1960年代~70年代
1962/3
Whom Called X
Xよ お前は生けにえだ
お前は哀れなモルモットになるのだ
俺の能力を試すための 実験台に使われるのだ
Xよ お前は償いだ お前は選ばれて処刑されるのだ
俺の蒙った屈辱を お前がその血で雪ぐのだ
Xよ お前は使い捨てだ お前は銃口の前に立つのだ
俺が射的を堪能するために お前は安物の栄光を着るのだ
(処刑命令が発せられたとき 未知数Xは固有名詞に置き換えられる)
1975
刑事補償
お前らが強奪した年月について 還付請求が付きつけられたとき
お前らはできるだけ知らぬ顔で通し どうしても逃げられなくなると
金を払って済ませようとする それも他人から巻き上げた金で
だが 俺に 関するかぎり そんなことは絶対認めはしない
その補償は お前ら一族の代表者が 自分の血で支払わなければならないのだ
長官銃撃事件直後
1995/4
March 30,1995
金のためでなく 名を売るためでもなく 恨みもなく だれにも強いられず
ただこの世のことは 今世で片を付けよ と 内なる声を迫られて
戦いの場に赴いた 無名な老鎗客
墨田の河畔 春浅く そぼ降る雨に濡れし朝 静けさ常に変らねど
獲物を狙う影一つ 満を持したる時ぞ今 轟然火を吐く銃口に
抗争久し 積年の 敵の首領倒れたり

1995/6
June.15,1995
死の淵から這い上がって来た男が ようやく姿を現した
杖をついて足をかばい 愛想よく笑顔を振りまく
治安部隊26万人の 総指揮官の威厳など 見出しようもない
Corsetで腰痛の発作を抑え 緩慢にTVの前に座り 黙然と映像を見つめる
老いの影が漂う 小柄なその男に 凄腕と怖れられたsniper
片鱗さえも見る者はいない

1995/late
小言幸兵衛独り合点
●●●のやつ 取り調べのときにゃ 狙撃事件はやっきになって否定して
假谷事務長拉致の件だけで 四、五年ほども食らい込み
ムショの中では 周囲に一目置かせようとして
マスコミに名指しされていたのをいいことに 警察長官を撃った凄腕とは
実は このオレだったんだ とか ハッタリをかませるんだ
あのろくでなしのAumの若造めが
(※編集部注:●●●にはオウム信者の実名が入る)
1996年
1996/7/2
予想屋
「週刊現代」は●●●を名指し 「週刊ポスト」は林泰男
外国人を匂わす「サンデー毎日」 そして「新潮45」ときたら
本命 穴馬 いろいろ並べ立て なんとでも言い抜けようとの魂胆
●●が出てくれば「現代」は失格 林が捕まれば「ポスト」は落伍
その後は どうやら 「サンデー」が逃げ切りを計り
「新潮」はその尻馬に乗りかかり 各誌 口をぬぐって
敗者復活を目指す賭けのやり直し
Goalのないraceなのにー

(※編集部注:林泰男はオウム信者の元死刑囚で地下鉄サリン事件の実行犯)

1996/11
花咲か(ない)爺さん音頭
さぁさ 皆さん ご用とお急ぎのない方は 寄ってらっしゃい 見てらっしゃい
ここは東京新名所 唄で名高い神田川の底ざらいだよ
犬が何やら吠えたとて 朝から晩まで飽きもせず ヘドロにまみれて宝探し
はたして お目当てのものは見つかるか それとも出るのは瓦や瀬戸欠け
いやさ 不法投棄の粗大ごみ-
となりゃ 狂った意地悪爺さん 憎い犬めを滅多打ち-
待った待った その前に
てぐすね引いてるマスコミ野郎の 袋叩きをかわさなけりゃ
日頃 羽振りのいい桜田門一家 お代は取らない大盤振る舞い
嫌われ者の公安(ルビ:マルコー)が しゃしゃり出まして音頭取り
橋の下での馬鹿踊り アーラめでた めでたや おめでたや
1997年
1997/1/4
還俗
対岸から 標的(ルビ:ターゲット)の棲む館を見据えて 声には換えない独白ー
「俺はお前の死神 もうすぐ迎えに行く 今日 お前の命が尽きること
知っているのは この俺だけ」
357Magnum hollow point弾は 的確に中心部に食い込み 炸裂した
が それでもあの犠牲(ルビ:いけにえ)は 紙一枚よりも狭い隙間から 死の手を滑り抜けた
魔界の番属には成り得ぬ 所詮は運命に操られるだけの 生身の証ー

