ネット上で個人情報を特定されるリスク。
取材をすると、何気ない一枚の写真にも潜むリスク。そしてその「特定」を仕事にする人物も存在するという恐ろしい実態が見えてきた。

■「配信中」に殺人事件が…
おい!なにやってんだよ。
事件は、配信中に起きた。
先週、東京都新宿区の路上で首などを刃物で刺されて死亡した佐藤愛里さん(22)。
逮捕された高野健一容疑者(42)は佐藤さんの配信の視聴者で、警察の調べに対しこのように話したという。
高野健一容疑者:配信動画で場所の当たりをつけて被害者を探した。

■ライブ配信者は3年前に恐ろしい経験をしたという
ネットを通じて居場所を特定。この事件は、同業者にも大きな動揺を与えている。
ライブ配信者・優里香さん:まずはショックだなというのが。ほんとにそんなことあり得るんだなって怖いなと。
ライブ配信を行ういわゆる“ライバー”でシンガーソングライターの優里香さん。
13年にわたり、自作の歌などの配信を続けているが、3年前、自身もある恐ろしい経験をしたという。
ライブ配信者・優里香さん:当時は病院でクリニックで働いていて、クリニックを特定されてしまって直接、勤務中にリア突。リスナーさんが来てしまった。
その方がどんどんエスカレートしてライブも出禁にしたけど着いてきてしまったり。外での配信は基本的になしにして、どこにいるというのは、元々言ってなかったんですけど、より気を付けるようになった。

■ネット上で個人情報を特定されるリスク
ネット上で個人情報を特定されるリスク。
取材をすると、現代においては、他人事ではない実態も見えてきた。
田中友梨奈アナウンサー:私もカフェに行ったり食べ歩きをしたりする時は写真をSNSにアップすることがあるので、きょうも写真を撮っていこうと思います。
田中友梨奈アナウンサー:どうしよっかな。じゃあ川をバックに撮ります!
例えばこうした何気ない自撮り写真だが…
サイバーセキュリティを専門とする企業に分析を依頼すると、様々なリスクが潜んでいることが明らかに。

■「モザイクアプロ―チ」と呼ばれる手法で1枚の写真から情報が読み取れてしまう
SCSKセキュリティ 亀田勇歩さん:周囲に映っているもの、看板、周りの風景そういう風なところから場所から特定できたりとか。
こちら引き伸ばしてマンホールを見てみるとよく分かるが、大阪市内で使われているマンホールだとこちらグーグルマップの画像で実際にスターバックスもあって、ビルの看板も、カラーコーンも映っていますので、だいたい撮影した場所がこの辺りに立っていたんじゃないかなとと推測できる。
なんと、1枚の写真からこれだけの情報が読み取れてしまうというのだ。
これは「モザイクアプロ―チ」と呼ばれる手法。

■自宅写真から間取りが分かり、マンションが特定されてしまうことも
SNSなどに投稿された文章や画像から住所などの個人情報を特定するもので、専門家は、特に注意すべきなのが「自宅」の写真だという。
国際大学GLOCOM 小木曽健客員研究員:家がバレてしまうケースの上位が間取り。間取りの写真から特定っていうところなんで。エアコンの位置とか、見えるビルの角度とかですね。
窓から見えるビルの景色、そしてエアコンなどの備え付け家具は不動産サイトの内覧写真と照合されて、マンション特定に繋がることも。
さらに…
国際大学GLOCOM 小木曽健客員研究員:燃えるごみの曜日ってのが大体地域がわかったから、じゃあその地域の中で何曜日のモデルを見ていったらこの地域かこの地域だなって絞り込み使われると思ってください。

■意外な「あるもの」から情報が特定されるおそれも…
さらに意外な「あるもの」から情報が特定されるおそれが。
先ほどの写真の中にヒントが…
街の人:こういうの(道路)とかも結構見れたりするんですよね。どこのスタバとか」
街の人:車のナンバーちゃうん?見えへん?」
街の人:消火栓?

