日本人にとって桜は特別なもの。
年度が変わるころに咲き、散っていくため、出会いや別れの思い出とともに記憶されている方も多いでしょう。

さくら さくら 今、咲き誇る
刹那に散りゆく運命と知って
さらば友よ 旅立ちの刻
変わらないその想いを 今
♪ 森山直太朗「さくら(独唱)」

森山直太朗さんの「さくら(独唱)」の歌詞は、まさに新生活を前に別れる友を想ったものですよね。一緒に過ごせる時間はもうそう長くはない…
短い桜のシーズンと重ねているのでしょうか。

開花がだんだん早まっている

現在、桜並木などに植えられている桜のうち80~90%が「ソメイヨシノ」です。

2025年のソメイヨシノは、週末に一気に気温が上がったこともあり、23日(日)に熊本と高知で、24日(月)には、長崎、鹿児島、宮崎、そして東京でも開花が発表され、いよいよシーズンが始まりました。

桜の開花は1989年以降3月に(イメージ)
桜の開花は1989年以降3月に(イメージ)
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気象庁が東京で桜の開花を確認する標本木について記録があるのは1953年から。
1988年までは約2年に1度は4月に開花していました。しかし1989年以降に4月の開花はありません。もうずっと3月中の開花が続いています。

地球温暖化の影響で「桜といえば入学式」から、「桜といえば卒業式」にだんだんと変わってきたと言ってもいいでしょう。

この傾向は東京に限ったことではありません。
大阪や名古屋、仙台、福岡でも同じで、合わせて満開の時期も前倒しとなっています。

「満開」がなくなる未来も!?

一方で、鹿児島では開花が早まる傾向はみられません。
近年は年によるばらつきが大きくなっていて、むしろ以前より遅く開花・満開になることも増えています。

これは、地球温暖化の影響と考えられています。

「休眠打破」と言いますが、花の芽は冬の厳しい寒さで目覚め、その後暖かくなることで花を咲かせます。それが温暖化の影響で気温が下がりきらないことでうまく目が覚めず、その後の成長に影響するということが起きているんです。

満開は標本木の約80%以上の花が咲き揃って発表されるものですが、この先、極端なことをいえば、3~4割の花がだらだらと咲き続けて「満開にならない」なんてことが起きてしまうかもしれません。

“ピンク”の桜が貴重に?

筆者がさらに気になるのは、葉桜の時期も前倒しになっていることです。

20年前は桜吹雪を楽しんだ後しばらくしてから新緑の季節を迎えていました。
新緑といえば本来は5月。しかしここ数年は、桜が散ったあとすぐ4月中旬には新緑の季節を迎えていませんか。

ソメイヨシノは花と葉の成長に関連性なし(イメージ)
ソメイヨシノは花と葉の成長に関連性なし(イメージ)

知り合いの樹木医に聞くと、ソメイヨシノは花と葉の成長に特に関連性はなく、葉は葉で気温の上昇とともに成長していくため、花が咲いたあとにあまりにも暖かい日が続けば、今後は咲き誇る花の中に緑の葉が混ざってくることもありうるといいます。

樹木医はさらに「花が咲いてから散るのが早くなっている」とも話しています。
今後、桜の名所がピンク一色に染まる絶景は、いま以上に貴重なものとなっていくかもしれません。

お花見オススメは「満開日の直後」

桜の咲く時期が変化し、美しくみられる期間も限られていくとなると、お花見の楽しみ方もそれに合わせて最適化していきたいところです。

なんとなく「お花見は4月最初の週末で」と考えていると、年によっては花が散ってしまって新緑もチラホラ… といったことが増えてくるかもしれません。

お花見は「満開日の直後」がおすすめ(イメージ)
お花見は「満開日の直後」がおすすめ(イメージ)

開花・満開予想や天気予報を参考に、行きたい場所の満開の日を見極めていただきつつ、より美しいソメイヨシノを楽しむためにぜひ狙っていただきたいのは「満開日の直後」です。

先述したとおり、満開は木の約80%以上の花が咲くと宣言されるものなので、満開日から数日は、まだまだ木いっぱいに咲いた花を楽しむことができます。

ソメイヨシノの花は始めほとんど白に近い桜色で、散る準備が始まると花の中心部が赤くなり花全体も桜色が濃くなったように見えます。
このため、満開日から少し経ってからぐらいの方が鮮やかに感じられます。

また、満開日をすぎた後はより多くの桜吹雪も楽しめます。
花びらがひらひらと舞うときが桜は最も美しいと言う方も多いですよね。風速は4メートルぐらいが桜吹雪に最適であると言われています。

あっという間に散ってしまうのも魅力の桜ですが、ぜひこの「満開後数日のうちの、よく晴れて少し風がある日」を見定めて、お花見を楽しんで頂けたらと思います。

【取材・参考】国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 多摩森林科学園/日本花の会
【執筆】ウェザーマップ・冨永幸気象予報士

フジテレビ気象センター
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最新の気象・防災情報や、「なぜそういったことが起こるのか?」現象の背景を徹底解説。フジテレビ気象センターに所属する気象予報士9人の他、日本気象協会、ウェザーマップとも連携し、天気を味方につけて毎日が楽しくなる情報や、つい誰かに話したくなるような情報などお届けします。