2023年に続いて記録的な猛暑となった2024年の夏、熱中症予防のためにエアコンの適切な使用が呼びかけられる中、そのエアコンの室外機が壊される事件が福岡市で相次いだ。それから約7カ月後、警察が男を器物損壊の疑いで書類送検していたことが分かった。

押収の段ボールに「エアコン配管材」の文字
去年12月、福岡市のある貸倉庫に警察が家宅捜索に入った。関係資料をつぎつぎと運び出し押収する捜査員。その段ボールの1つには「エアコン配管材」「ドレンホース」などと記されていた。捜査関係者によると、ほかにもはしごやドライバーのようなものも押収されたという。

“エアコン修理業者”の男「もうすぐ効かなくなりますよ」
事件があったのは去年の夏の福岡市南区。記録的な猛暑が続きエアコンが欠かせない中、次々と壊されたのがその「室外機」だった。なぜエアコンの室外機がねらわれたのか、その理由を探るため取材班は被害に遭ったというラーメン店に向かった。
ラーメン店の男性店長によると去年8月13日の朝、エアコンの修理業者を名乗る男が店を訪れた。店長がカウンターの端で開店準備をしていると、店にすっと入ってきたという。

そこで男が示したのは「業務用空調機の洗浄も大特価」と大きな文字が躍る1枚のチラシ。業務用室内機の洗浄は1万6000円、業務用室外機洗浄は通常5000円がセットで2000円に割引になるという内容で、男は店長に「エアコンの掃除をしませんか」と持ちかけてきた。店長が断ると男は「室外機のガスが漏れています。もうすぐ効かなくなりますよ」と言ったという。

驚いた店長がすぐに確認すると男の言う通り、室外機に小さな穴が開きガスが漏れていた。男はこう切り出した。「うちならすぐに修理できます」。
ところが提示された修理代は20~30万円と高額で、突然の訪問だったこともあり店長は修理を断った。店長は「午前2時から店で仕込みをしていてその約6~7時間はエアコンが効いていた状態。男が帰ったあとは全然効かなくなった」と語る。
話はこれだけで終わらなかった。「次の日は『エアコン故障のためお休みします』と張り紙を出して休んでいたら、近くの店舗さんが同じ状況にあってうちに来た。エアコンが壊れてるという張り紙を見て連絡をくれた」。

近くの飲食店でも同じ被害が
なんと近くの店で同じような被害が起きていたのだ。
連絡してきたのはラーメン店から歩いて2分ほどのところにある洋食店。男性の店長が当時の様子を説明する。「エアコンが効かないから見に来たら(男が)来て『どうしましたか?』と。『エアコンが効かないから出てきた』と言ったら(チラシを出して)『こういうエアコンの修理をしています』と」。

取材班が先ほどのチラシをみせると洋食店の店長は「これです、これ。間違いない」。猛暑の中でエアコンが突然壊れるという緊急事態に、店長は男に若干の不審感を抱きながらも修理を頼んだ。

「タイミングが良すぎる」
洋食店の店長によると男は「修理の人を呼びます」と言って、30分もしないうちに車でやってきて修理をしたという。「『怪しいな、タイミング良すぎる』と思ったけど、そこまでは疑っていない。(金額は)『9万円ですよ』。支払い時に『もう8万円でいいですよ』と」。
自作自演なのか。警察は、業者が自らエアコンの室外機に穴をあけて壊し、修理を持ちかけることでエアコンの修理代を請求したとみている。

捜査関係者によると福岡市南区では去年8月、エアコンの室外機が何者かに壊される同様の事件が10件以上発生し、警察は24日、このうち1件についてエアコンの修理業者を営む40代後半の男を書類送検した。警察は押収した資料などをもとに裏付け捜査を進め、ほかの事件にも関与してないかどうかを調べる方針だ。
(テレビ西日本)