「熱、二酸化炭素、振動などを頼りに動物を探していると考えられています。人や動物から出る体温と呼吸、山を歩くときに伝わる足音を敏感に感じとり、近づいてきます」と西海さん。

つまり、山に行くだけで狙われることがあるわけだ。西海さんは「くるぶし丈の靴下やスニーカーだと、被害に遭いやすい」と続ける。

吸血された跡は赤く腫れる(画像提供:西海太介さん)
吸血された跡は赤く腫れる(画像提供:西海太介さん)

基本的にヤマビルは人間の足元からくっつき、吸血をする傾向がある。くるぶし丈の靴下やスニーカーだと、肌が露出している「足元の隙間」から吸血されやすいという。

長いズボンを履いたとしても隙間を縫ってまで侵入してくる。気づけば、肌の脇の辺りまで登っていたということもあるそうだ。

ヒルジンで血液が止まりにくくなる

ヤマビルに吸血されるとどうなるのか。

「個体や状況によっても左右しますが、少なくとも20分から30分にわたって血を吸われることが多いです。ヤマビルは吸血時に“ヒルジン”という物質を分泌するのですが、これが血液を固まりにくくする働きがあり、剥がれた後も血が止まりにくい状態が続きます」

血が止まりにくくなることも(画像提供:西海太介さん)
血が止まりにくくなることも(画像提供:西海太介さん)

吸血されても痛みは「ほぼ感じない」といい、靴下や衣服が血だらけになることも。

ヤマビルから感染症にかかる恐れはないが、ヒルジンなどが傷跡にかゆみをもたらし、完治が遅れる場合もあるという。かゆみは体質によるが、1カ月ほど続くケースもあるそうだ。

対策するなら「服装」から

血を吸われ、かゆみにも悩まされる。そんなヤマビルの対策として、西海さんは3つのアドバイスをする。1つ目は「服装」だ。

登山用スパッツ(ゲイター)で対策を(画像はイメージ)
登山用スパッツ(ゲイター)で対策を(画像はイメージ)

「特に足元の隙間を作らないよう、靴とズボンを上から一緒に覆うタイプの登山用スパッツ(ゲイター)を履くと予防効果が期待できます。靴はハイカットの登山靴がお勧めですが、麓でのキャンプ活動などの場合は、一般的な長靴でも対策になります」

2つ目は「虫よけスプレーを持ち歩くこと」。
「成分表に『ディート』(濃度10%)、または『イカリジン』(濃度15%)とあるものは、ヤマビル避けにも役立つといえます」

虫よけスプレーは必ず散布しよう(画像はイメージ)
虫よけスプレーは必ず散布しよう(画像はイメージ)

足元の露出をなくし、服の上から虫よけスプレーを覆うようにかけると効果的だそうだ。