備蓄米の放出が始まったにもかかわらず、米の価格高騰は歯止めがかからない。また、その備蓄米がスーパーなど小売店にあまり出回っていないと感じる人が多いようだ。いつになったら備蓄米が出回り、価格が落ち着くのだろうか。広島で取材した。
「備蓄米でも手が出ない」
広島市南区のスーパーでは24日から備蓄米の取り扱いを始めた。常に入荷があるわけではないが、備蓄米の価格は通常より2割程度安いと言う。

買い物に来た人は「備蓄米は食べたことがないけど、5キロでこの値段だと、手が出ない。もう少し安くなってほしい」と購入を諦めて店をあとにした。

全国のスーパーの“平均コメ価格”は15週連続で値上がりを続けていて、現在4,217円。政府が備蓄米を放出したあとも依然、高値が続いている。
広島県内の主なスーパーの備蓄米の値段は、イズミは2割から3割、生協は5キロだと1,000円程度安く販売しているという。ただ、米の購入を制限する小売店もあり、売り場には十分な量が届いていないのが実情だ。
流通は放出量の0.3%
それもそのはず、農林水産省の18日の発表によると、初回に落札された備蓄米およそ14万トンのうち、スーパーなどの小売店や飲食店に流通したのは0.3%ほどの461トンにとどまったということだ。

江藤拓農水相も、備蓄米の流通に問題があったことを認めている。
国はこの背景について、トラック不足で流通に時間がかかっているため、コメの価格を押し下げる効果が出にくくなっているとする。
備蓄米の量が少なく価格に反映できない
それでは、放出された備蓄米はどこにいったのか?JA全農が落札した備蓄米40トンを購入した東広島市志和町にあるコメの卸業者「食協」は、備蓄米放出の効果がみられないことを次のように分析する。

「年間、何万トンの中の1%~2%だから価格は下げられる状況ではない。全国の卸にある程度の量が入らないと安い米を出すことはできない。備蓄米が数百トン増えれば市場にそれなりの値段のものを出していける」
一日当たりおよそ100トンから140トンの米を出荷している「食協」では、流通したコメに占める備蓄米の割合が少なく、価格に反映することが難しいという。
また、武信和也社長は、備蓄米の入札方法にも問題があるという。
JA全農が9割落札
これまで、備蓄米の入札は、大手集荷業者のみが参加できる仕組みとなっていて、結果的に9割以上をJA全農が落札している。

食協の武信和也社長は中小卸業者も入札に参加、落札できるようになれば価格も下がると指摘する。
農水省は備蓄米取引のルールを変え、23日から始まった3回目の放出から、卸業者同士間でも取引できるようになった。

備蓄米の放出は、夏まで毎月行われる予定で、各地の小規模店などにも行き渡ることが期待される。
取引ルールの変更によって備蓄米の流通量が増え、コメの価格が安定するのか。もうしばらくは、注視する必要がありそうだ。
(テレビ新広島)