は新型空対空ミサイル「AIM-174B」の訓練弾を披露

挑発を受けたアメリカ側は…。

5月に山口県の岩国基地で行われた一般公開で披露されたAIM-174Bという新型の空対空ミサイルの訓練弾。アメリカ国防総省はその模様をわざわざ公式発表しました。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
AIM-174Bは、イージス艦から発射する迎撃ミサイルSM-6を戦闘機用に改修したもので、射程は、240㎞を超えるとされています。つまり、PL-15を抱えた戦闘機をその射程外から狙えるかもしれない。
訓練弾があるということは、実弾が岩国に配備されたということで、横須賀を事実上の母港とし、洋上を動き回る空母ジョージ・ワシントンにもAIM-174Bが装備された可能性が高い。ただ、中国もPL-15を遙かに上回る射程の空対空ミサイルを実用化したとも言われています。

台湾海峡を巡る米中のにらみ合いは、静かにつばぜり合いを繰り返しながら、新たな空の対立に進もうとしています。
(「イット!」5月25日放送より)

イット!
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能勢伸之
能勢伸之

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フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。