視覚過敏の子は「白」がまぶしい傾向
子供の中には、ノートの色や罫線などによって集中力を削がれてしまう子もいるそう。
「視覚過敏の特性を持っている子は、一般的な白いノートを使いづらいと感じる傾向があるようです。
かつて発達障害当事者を対象とした事業グループを運営する方から、ノートに関する悩み事を伺ったことがあります。その際に、発達障害の子がどのようなところに使いにくさを感じているのか、子供たち自身からも聞きました」
最初に出てきたのが、「白い紙がまぶしい」という話だった。

「発達障害当事者の中には視覚過敏の特性を持った子が多く、白い紙だと光の反射を強く感じ、字を書いたり読んだりしにくいと話してくれました。
あらゆる情報を取捨選択できずにインプットしてしまう特性の子もいて、ノートの罫線や日付欄が気になって集中できないという話も伺いました。中には、書いている途中で罫線を見失ってしまい、文字をまっすぐ書けないという子もいました」
ノートは白い紙に定型の罫線が引かれているものと思っていた大栗さんは、使いづらさを感じている人がいることに驚いたそう。
色や罫線次第で使いやすくなる
彼らの声をもとに、大栗紙工では「まほらノート」を開発した。「レモン」「ラベンダー」「ミント」といった淡い色味の紙が特徴的なノートだ。

「色のついた紙だと光の反射を軽減できます。そこで、13色の紙を用意し、当事者の方に使いやすい紙を選んでもらったところ、『レモン』『ラベンダー』『ミント』が選ばれました。『レモン』と『ラベンダー』に関しては、視覚過敏の特性を持つ方全員が選んでいました」
罫線は、視覚を邪魔せず行を認識しやすいように、太い線と細い線が交互に入った「太・細交互横罫」と、紙に薄いグレーの帯を等間隔で配置した「あみかけ横罫」を採用。

「表紙に大きなロゴや写真やイラストが入っているのが視覚的に苦痛」という声を生かし、日付欄など余計な情報は省き、表紙もイラストや写真を入れずにシンプルなデザインにした。
また、発達障害の子は筆圧が強くなりやすいという特徴もあるため、一般的なノートと比べて約10%厚い紙を用いた。この工夫により、次のページへの影響を軽減するとともに消しゴムで文字を消すときも、クシャクシャになったり破けたりしにくくなる。
「使ってくださった方から、『ノートを取るのが苦痛じゃなくなった』『読み返すことができるノートになった』という声をたくさんいただいています。
後で見返したときに何が書いてあるかわからないノートは、子供自身も残念な気持ちになります。“読み返せるノート”を書けるという点は、子供にとっても大きなポイントなのかなと感じています」