岩手県内に存在する「勝手踏切」の数が全国で最も多いことが国土交通省の調査で明らかになった。正式な踏切ではないにもかかわらず、地域住民が日常的に横断する線路は、法律違反であり事故の危険性も高い。国は自治体や鉄道会社に対策を求めているが、生活の利便性から利用せざるを得ない住民の声も聞かれる。

「勝手踏切」岩手県が全国最多

国土交通省が全国の鉄道会社を対象に調査したところ、2024年12月時点で「勝手踏切」は全国に1万5553カ所あることがわかった。このうち岩手県は899カ所と最も多くなっている。

線路のそばに立ち入り禁止の看板が設置
線路のそばに立ち入り禁止の看板が設置
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勝手踏切とは、鉄道会社が踏切として定めていない場所を、地元の住民などが日常的に渡っている線路のことを指す。しかし、こうした行為は鉄道営業法違反として処罰の対象となる。

「1日1往復で1時間違う」

盛岡市内のJR山田線沿線で取材すると、線路のそばには立ち入り禁止の看板が設置されているにもかかわらず、人が通れるような形になっている。これが典型的な「勝手踏切」だ。

この場所で農業を営む70代の男性は、勝手踏切を数十年前から使っていると言う。
「まず時間の無駄。ぐるーっと回らなければならないから、1日1往復すると1時間も違ってくる」と語る。

この勝手踏切は最も近い踏切から直線距離で約200mの位置にある。男性は線路の反対側にも所有する土地があり、市道を通って正式な踏切を迂回すると1Kmほどの遠回りになるため、やむを得ず渡っているという。

男性は「(線路内に)入っていけないことはわかっている」と話しながらも、日々の農作業の効率を考えると利用を続けている現状があった。

事故の危険性と対策

国土交通省によると、勝手踏切は東北や四国などに多い傾向があるという。都市部に比べ踏切の数や立ち入りを防ぐ柵の設置箇所が少ないことが理由とみられている。

しかし、線路に立ち入る行為は鉄道営業法違反として処罰されるだけでなく、遮断機や警報機がないため事故の危険性が高い場所でもある。

2024年6月・洋野町のJR八戸線で高齢女性が列車にはねられ死亡
2024年6月・洋野町のJR八戸線で高齢女性が列車にはねられ死亡

実際、2024年6月には洋野町のJR八戸線で勝手踏切を渡っていたとみられる高齢の女性が列車にはねられ死亡する事故が発生している。

こうした危険性を踏まえ、国土交通省は自治体や鉄道会社に対し、勝手踏切を減らすための対策を取るよう働きかけているという。

(岩手めんこいテレビ)

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