親が元気なうちにやっておきたいこと

では、いざ「親の介護やお金の話をしよう」と思った場合、何から始めたらいいのだろうか?安田さんに、「最低限やっておきたいこと」を教えてもらった。

(1)家族全員で話し合う機会を作る

親やきょうだいが遠く離れた場所に住んでいることも多いため「わざわざ呼び出すのも…」と思うと、どうしても先延ばしになってしまう。そのため、家族の誕生日やお祝いごとなどで集まる機会を利用するのがおすすめ。また、事前にきょうだいに「今度会うときに、そろそろ相続のことをお父さんに相談しようと思うんだけど…」と連絡しておくなど、根回しをしておくとよりスムーズに。

話を切り出しにくい場合は、「この間、友達のご両親が急に亡くなってね。私も心配になっちゃって…」など身近な例を出すのもひとつの方法。親自身がどうしたいかという意思を確認して。

(2)親の暮らしぶりを知っておく

親と離れて暮らしている場合、意外と親の日常生活を子世代は把握していない事が多い。介護生活への入口となる「転倒骨折」の原因となる転倒事故は、多くが室内で発生する。東京消防庁によれば事故の6割が自宅(居間・寝室、玄関、階段・廊下、浴室)で起こっている。滑りやすい場所、転びやすい場所がないか、親の住環境をチェックしてみよう。昼間は明るくて安全な場所でも、夜になると暗くて足元がよく見えず、段差が危険になるということも。

手すりなどの設置も検討できる(画像はイメージ)
手すりなどの設置も検討できる(画像はイメージ)

階段や浴室、トイレへの動線など危険な場所は入念にチェックし、必要な場合は手すりやスロープをつけるなどの工夫を。工事などを行わずに手すりが設置できる置き型のタイプもあるので、福祉用具などの情報も仕入れておこう。子世代の介護の負担を減らすためにも、「介護のスタートをなるべく遅らせる」ことが重要だ。

(3)きょうだい間、家族間のグループチャットを作っておく

介護の負担を1人に集中させないためには、家族間の連携が大事。おすすめなのは、きょうだいや家族間でLINEなどのグループチャットを作ること。元気なうちに作っておけば、事前に親に確認することの進行具合や、親の意向などを、その都度きょうだいや親族間で共有することができる。

「コツは、きょうだい間だけのグループと親も入れた家族全員のグループと分けておくこと。きょうだい間だけで、親の状況や考え方について、率直にやり取りしておいた方が良いことも多いからです」

SNSグループは介護においても活用できる(画像はイメージ)
SNSグループは介護においても活用できる(画像はイメージ)

まだ本格的に介護が始まらず、精神的に余裕がある時期は、それぞれの分担をスムーズに決めるチャンス。介護が始まったら、そのグループチャットを活かして、介護日誌のように記録していけば、誰がどのくらい負担しているかを可視化することができる。グループチャットは、介護の現場でも活用できるのだ。

(4)かかりつけ医に連絡しておく

親の健康状態を一番把握しているのは、多くの場合は親の「かかりつけ医」となる。しかし医師のカルテには自宅の電話は記載されていても、子供の連絡先は記載されていない。例えば認知症の兆候が見られたとしても、医師から子供たちに連絡が来ることはまずない。そのため、子供たちが気づいたときには認知症や親の病気が進行していて…というケースは多い。

事前に親のかかりつけ医を訪ね、「何か変わったことがあったら連絡してほしい」と主治医と話し、連絡先を渡しておこう。