鹿児島・肝付町のチーズケーキ専門店「シエスタ」のオーナー、重本抄代子さんは「自己流だからプロに見られたら恥ずかしいわ」と照れくさそうに笑う。しかし、彼女の作るチーズケーキは、地元で大人気を博している。元は喫茶店だったが、持ち帰りが好評となり、チーズケーキ1本で営業するようになったという人気店を訪ねた。
喫茶店からチーズケーキ専門店へ
肝付町の「シエスタ」は、30年前に小さな喫茶店としてオープンしたが、9年前からはチーズケーキ専門店として営業している。

来店客は「大好きでよく買いに来ます。コクがあって、どこにもない味」「ここのチーズケーキが一番好き。甘すぎない。だからパクパクいける」と絶賛する。ふわふわなのに、口に入れると濃厚で、クリーミーな口溶けのチーズケーキは、地元で大人気だ。

チーズケーキは喫茶店の開店当初から看板メニューだったが、持ち帰りでの販売を始めたことで、大きな転機が訪れたという。
「売り上げがもうちょっと伸びないかとみんなで話していて。お客様の数を増やすことはこの田舎ではなかなか難しいので。それでは来られたお客様がお土産とか何か買って帰れるようなスイーツを考えようと思って」と重本さんは振り返る。
シフォンケーキやパンなど様々な商品を試作した末、最終的に行き着いたのが看板メニューであるチーズケーキのテイクアウトだった。3カ月もの間、毎日チーズケーキを作り続け、家族と共に食べ比べた。その努力の末に生まれたのが、他にはない独自のチーズケーキだ。
さらに重本さんはお客さんが食べやすいようにと、形状もスティクタイプに改良した。すると、多い時には、1日に200本以上売れる大ヒット商品になったという。
厳選された素材と独自の製法
重本さんのチーズケーキの特徴は、厳選された素材にある。オーストラリア産のクリームチーズを使用し、「チーズが苦手な人にもおいしく食べてもらいたい」という思いが込められている。

また卵は、地元・鹿児島県内之浦の大自然で放し飼いされている地鶏の卵を使用している。「(地鶏の卵は)他のもので作ってみたときと、できたときの弾力が違う気がする」と重本さんは語る。
実はお菓子作りは独学という重本さん。「自己流だからプロに見られたら恥ずかしいわ」と笑うが、だからこそ納得の仕上がりになるまで時間も手間も惜しまない。オーブンで焼く際は、“ピピピ”とタイマーが鳴るたびに走り、熱を均一に通すため何度も何度もケーキの型を並べ替える。重本さんこだわりの製法が、ふわふわかつ濃厚で、クリーミーな口溶けの味を実現している。

家族の支えと地域の愛
「シエスタ」の成功には、家族の支えも大きい。2025年で90歳になる姑の洋子さんは、ケーキを詰める箱を組み立てる役割を担っている。「これで一丁上がり」と笑顔で語る洋子さんの姿からは、家族の絆の強さが伝わってくる。

重本さんは、チーズケーキの人気について「『有名ですね』と言われるとうれしいけど『本当かなあ?』と。これはやっぱり皆さんのおかげですね。私が作ったのを『おいしかった』と皆さんが広めてくださったおかげなので」と謙虚に語る。
店の前には自動販売機も設置
2年前からは店の前に自動販売機を設置し、閉店時間でもチーズケーキが買えるようになった。

地元の中学生は「チーズケーキの切り落としを買いました。こっちの方が他のものより多くて安いのでよく食べます。あまり自分はチーズケーキは好きじゃないけど、これは全部食べるくらいおいしい」と話す。
肝付町の小さな喫茶店から始まった「シエスタ」のチーズケーキは、今や地域の誇りとなっている。独自の製法と厳選された素材、そして家族と地域の人々の支えによって生まれた絶品チーズケーキは、肝付町の新たな名物として、これからも多くの人々の心と舌を魅了し続けるだろう。
(鹿児島テレビ)