大谷翔平の活躍に目を奪われる今、異次元のピッチングを見せている日本人投手がいる。

メジャー2年目のシーズンを迎えたドジャースの山本由伸。

日本時間4月19日(土)のレンジャーズ戦では、怒濤の奪三振ショーを見せた。7回を投げ10奪三振、無失点。防御率も0.93とし、3勝目を挙げた。

山本:
いろんな球種を使ってピッチングをする、自分のスタイルが発揮できている。

インタビューに答える山本由伸
インタビューに答える山本由伸
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多彩な変化球を操る山本だが、中でもピッチングの生命線になっているのが「スプリット」。

今シーズンの山本のスプリットは、何が違うのか。どうしてメジャーリーグ強打者達は打てないのか。
その要因を、秘蔵データと野球解説者・鳥谷敬さんのバッター目線からひもといていく。

データ目線から見る、去年とは違う “ある変化“

まずは、データ分析システム「スタットキャスト」のデイビッド・アドラーさんが、山本のある変化を指摘。

アドラー:
彼の“アームアングル”が去年から少し下がっているんです。

山本投手のアームアングルの昨年との比較
山本投手のアームアングルの昨年との比較

アームアングルとは、リリースする時の腕の角度のこと。2024年の46度に対して、2025年は43度。去年に比べて、今シーズンは「3度」下がっていると言う。

果たして、わずか“3度”の腕の角度の変化が、ピッチングにどのような効果をもたらしているのか。

腕の角度が下がったことでもたらした変化

アドラー:
腕の角度が下がったことで、スプリットは平行に動くようになりました。彼のスプリットはただ落ちているだけではなく、横にいい動きをしています。腕の角度を下げて投げることで、それが変化したのです。

「横の変化」が加わった山本投手のスプリット
「横の変化」が加わった山本投手のスプリット

昨シーズンは、平均して22センチ横に動いていたスプリット。しかし、腕の角度を“3度”下げた結果、今シーズンは29センチと、7センチ増加。落ち幅に変化は見られないが、ボール1個分の「横の変化」が加わっている。
山本のスプリットには、落ちる変化に加えて、左バッターから逃げていく軌道が追加されたことになる。これが、メジャーの強打者たち抑えられている要因の1つである。

データで見ると「魔球」とも言える変化を果たした、山本の“スプリット”。
鳥谷さんにバッター目線で解説してもらった。

バッター目線から見る“振りたくなる○○”

通算2099安打、プロ野球歴代2位の1939試合連続出場を果たした鳥谷敬さんはこう語る。

山本投手のスプリットについて解説する鳥谷敬一さん
山本投手のスプリットについて解説する鳥谷敬一さん

鳥谷:
スプリットで一番大事なのは、空振りを取ること。つまりバッターにボールを振らせないといけない。そのために重要なのが、「振りたくなる“落とし所”」をどこにするかです。

日本で落ちる球を投げる場合、ベース板に落としたとしても、日本のバッターはミートポイントが前にあるため、ワンバウンドした落ちる球で振らすことができる。ただ、メジャーリーグのバッターに対しては、そうはいかないと言う。

鳥谷:
メジャーリーグのバッターの特徴として、日本のバッターよりミートポイントが体に近い。ボールを待つ時間が長くなるため、ベース板の前に落とすと、見逃される可能性が高くなるんです。

そこで山本選手が実戦したのが、ホームベースの奥に落とす“スプリット”を投げること。

鳥谷:
キャッチャーがノーバウンドで捕れるくらい、奥に落とすスプリットを投げることで、ストレートと途中まで軌道が同じになるため、より空振りを取りやすくなります。
落とし所を意識して操れるのが山本投手の凄さであり、今シーズン活躍できている要因だと思います。

メジャーリーグで2年目のシーズンを迎えた山本。
去年の経験を糧にして進化した、魔球“スプリット”を武器に、日本人初のサイ・ヤング賞獲得を目指す。

『すぽると!』
毎週(土)24時35分~
毎週(日)23時45分~
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