1997/1/22
丸岡修さんよ
「公安警察ナンボのもんじゃ」 とはなかなか威勢がいいけれど
でも捕まってしまってからじゃねぇ なんだか 小唄みたいに
聞こえるじゃないですか
本当に そう言い切れるのは ニッポン警察の長官(ルビ:ボス)に鉛弾を食らわせて
幹部連中を震え上がらせたうえに 公安の総力挙げての追跡も
軽(ルビ:かーる)くイナしてしまっている あの闇の狙撃者(ルビ:スナイパー)じゃあーりませんかねぇ
(※編集部注:丸岡修氏は元日本赤軍メンバーで「公安警察ナンボのもんじゃ」というタイトルの著書を出版)

1997/1/25
こだわって
総長とか長官とか 権力を象徴する肩書は着ていても
丸腰 無抵抗の年配の肉体に 容赦なくhollow point弾をぶち込み
内臓をずたずたに切り裂くだけでは けっして後味のいいものではない
せめては護衛の反撃を加味してGunfightという体裁に仕上げたかったけれど
挑発の発砲が かえって威嚇の逆効果(松尾山の小早川とは大違い)
台本では撃たれ役に指定しておいたのに 弾の風切り音に怯えた未熟な腰抜けは
隠れ潜んで指一本すら挙げず 結局は 一方的な襲撃だけという形
カット!
1997/5/29
一九九七年三月二十五日
虎ノ門パストラル 新旧警視総監歓送迎会
主賓の前田新警視総監 -
「・・・長官狙撃事件も解決まで あと一歩というところで・・・」
呆れ顔のThe Sniper-
「あと千歩も万歩もあるとおもうけどねぇ・・・」
理屈っぽい男-
「どうせ 縮まらないのなら 一歩でも万歩でも同じじゃないか・・・」
1997/6/22
歩く看板
温和な風貌の初老の紳士 その引きずっている片足から
なるべく視線をそらすようにして
「近ごろ お具合はいかがですか 「まだ ときどき痛みましてね
(否応もなく思い起こさせられる強い警察と唱えていた当人が
護衛がいたのに射ち倒されて しかも今でも未解決)
「ちんば(※)の(黒田)官兵衛」には 何がし誉れの響きもあるが
「撃たれの國松」では ただの恥さらし
ようも 自決もせずと生き延びてくれました
どうか これからも長生きして (ニッ)ポン警(察)の恥辱の実物見本を
あちらこちらで展示してくださいね 少なくとも2010年まではー
(※編集部注:詩から垣間見える中村泰の本質を伝えるための掲載であり、差別的な意図はありません)

1997/10/19
Acrocity
Alexandre Dumasの ‘Le Conte de Monte-Cristo’なるもの つまりは復讐の物語
裁判所に申し立て 冤罪を認めて貰っただけの男を
当人が自称したでもないに 「日本の巌窟王」などと呼ぶは筋違い
己れを捕まえて投獄した官憲に 執念の銃弾で報告した者のほうが
その称号に近いはずだが-
(※編集部注:銃撃事件の現場マンション名は「アクロシティ」)
1998年
1998/1/15
威信
桜田門に飾られていたバカでかい鏡 威容を誇る年代ものとかいわれていたが
九十五年の三月に 銃弾でひび割れた すぐに修理の本部はできたが
なにしろ前例もないことで ああしてはまずい こうしてもだめ
うろたえ とまどい 右往左往 誰かが触れたりするたびに
亀裂は拡がり 破片がパラパラ どうにも手が付けられない
月日はたっても みっともないのはあい変わらず 皆いい加減くたびれた
なんだかやる気もなくしがち いっそ そんなものは棄てちゃって
新しいのに取り換えたらー でも それをどこで見つけるの
1998/3/16
鎗客
殺し屋を傭うなら まずは 腕が確かで 秘密を守れるヤツ
標的がVIPともなれば なおさらの必須条件
そういうのを見つけたくても そんな需要が少ない土地に いるはずがないという
海の向こうには そこそこいるだろうが この風変わり島国の中で
外国人が手際よくやってのけられるかどうか
思案のあげくに ようやく思い付いた 宮本武蔵を刺客に頼めなければ
自分が柳生十兵衛にでもなればいいってこと そして そうなった

