「デジタル併願制」で公立高校の入試はどう変わるのか?
4月、石破首相は公立高校入試の「単願制」を見直し、デジタル併願制の検討を指示した。
街の人からは賛成意見が多い一方で、広島県教委は慎重な姿勢を見せている。

倍率を気にせず“複数校”を受験

現在、広島県の高校入試で受験できる公立高校は1校のみ。志望校の倍率と自分のレベルを比べながら、入試直前まで志望校に悩む受験生もいる。
それに対して「デジタル併願制」は受験生が複数の公立高校に志望順位をつけて出願し、共通の学力試験・内申点などのデータをもとにシステムが自動で合格先を決める制度だ。
デジタル併願制についてどう思うか?広島の街の声を聞いた。

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30代男性:
「めちゃくちゃうらやましいですね。自分の時もどのレベルの高校にしようか悩んで倍率とか見て決めたんですけど、そこを気にせずに併願できるというのは選択肢が広がっていいんじゃないかな。うらやましいです」

ーー公立高校1本だけでは不安ですか?
「かなり不安ですね。絶対に受かるためにレベルを下げるか。ミスったらおしまいなので、上のレベルにいくためにチャレンジできない」

20代女性:
「私の時は1校しか選べなかったから、それはいいなって思いました」

ーー1校ではしんどかった?
「公立に落ちてしまったら、もう…。私立も悪くはないですけど、私立しかないという感じだったので、公立高校の選び方は慎重に選んだかもしれないですね」

ーー慎重にというのは?
「親にお金の負担をかけないためには公立高校のほうがいいかなって考えていたので、受かりやすい学校を選ぶ。あまり上をねらいすぎてもなと」

「選択肢が広がるのはすごくいい」

中には、現在の制度によって私立高校に入学し、親に負担をかけたと感じている人もいた。

2人の子どもがいる20代女性:
「公立に落ちちゃって、私立しかなくなってしまったので私立に行きました。母親が毎回『きつかった~』と言うんで、そっか…ごめんねと思うんですけど。子どもたちにはどっちでもいいかなって感じです」

60代男性:
「私らのころは広島市内に公立高校が6校くらいあって『総合選抜』。受かってからでないとどこになるかわからないような制度だった。それから1校しか受けられなくなって、また併願になるのもいいと思いますけどね」

40代男性:
「私のころは公立高校1校でした。すべり止めじゃないけど私立も受けておこうみたいな感じで。今は定員割れの高校も多いと思うので、選択肢が広がるのはすごくいいかなと思います。オープンキャンパスもあるでしょうし。私もいろいろな学校を見に行きましたけど、オープンキャンパスなんかで雰囲気を感じて、どれか1校に絞るというよりは複数の選択肢があって受験できるのはいいと思います」

定員割れの高校と二極化懸念も

受験を終えたばかりの高校1年生はデジタル併願制をどう受け止めているのか。
2025年度、定員割れになった公立高校に通う男子生徒は「中学に入学した時点で併願制だったら、選ぶ高校が変わっていたかもしれない」と話す。男子生徒の40代の母親は「受ける側にとってはすごくいい。授業料を考えると公立高校しか行かせられない家庭でも選択肢が広がる。併願制だったら、もっとレベルの高い公立高校も受けてみたと思う」と答えた。当事者にとって、入試制度の違いは将来を左右する大きな問題だ。

一方、広島県教育委員会の篠田智志教育長は5月9日の会見で「具体的な検討に着手する段階ではない」としながらも「併願をすることによって、果たして意義ある進路選択肢になるのか、しっかり吟味が必要」と答えている。

また、高校入試に毎年関わっている学習塾・田中学習会の浅尾智也先生は「子どもたちにとってはすごく良い。不安があって志望校のレベルを落としていた子も上を目指せる。デメリットとして、人気な高校と定員割れする高校の二極化は進むだろう」と指摘する。

これから高校入試を迎える中学生やその保護者は特に動向が気になる「デジタル併願制」。
今後、どのように検討されていくのか注目だ。

(テレビ新広島)

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