鹿児島県志布志市に2026年4月、様々な事情で学校に通うことができない子どもたちのための新しい学校が開校する。鹿児島県内初となる公立の「学びの多様化学校」は、不登校の子どもたちの新たな選択肢として期待されている。

市役所の別館が学校に生まれ変わる

この新しい学校は、2024年12月まで志布志市役所の有明庁舎別館として使われていた2階建ての建物をまるごと改装して開校する予定だ。

学校にはプレイルーム兼リビングルームも設けられる。志布志市教委・学校教育課の前畑あさよさんは「この学校は朝、登校したらすぐ授業が始まるわけではなく、タブレットで健康観察をした後は友達とおしゃべりをしたり、卓球やボッチャなどの軽スポーツをしたりします」と説明する。

“朝すぐ授業じゃない”新しい学校スタイル
“朝すぐ授業じゃない”新しい学校スタイル
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子どもたちに寄り添った環境づくり

新しい学校では、子どもたち一人一人の特性に配慮した環境づくりにも力を入れている。

和室のある壁の厚い部屋もできる予定だ。光や音に敏感な子どもたちが、心地よく過ごせるための「センサリールーム」と呼ばれる部屋。前畑さんは「特に音に敏感な子供たちが多く、教室の友達同士の大きな声や先生の大きな声に敏感な子供たちは増えている傾向にあります」と話す。

和室・センサリールーム完備 鹿児島の公立校が示す“多様な学び”のモデル
和室・センサリールーム完備 鹿児島の公立校が示す“多様な学び”のモデル

学びが途切れている子どもたちを救いたい

この学校設立の背景には、現状のサポート体制でもなお学校に通えない子どもたちを救いたいという思いがある。

志布志市では昨年度、児童生徒合わせて77人が不登校となっている。福田裕生教育長は「不登校の77名のうち約30名は何かしら学びの継続ができていても、残りの四十数名はどこでも学びを継続することができていない状況が続いている。であれば新たな方法で打って出ることが必要だと考えた」と語る。

通常の学校とは異なるアプローチ

「学びの多様化学校」は、学校教育法に基づいて特別に編成されたカリキュラムで授業を進められるのが特徴だ。志布志市に設置されるのは、小学1年生から中学3年生を対象とした義務教育学校となる。

通常の学校と同様に校長や教頭が在籍し、スクールカウンセラーといつでも相談できる環境も整備される。授業時間は標準の学校よりもゆるやかに設定され、運動会などの行事も実施するかどうかを仲間と話し合って決めるスタイルを取り入れる。もちろん、給食の時間もある。

登校が難しい子どもを救う公立校の誕生に期待
登校が難しい子どもを救う公立校の誕生に期待

体験教室で見られた子どもたちの反応

取材の日には、新しい学校への通学を希望する子どもたちを対象とした体験教室が開かれていた。参加した子どもたちからは「色んな人が通えていいなと思った」「楽しかった。みんな優しい」「みんなで色んなゲームをしたり、散歩したりするのが楽しかった」といった声が聞かれた。

福田教育長は「一般的な学校の雰囲気とは違う状況の学校をつくりたいのが一番。例えば朝夕、登下校の時刻をいくらか緩和する状況をつくったり、誰にでも気軽にフランクに心の交流や学びの交流ができるような学校をつくりたい」と語る。

学校の名称は近々公表される予定で、2026年4月下旬から子どもたちの受け入れをスタートする。「学校に通えない子どもをなくしたい」という温かい思いがたくさん詰まった新しい学びの場の誕生が待たれる。

(動画で見る:不登校の“新しい選択肢” 志布志市、別館を改装した公立『学びの多様化学校』)

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鹿児島テレビ
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