1998/5/17
惜しいけれど
「水戸黄門」なる連続TV dramaたいていone patternの繰り返しなのに
なぜか根強い人気 定番の見せ場は 小柄で温和な百姓の爺さん風情が
いざ土壇場になると 突如 葵の御紋を振りかざし 居直って凄んでみせる
その変身ぶり 「でもよ 最初(ルビ:はな)っからあの印籠だしゃ 手間ぁ省けるのに
「それじゃあ 間が持てねぇや
目立たない窓際族風の初老の男が 一転proの根性を現わし
単身 治安部隊の総指揮官を 鮮やかな狙撃で射ち倒すー
とくれば これは絶好の題材 しかも documentaryでもいけるとなれば
なおさらのこと だが このscenarioは 秘密の秘 絶対非公開
ーというわけで 視聴者の皆さん 残念でした
1999年
1999/1/13
Le Motif
かの天才詩人 中島みゆきは 一度 恋に破れれば
百編ぐらいの 失恋の歌が作れるものーと言ったそうな
では 一回だけでもVIPを狙撃すれば 百編ほどの詩ができてもいい勘定だが
実際のところ せいぜい四分一 でもまあ量より質かも
1999/2/10
奇襲音頭
武器よし 腕よし 準備よし 作戦完璧 手落ちなし
それで あっさり はい 成功
Riskもなければthrillもない これじゃ dramaにゃもの足りない アー よいよい

1999/2/13
Le Monologue de Monte Cristo
警察 検察 裁判官 これがまぎれもなく当面の敵
したがって 警察庁長官 検事総長 最高裁判所長官 やつらこそ倒すべき標的
だが肩書はともかく たまたまそのとき その椅子に坐っていただけの
丸腰無抵抗の老人あるいは初老の男が 血にまみれて路上に転がるのを見れば それですむのか
確かに 長官狙撃事件以降 警備は強化された
だが 所詮は貧弱な火器しか持たない 戦技の上では素人同然の連中
この腕の中のmachine-gunが吠えれば
Dominoのように薙ぎ倒されるのは目に見えている
-結果は大量殺戮 そして不幸の環は その周辺の五倍、十倍にも広がっていく
中米で 東南Asiaで Africaで Balkanで 飽くこともなく繰り返される虐殺に
暗然と対していた男が 今度は 自らそのmini版を演出しようとするのか
Acrocityであのtargetは死を免れないはずだった
それがあり得ないほどの奇跡で生き残った
しかも生き延びたために かえって その衝撃は後々まで尾を曳いて
敵への打撃は さらに効果的となった これは啓示と受け止められるのか
所詮 詩人は悪鬼にはなり得ぬ 羅利になってはならぬと-
海底20,000 lieuesを航行したNemoは復讐の大殺戮の後蹌踉として呻いた
「-神よ もう十分です…」
1999/11/8
組織的犯罪対策三法 改正住民基本台帳法
盗聴するのはこちらの仕事 それがされる側になるとは論外
犯罪収益がどうこう言ったって そもそも犯罪と認定されたら
銭金よりもまず身柄のほうが危うい そうなる前に金ともども身を隠す
たとえ治安当局の最高幹部でさえも
人民総背番号という Fascism同様の不快な制度
国家という牢獄の中で 国民という囚人どもに
身上を記録して管理する それにしても 忍者には棲みにくい世となった
今世紀の初めの頃 息苦しい内地を脱出して 大陸に渡る風潮があったが
来世紀の初めには 刑務所日本を脱出して 南の大陸へ逃れるとするか
1999/11
狙撃者
警察庁長官は いわゆる名士のたぐい
でもこれまでに数十人 これからも数十人
撃った男は 無名 だが ただ一人 おそらく今後もー
1999/11/5
駐スイス日本大使
国内ではどうも肩身が狭いようで 脚を気遣いながら はるばるEuropeへ
その事情を知った人たちは 表向き 同情の外交辞令 裏へ回れば
「Nippon警察って 無能なのかねぇ 今でも 未解決なんだって・・・
ご存じ「撃たれの國松」 看板背負って 国際舞台でも 精出してー
2000年
2000/6/16
忍者版 忠臣蔵
雨の朝 墨田の河畔に待ち伏せて 見事 敵(ルビ:かたき)を射ち倒したが
もとより 名乗りを上げるなどは 忍者の作法ではない
で 誰に対しての忠義立てかって?
赤穂の連中にしても 建前はともかく 本音の心情は
このまま引き下がってなるものか との 武士の意地だったのさ あら楽し
思いは晴るる 身は匿す 伊賀の山月 懸かる雲なし
2000/12/24
闘魂は
今 米式装備を真似た 軍隊とも名乗ることもできない軍に
その欠けらも残ってはいない
同様に この身からも それは 失せた 代わって 取り入れたのは
遠く離れてmissileを発射し 速やかに安全圏へ離脱する戦法
Acrocityで その手を使い そして 相応に戦果を挙げた
2001年
2001/1/16
勝ち逃げ
一九九五年三月
報復の銃弾が 日本警察の帽子を撃ち落とした だが 撃った相手は闇の中
仕返しといっても しようがない 結局は 泥にまみれたままの泣き寝入り
不毛な復讐の連鎖は 見事に断ち切られてー

