一人っ子は全てを背負わないで

一人っ子の場合は、家族間で揉めることはないかもしれない。しかし、それはそれで大変なケースが多い、と安田さん。

「ひとりっ子の方は『あなたしかいないんだから』ということを繰り返し言い聞かされて育っている人が多いです。それは洗脳のようにその子供を縛ってしまって、介護が始まると一人で全部抱えてしまう。中には親の介護のために仕事を辞める人もいますが、お勧めできません。早めに地域包括支援センターに相談して、上手に福祉用具を利用したり、早い段階でプロの手を借りるなどして、全部を背負わないようにしましょう」

また、親から虐待を受けて育っているケースなど、法律上は「扶養義務」はあるものの、心情的には介護をしたくない…という場合もある。

「何もしないと“介護放棄”や“ネグレクト”と言われるのではと不安になるかもしれませんが、例えばケアマネジャーをつける、緊急連絡先になっておくなど、最低限の義務を果たせば“放棄”にはなりません」

安田さんは、きょうだいがいてもいなくても、“準備”の大切さを強調する。

「大事なのは、家族主義にとらわれすぎたり押し付けたりして、自分やほかのきょうだいを犠牲にしないこと。そのためにも上手なやり方と制度を知って親が元気なうちから準備を始めてください」

安田まゆみ
東京・銀座の「元気が出るお金の相談所」所長。CFP認定者(国際資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)。FP歴29年。女性を応援する「マネーセラピスト」として、これまでの相談件数は8000件以上、講演回数は1000回を超える。一男一女を育てあげた後、実父と義父を看取り。2021年に母を突然失い、2023年には15年認知症を患い介護をしていた義母を見送った。著書に『もめないための相続前対策: 親が認知症になる前にやっておくと安心な手続き』(河出書房新社)、『そろそろ親とお金の話をしてください』(ポプラ社)など多数。

取材・文=川口有紀

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