福岡市の自宅で、自発呼吸ができない7歳の娘の人工呼吸器を外し、窒息死させたとして、殺人の罪に問われた母親の初公判が2025年7月11日、福岡地裁で開かれ、母親は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

「間違いありません」起訴内容認める

殺人の罪に問われているのは、福岡市博多区の無職、福崎純子被告(45)。起訴状などによると、福崎被告は、2025年1月、自宅マンションで、先天的な「脊髄性萎縮症」で、自発呼吸ができず、痰の吸引などの医療的ケアが必要な長女、心菜さん(当時7歳)の首に挿入された人工呼吸器を外し、窒息死させて殺害した罪に問われている。

送検される福崎被告 (博多署 1月)
送検される福崎被告 (博多署 1月)
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7月11日に福岡地裁で開かれた裁判員裁判の初公判で、福崎被告は、「間違いありません」と起訴内容を認めた。

初公判の法廷(福岡地裁 7月11日)
初公判の法廷(福岡地裁 7月11日)

検察側 冒頭陳述(要約)

検察側は、冒頭陳述で、心菜さんは、国指定の難病「脊髄性筋萎縮症」で、その中でも最も重症の患者であり、24時間の完全介護が必要だった。福崎被告は、約6年前から、訪問看護や福祉サービスなどを利用し、心菜さんの介護をしていた。福崎被告は、2023年まで、週に1回、土日に仕事をしていたが、夫の意向で仕事を辞め、介護に専念。昼夜を問わず、介護ができる体制だった。夫も介護に協力的で、週に1回は、家族で車に乗って出かけたりしていた。

【無理心中を考え犯行に至る経緯】

普段はよくしてくれていた親族らだったが、時折、その言動に福崎被告は、傷つくこともあった。心菜さんへの音楽療法について、義母に「そんなこと意味ある?」と言われて被告は傷ついた。また、事件の2日前には、昼寝していた夫に、心菜さんの体位交換の手伝いを求めたところ、「全然眠れん」と言われ、舌打ちされたため、『私と心菜は、いらない存在なんだ』と思い、無理心中を考えるようになった。

【事件当日】

事件当日、1月5日の午前1時ごろ~午前4時ごろ、福崎被告は、スマートフォンで睡眠薬に関する情報(薬の致死量ランキング)を複数回検索している。午前11時15分ごろ~午後2時15分ごろの間、訪問看護を利用したが、福崎被告は、その前後で、粘着テープを利用した自殺方法なども検索。看護師が帰った後、無理心中を決意した。午後2時15分ごろ~午後2時44分ごろ、福崎被告は、寝室にいる夫がリビングに入ってこられないようにドアノブとラックをビニール紐で繋いだ。また、睡眠薬を大量に飲み、次の日の訪問看護をキャンセルした。午後2時44分ごろ、夫に気づかれないように準備した上、心菜さんの人工呼吸器のアラームを停止してから呼吸器を外した。心菜さんは、窒息により死亡した。

犯行後、福崎被告は、自身を包丁で切りつけたり、自身の顔に粘着テープを巻いたりしたが、死ねず、睡眠薬を大量に飲み意識を失った。

事件があった現場(福岡市博多区 1月)
事件があった現場(福岡市博多区 1月)

弁護側 事実関係争わず

検察側は、量刑を考える上で、娘の身体的苦痛や母親の行動の悪質性などを考慮すべきだと指摘。

検察官
検察官

弁護側は、被告人が高校生の頃から睡眠障害があり、心菜さんを出産する前から定期的に精神科のクリニックに通院し、睡眠薬を服用していた状況や、事件当時、適応障害などの精神状態にあったことなどを主張。被告が、『重度障害児の世話をする仕事を通じて社会と関わり、罪を償っていきたい』と希望していると訴えた。

弁護側
弁護側

裁判では、事実関係は争われず、量刑が争点となっている。判決は、7月18日に福岡地裁で言い渡される予定。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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