2001/1/27
緊急配備
一時間半後 郊外のいつもの駅で下車
Platformにも 連絡跨線橋にも 制服の武装警官
改札口の外に立っているのは その帽子から見て 動員された機動隊員か
南口は なおさらだろう 交番があるのだから
だが fake(ルビ:偽造)IDを示すまでもなく 昇降客に埋もれて通り過ぎる
しょぼくれた初老の男に 注目する者はいない
事件の主役は 既にして Invisible man (ルビ:透明人間) 存在しながら存在しない
Busに乗り継いでの帰途 窓から眺めれば 信号もない交差点の角に
Police car 佇立する警官 こんな所までーか
背景に浮かぶのは 動転する警視庁幹部(ルビ:おまえらがた)の影
冷ややかに一瞥くれて 胸中のmonologue(ルビ:つぶやき)
「もう 俺は お前の死神じゃない 吹き過ぎる一陣の風さ」
2002年
2002/1/26
viva! america
言論でも法律でもなく 最後の拠り所は武力
これが生涯一貫してきた我が信条 平和ぼけとか言われるこの国でこそ
異端として不人気であろうとも 世界のleaderと目される国が
実践よって教示している真理 国家としてだけではなく
人民各自もまた 自己を守るものは 己れの力 自らの武器と
我が信条と支持する存在 america万歳!u.s.a万歳!
2002/1/29
自画像
何かで目にした表現
「東大を中退したインテリ崩れの無職の中年男 日陰者の身分で・・・」
まあ これで表向きには間に合わぬこともない
で 裏を返すと
「15発のhollow point弾を装填したglock 19を腋の下に吊った必殺の拳銃遣い・・・」
これじゃ 三文小説の こけおどし文句の引用になっちまう
実際には人殺しなど好きじゃないから なるべく殺さずに目的を遂げるし
滅多に射ち合いなどしない 第一平和ぼけと言われる国じゃ そのchanceもない
ただし 刀を錆びさせるのは武士の恥とかで 銃器の手入れは怠らない
もっとも それより 常時使う車の点検のほうをしっかりやれ という声もあるが
2002/2/11
矯正教育
20年もの投獄は 頭でっかちで 足の浮いた 未熟な青二才を
堅忍不抜の戦士にあるいは老練な秘密工作員に鍛え上げてくれた
多分 この制度を創設した者たちも これほどの成果が挙げられるとは
期待していなかっただろうに
しかし 言葉だけでは 容易に信じられはすまい
美辞麗句で飾り立てるのは 制度を運営する官僚の特技でもあるし
そこで95年の春 Acrocityで その一端を実証してみせた
だが これは長期間にわたる 事後処理を併せて完結するもの
表向きは 2010年が区切りの目安
ーというわけで まだまだ 全容の公開にはほど遠い
そして その間も闇中の戦いは続く
2002/2/20
孤剣能く勝を制し得るや
筆舌に余る迫害を受けても 敢えて力による報復には訴えず
