福井県内のプロバスケットボールチーム「福井ブローウィンズ」は2026年秋から始まるBリーグの新たなトップカテゴリー「Bプレミア」を目指していくことになりますが、その舞台に立つための鍵となるのが、5000人以上を収容できるアリーナの存在です。
全国では、アリーナの建設ラッシュが進む一方、建設費の膨張や意見の対立、採算性などの課題が各地で浮き彫りになっています。
福井でも、新たなアリーナ整備が検討される中で、他県の例から何を学び、どう判断すべきなのか。成功と苦悩が交錯する全国のアリーナ最前線を取材しました。
◆開業計画が遅れる福井のアリーナ
すでに成功している例は、沖縄県のアリーナです。4年前、約200億円をかけて整備されました。成功の理由は“使われ続けている”ということ。年間通じてイベントや試合が開かれ、来場者は約3年で累計100万人を突破。2023年の国際大会では、約107億円の経済効果が試算されました。アリーナを中心に地域がにぎわい、まちの魅力につながっています。
田島嘉晃アナウンサー:
「そして福井市では、福井ブローウィンズのホームアリーナとして、東公園に新アリーナの建設が計画されています」
県民からは「もっと駅に近い方がいい。新幹線もできて全国から多くの人が集まるから」「バスケを応援しているので(アリーナは)できてくれるとありがたい。長期的にみると、上手く運用できるのでは」「部活でバスケをしている。地元のチームに強くなって欲しいので(アリーナ建設は)いいこと」と歓迎する声も多く聞かれました。
当初億60円とされた事業費は、資材高騰などで105億円に増加。事業費だけでなく騒音や渋滞への懸念から、住民の理解を得るための見直しが進められています。開業は現在、示されている2027年秋から最長1年遅れる可能性があります。
◆理想と現実のギャップ
全国ではアリーナ建設をめぐる対立構造も浮かび上がっています。愛知県豊橋市では15日、総事業費約230億円のアリーナ構想での是非を問う住民投票が実施されることが決まりました。
地元がプロチームの好成績に沸く一方で、市長は建設に反対、市議会は推進、と意見が対立しています。
秋田県の佐竹前知事は「額が半端ではない。議会で相当な額のプラスを認めてもらえるかどうか、それにかかっている」としていました。
2028年秋の開業を目指す秋田県のアリーナは、資材価格や人件費の高騰により事業費が当初の254億円から約364億円に膨張しています。
お隣の石川県はというと、当初150億円と見込まれていた事業費が、資材高騰などにより350億円規模に膨らみ、民間主導での建設は断念。官民での計画の再構築へと方針転換しました。
理想と現実のギャップが各地で浮き彫りになる中、持続可能なアリーナ建設の形が問われています」
◆既存施設の改修と民間委託で事業費を削減
成功事例と言える福島県郡山市のアリーナは、周辺施設も含め、4月に総事業費約109億円をかけて開業。限られた予算内でBプレミア基準のアリーナ整備を実現するため工夫を重ねてきました。
市は、既存の体育施設を段階的に改修し、建物や設備を可能な限り再利用することでコストを抑えました。また、建設から維持管理までを民間に委ねることで、行政単独で整備する場合と比べて約11億円を削減。持続可能なアリーナ整備のモデルケースとして注目されています。
2026年秋から始まるBプレミア参入を目指すクラブにとって、アリーナ建設は避けて通れない課題です。
アリーナ計画の最大のネックは、巨額の事業費です。
■秋田は約364億円■石川は350億円■沖縄は約200億円■愛知は約230億円■福島は約109億円です。
他県の建設費と比べて、福井の事業費105億円は“突出して高額”というわけではありませんが、簡単に決められる規模の金額ではありません。地域の規模や費用対効果に照らして、本当に見合っているのかどうか、慎重な議論が必要です。
福井でも、夏頃をめどに経済界からアリーナ整備の全体像が示される見通しで、住民の理解と共感を得られるのかが注目されます。
取材協力:秋田テレビ/福島テレビ/石川テレビ/東海テレビ/沖縄テレビ放送