バイオリンの弓が弦を滑る音が静かな空間に響き渡る中、真剣な表情で楽器と向き合う子どもたち。
ふるさと愛媛の発展に貢献した個人や団体をたたえるテレビ愛媛賞。今年度はこうした子どもたちの音楽活動を支える「愛媛県青少年オーケストラ協会(通称:愛媛ジュニアオーケストラ)」が選ばれた。
愛媛県内3ヵ所で展開するこの活動は、子どもたちの心に音楽の種をまき続けている。

群馬から愛媛へ ジュニアオーケストラで音楽の喜びを子どもたちに
「愛媛県青少年オーケストラ協会」、通称、愛媛ジュニアオーケストラ。子どもたちにバイオリンなどの弦楽器に触れてもらおうと、2018年に設立された。現
在、愛媛県松山市、今治市、新居浜市の3つの団体で小学1年生から高校3年生まで約30人が所属している。
立ち上げたのは、群馬県から結婚を機に愛媛県今治市に移住した野尻千夏さん。
愛媛県青少年オーケストラ協会の野尻千夏代表は「私も小さな頃からジュニアオーケストラに所属していて本当に楽しくて、私と同じような気持ちで子供たちが音楽してほしいなって思って立ち上げました」と愛媛での協会設立の思いを語る。

初めて楽器に触れる子どもたち 誰でも始められるよう楽器も貸し出し
「ミー、ファー、ミー、レー、ドー」
音符を見ながら音を奏でる練習。週に一回、各地域で練習会を開き、子どもたちに音楽の魅力を実感させている。
バイオリン歴約2か月の子どもは「(バイオリンは)楽しい」と話し、バイオリン歴約2年半の参加者も「コンサートに行って自分もやってみたいなと思ってはじめました」「弦をおさえて弓を引くっていうのが両方するのが難しいけど、その難しいのが楽しい」と音楽とのふれあいを楽しんでいる。
またバイオリン歴約2年の子どもは「将来の夢はお医者さんなんだけど、趣味でバイオリンも弾けたらなって思ってます」と将来の夢を語る。
楽器は貸し出しも行なっていて初心者でも気軽に弦楽器を始められるのも魅力である。
生徒の保護者は「ありがたいですよね。バイオリンすごく高価なイメージがあったのでとても手が出せないって思ってたんですけど、敷居がすごく低くなった感じがします」と話す。

本格的なオーケストラ演奏体験も 子どもたちが育む自信と成長
年に1度の合同演奏会では、プロや大学生に管楽器を担当してもらい、本格的なオーケストラを編成する。人前で演奏する経験が子どもたちの成長につながっている。
そんな子供たちの成長に野尻代表は、「弾ける曲が増えていくとそれが自信に変わることもありますし、こんな曲が弾きたい、あんな曲が弾きたいと、自分たちで練習したり、意欲的な気持ちが見えてきています」と手応えを感じている。

「音符が全部読めるようになりたい」初めてのバイオリンに子どもたちもワクワク
この日は初心者のバイオリン体験会。まだ楽器にほとんど触れたことのない子どもたちが次々とやってきた。
参加した子どもたちは、「やったことなくて、興味を持ったので…」「お試ししに来た。楽しそうだったから。音符が全部読めるようになりたい」と初めてのバイオリンにワクワクしている様子である。
まずはバイオリンの基本的な構えから丁寧に指導する。指導にあたる南紳一先生は、「弓の持ち方覚えたかな?お父さん指をここのくぼみの所に入れて、きつねさんで持ってください」と優しく教える。
団員の多くが楽譜を読めない状態から楽器を始めるというが、とにかくたくさんの曲を実際に演奏して楽器に慣れてもらう方針である。早速、習ったばかりの「きらきらぼし」をみんなの前で発表する。
参加した子どもたちは「バイオリン難しかったけど、だんだん弾けるようになって楽しくなってきた」「続けてみたい」と早くも音楽の魅力を感じていた。

「音楽を長く続けてもらいたい」 海外の演奏会などで音楽の輪を広げたい
今後は弦楽器以外も子どもたちで編成できるよう、団員を増やしたいという愛媛ジュニアオーケストラ。3月にはマルタ共和国で演奏会を行うなど、音楽の輪を広げている。
愛媛県青少年オーケストラ協会の野尻千夏代表は、「みんながみんなプロになるとか音楽の道に進むわけではないので、卒団した後もずっと長く楽器を長く続けてずっと音楽を好きでいてくれたらいいなと思っています」と願いを語る。
オーケストラという音楽という共通言語で子どもたちの豊かな感性を育てていく。バイオリンの弦が奏でる音色は、愛媛の子どもたちの未来への扉を開く鍵となっている。