相手を寛恕する「以徳報暴」 となければこれは聖人君子の道
だが それは やればできるのに 思い止まればこそのこと
さもなければ 単に無能無力の言い逃れ
やればできるのか それともいざとなれば 臆病風に吹かれて逃げるのか
実際にやってみなければわからない
遂行し得る能力と根性があると 自ら確かめるには
やはり行動するほかには 道がなかったのだ
2002/2/20
報恩(記)
底冷えのする夜 室温を17℃に調節し 風呂上がりの陶然を抱いたまま
睡魔に身を委ねることに この上もない幸せを感じるのは
床の上に薄べり一枚 薄汚れた煎餅布団にくるまって
震えながら過ごした 十数回の冬があったからです
和食、洋食、中華料理 それとも寿司、そば、うどん
千円札にお釣りがくる程度の昼食でも その選択肢があることに
十分幸福感が持てるのは
毎度々々が練り固めの麦飯と およそ最低の副菜の組み合わせ
そうした給餌の類いを 数万回も食してきたからです
使い古しのwagonでも 春には桜咲く山里へ 秋は紅葉映える渓谷へ一走り
豊かな自然に触れられるのを 至福の時と堪能できるのは
ハンドルを握るなど以ての外 塀に区切られた狭い一郭を
監視付きで日に数度往来するだけの 十数年を過ごしたからです
一般人が当然に享受している 日常生活の些細なあれこれを
天与の恩恵とさえ実感できるのは それらのことごとくを 長い間
取り上げておいてくださった 日本官憲の方がたのお蔭です。
それを「喉元過ぎれば暑さ忘れる」とばかりに捨て去って
小市民的安逸に浸かったまま 無為に暮らしているだけでは
忘恩の徒の謗りを免れますまい
かの「八九三」と呼ばれる下賤の輩でさえ お礼参りの義理は欠かさないとか
それにも劣る恩知らずと言われては その屈辱に身の置き所もありません。
そこで 心からの謝意を表すために 何か適切な贈り物をと考えたのですが
世間には 神経Gasとか細菌兵器とか派手で豪奮Giftもありますものの
小身者の私には分に過ぎていますので つつましく 銃弾数個にとどめまして
むしろ手練な技を見ていただけるよう これを直接 代表者の方に差し上げました
もちろん秒速300メートルでですが
2002/2/24
想定問答
ある行為に対する批判
「あのような復讐とか意趣返しに類することはすべきではなかった」
反問
「では もちろん 貴方の立場だったらやらなかったということですね
しかし やればできるのですか」
大方は
「いやとても」
結論
「それじゃ するしないの問題以前に
そもそも できないということじゃないですか」
まれには
「もちろんできる」
結論
「それはすごい 全く たいしたものです
私なんぞ 警官に護衛された最高指揮官を 単身 襲撃することなど
そら恐ろしくて できそうもないと感じていたのですが
思いきって 試しにやってみたら できてしまったという次第でしてー