■「瞳」や「タピオカ」から撮影場所が判明
SCSKセキュリティ亀田勇歩さん:映っている瞳だけを抽出して何が映っているのかを分析しました。高いビルが映っているなとか右側にのびているのが高架の端じゃないかと。
それは『瞳』です。
映りこんだ景色から田中アナウンサーの居場所がある程度、推測できてしまった。
亀田さんによると、特に注意が必要なのは『反射』。
例えばこちらのタピオカの写真を解析すると…
どの商業施設で撮影されたものなのか、特定できてしまうのだ。

■写真やSNSから住所などを割り出し報酬を得る『特定屋』
取材を進めると、SNS上で横行する「ある存在」が明らかに。
記者レポート:調べてみると『特定屋』という名前で活動している人がいるようです。『自宅写真、本名などがあれば必ずターゲットを特定』ともあります。
ネット上でいくつも見つかった、“特定屋”を名乗るアカウント。
特定屋のSNSアカウントより:着手1500円。成果により2000円からでお願いします。
成功率86パーセント。脅し程度の特定なら可能。
個人の写真やSNSの情報から住所などを割り出し報酬を得ているとみられる。

■専門家は「特定屋」が犯罪を助長させている可能性を指摘
専門家は、こうした存在が犯罪を助長させている可能性を指摘する。
国際大学GLOCOM 小木曽健客員研究員:(特定屋の中には)半分趣味でお小遣い稼ぎをしている学生さんとか主婦の方はいると思います。それを利用している犯罪者がいるっていう事実かなと思います。
気軽に楽しめるSNS。
一方で、その裏に潜むリスクを正しく知っておく必要がある。

■『瞳』の情報で場所特定 過去にはアイドルの女性が犯罪被害に遭ったケースも
吉原功兼キャスター:犬山さんもSNSに写真をあげていますよね。気をつけていることはありますか?
エッセイスト 犬山紙子さん:時間差であげたり、例えば旅行に行っているときとか、家を空けたりするときはそのタイミングで投稿しないとか。あとは家の窓の外の風景を映さないとかしていたんですが、エアコンの場所や間取りから分かることがあるんだとびっくりです。
吉原功兼キャスター:不動産サイトで検索したら、それ(部屋)が出てくるということですよね。さらに、『瞳』の情報で場所が特定されることもあるそうです。
関西テレビ 神崎博報道デスク:実際にアイドルの女性が犯罪被害に遭ったというケースがあり、アイドルの女性がアップしていたSNSの写真の瞳に映る景色から、利用している駅を特定して、その駅で待ち伏せをして、自宅までつけて行って、結局(女性が)わいせつ被害に遭った。ファンの男が逮捕されているという事例があります。

■『ピースサイン』で指先の指紋が流出 生体認証で悪用される可能性も
大変怖い特定ですが、他にも気をつけるべきところがある。
この季節、桜が綺麗なので、写真を撮ったらSNSにアップしたいと思ってしまいがちだが、この写真1枚にもとても危険なポイントが実は隠れている。
エッセイスト 犬山紙子さん:桜だってどこにでもあるような桜だし…ないですないです。分からないです。
大阪大学大学院 安田洋祐教授:場所は通りとか見て分かっちゃうのかな。
竹上萌奈キャスター:正解は場所ではなく、『ピースサイン』がダメということです。最近カメラの性能が上がり、画像から指先の指紋が流出するんです。生体認証で悪用される可能性があり、総務省も注意を呼びかけています。
エッセイスト 犬山紙子さん:ピースしているので、これから裏ピースにします。

■「情報出す側が大丈夫かどうか1回立ち止まって」
大阪大学大学院 安田洋祐教授:(カメラは)鮮明に画像を映せるし、かつそれを分析するような、最近だとchatAIとか、進化しているじゃないですか。分析もプロとか詳しい人じゃなくても、気軽にAIに相談して、『この画像を引き延ばしてくれ』とか、『場所を画像検索で教えてくれ』とか、いくらでもできますよね。だから、“SNS”の使い方に気をつけないと、“SOS”っていうことですね」。
関西テレビ 神崎博報道デスク:SNSは不特定多数の人が見ているので、情報出す側が大丈夫かなって1回立ち止まって、考えた上で投稿されるのがいいのかなと思います。
SNSに投稿する前に本当に大丈夫か確認したり、リスクがあるということを理解したりすることがまず第一歩。注意が必要だ。
(関西テレビ「newsランナー」2025年3月18日放送)
