『マイナビ スケートボード日本OPEN』で日本一に輝いた熊本・氷川町の松本雪聖さん(13)。目指すはオリンピック出場という中学2年生は、どんな環境で練習し、技を磨いているのか取材した。
パリ五輪金メダリスト 吉沢選手も一目置く
氷川町の松本雪聖さん、スケートボードで次回の2028年のオリンピック出場を目指す中学2年生。宇城市松橋町のウキウキパークで、雪聖さんは練習に励んでいる。

4月の『マイナビ スケートボード日本OPEN』の女子ストリートでは、オリンピアンも出場するなか、堂々の初優勝。現在、強化指定選手に選ばれていて、世界ランキングは10位。イタリアやアメリカなどで行われる国際大会にも参戦予定だ。

強みはスピードや力強さ、そしてジャンプの高さ。雪聖さんは「田舎だから…ではないけど路面が悪くてスピードが出ないし、プッシュしないと跳べないこともあるから。それで(路面がツルツル滑る)東京とかのパークに行くと、スピードとかが出るんじゃないかと思う」と話した。

パリオリンピックの金メダリスト、吉沢恋選手は「自分にはない脚の力の強さなどで、ジャンプ力が高いところは自分もうらやましいなと思うし、すごくスケートボードを心の底からやりたいんだなと思っているような選手」と雪聖さんの魅力を表現した。
練習は家族と二人三脚 3歳から板の上に
平日4時間、休日10時間の週6日の練習を支えるのは家族。母・沙織さんは「本人が辞めると言うまでは応援する。一度始めたことは辞めるな、やり遂げろという思い」と話す。

両親は農家で、父・貴光さんはコーチを務める。「男子のトリック(技)を見て盗めるところは盗むという作業。雪聖は動画を見て研究というタイプじゃないので、僕の方が研究して、それを伝えて」と親子二人三脚での練習を明かした。

最初にデッキ、板に乗ったのは3歳のころ。両親がスノーボードをしていた影響から、スケートボードに興味を持ち、次第に熱中していった。
学校などでは飾らない中学生の一面も
地元の中学校に通う雪聖さん。練習の時には見られないリラックスした笑顔があった。友人に学校での雪聖さんについて聞くと、「わーって騒いで走り回ってる」と表現した。

担任の池﨑佑太先生は「スケボーでとても活躍しているのに、全く自慢しないところがすごい。将来オリンピックに出ると思うので、英語をしっかり教えて。応援し続けたいと思う」と期待を寄せた。

また身体のケアなどを行う鍼灸院の代表も雪聖さんは『頑張り屋』だという。竜北スポーツ鍼灸院の吉野敦代表は「頑張る、本当に頑張る」と話し、弱音を聞いたことはあるか尋ねると「ある、めっちゃ言う。でも、言いながらやる…。常にマイペース、平常心。調子に乗らない。おごらない。淡々としている」と、雪聖さんの人となりを話してくれた。
『キックフリップ ノーズグラインド』
雪聖さんにはいま取り組んでいるトリック、大技がある。板を1回転させて、板の前方を踏みながらレール上を滑り、着地する、『キックフリップ ノーズグラインド』だ。

父・貴光さんは女子の選手でこの大技をできる選手について、「まだいない、世界でもいないと思う。必殺技として練習している。次の大会で出すのか3年3ヵ月後のオリンピックまでに完成させるのか、そこのせめぎあいだと思う。時間があるようで無い1個の技が完成するまでに1年くらいかかるので、毎日やっても」と話す。

いまは大会での成功に向けて練習の日々。「やっぱり決まるとやった!という気持ちと、次こけないかな?という不安もある。ちょっとずつ高さ上げて、自分ができるようになっていくようにしたい」と雪聖さんは話す。

失敗しても、転んでも、何度も何度も繰り返し練習をする。この地道な過程の先に見据えるのは「オリンピックに行きたい、オリンピックに出て、表彰台に乗り、金メダルを取りたい」と話し、熊本から世界を目指す。

雪聖さんは6月にイタリアのローマで開かれる国際大会に出場予定。また、日本のスケートボード女子の選手層は厚く、ストリートの世界ランキングを見ると上位10人のうち7人が日本の選手となっている。
(テレビ熊本)