2002/6/2
time lag
バネは強く抑えられれば抑えられるほど
それだけ強く跳ね返るという法則
権力者の手先どもに 長い年月 迫害されていた俺のバネは
猛然と跳ね返って 奴らの首領を弾き飛ばし 地面に叩きつけた
だが、抑圧が弛んでから 反撃するまでに 20年近くの遅延があったのは
迫害期間も また それが比例するということなのか
2002/7/18
内ゲバ
おかげで公安の連中はτπ yにもGestapoにもならず
虐殺者の汚名を着ることもなく 自分勝手に自滅してゆく奴らをせせら笑いながら
秘密警察ごっこに耽ってこと足りる
(だから長官を狙撃するような本ものに出合うと手も足も出ない)

2002/8/12
戦闘員(戦士)
装弾した弾倉を挿し込み 遊底を引いて放すとき
心を占めるのは どの地物を利用し どう接近し どこで発砲し いつ退避するか
憎しみは二の次だ
抑圧の下 徒手空拳のとき 燃え盛っていた
あの純粋な真紅の憎悪 今 残るのは その日照りだけ
2002/11/7
更生
刑務所の小役人どもが ここは矯正教育の場だ
過去の過ちを償って 立派に立ち直れるよう われわれも手助けするとほざく
その意志はなくはないにしても 実効策が伴わないから 結局は口先だけに終る
で 出所者の大半は 外の世界に弾き出されて舞い戻るか
路地裏を這いずって露命をつなぐか あるいは暴力団という特区に帰り着くかだ
一部の者だけが 辛うじて二級市民の枠に潜り込む
だが 俺は以前に数倍する力を蓄え どんな権力者であろうと
欲すれば その生死を制し得る
現に 治安部門の最高指揮官を この手で倒してみせた
しかも こちらは全くの無傷でーだ
今やloanの支払いに追われることもなく 俗人との付き合いに煩わされもせず
好きな時に好きな所ー地球の裏側へでも出かけて
目立たぬながらも優雅な歳月を 享受する自由を得た
もっとも 権力者の番犬どもは そりゃ 立ち直り過ぎたと言うだろうが

2002/11/15
狙撃者
その日の朝 銃声を聞いた主婦は 窓越しに見下ろした
両手で銃を構え 小雨の中 身じろぎもせずに立つ黒いcoatの男
France映画の一場面のような と
数十分後 通勤rushの終わりかけた電車の中の座席
格別の特徴もない無表情 Suitsにnecktieの初老の男
あまりにありふれて注目する者もいない
その内側に漂う 昂ぶりの余韻など 見透せるはずもないから
Hopelessly
戦いというものは 勝っても負けても
あくなき浪費の積み重ね 時間と労力と財貨とのー
それでも勝者には それなりの代償が得られようが 敗者にとっては全くの空費
最新精鋭と称する公安刑事が数十人 十五年の泥沼の消耗戦に引きずり込まれ
あげくの果てに敗北に終わる宿命 惨めな終末に辿り着く 無益な抗争へ導いた
愚劣な司法官どもの無責任な裁判 先ざきどんな結果になろうが
動機は私怨か
長官事件にまつわるこれらの中村叙事詩から分かることは、警察を敵として執拗に恨みを抱いていたということである。その敵の首領=トップの警察庁長官を狙ったわけだが、では警察に一体何の恨みがあったというのだろうか。

中村叙事詩ではしばしば、無期懲役刑を受け長期に服役したことを指しているのか、長期間「迫害を受けた」との記述がみられる。
しかし自分が金を欲しさに窃盗を繰り返して刑務所に服役した後、潜在的な敵意から警察官を射殺し無期懲役となり長期の服役となったわけだ。まさに自業自得の服役人生である。
それにも関わらず、「迫害」されたと訴えるのは単なる逆恨みとしか言いようもない。そうした歪んだ復讐心を持ち続けていることが、この叙事詩からも浮き彫りになった。端的に中村の動機は私怨以上の何ものでもないのではないか。
思想犯であるならば、こうした文書に歪んだものであっても政治の腐敗や社会問題、国際問題なりに対して憤懣やるかたない心情が溢れてきてしかるべきだが、中村の叙事詩にはテロリストが嘯くような自らの大義が全く見受けられない。
それが故、私怨からくる警察組織に対する単純な恨みを持ち続け、その恨みを晴らすという身勝手極まりない動機しか見えてこないのである。何とかして己をヒトカドの“志士”然とさせたいがため、詩作にふけった中村の切実さが言葉の隙間から垣間見えるのは私だけだろうか。
【秘録】警察庁長官銃撃事件51に続く
【執筆:フジテレビ解説委員 上法玄】
1995年3月一連のオウム事件の渦中で起きた警察庁長官銃撃事件は、実行犯が分からないまま2010年に時効を迎えた。
警視庁はその際異例の記者会見を行い「犯行はオウム真理教の信者による組織的なテロリズムである」との所見を示し、これに対しオウムの後継団体は名誉毀損で訴訟を起こした。
東京地裁は警視庁の発表について「無罪推定の原則に反し、我が国の刑事司法制度の信頼を根底から揺るがす」として原告勝訴の判決を下した。
最終的に2014年最高裁で東京都から団体への100万円の支払いを命じる判決が確定している。