高市総理の衆議院初当選は1993年。まだ中選挙区時代のことで、選挙後、細川“非自民・非共産”連立政権が発足した。

細川政権で総理特別補佐をつとめた田中秀征氏は、高市総理を「官僚支配からの脱却を期待できる、田中角栄にも似た『創業者』としての資質を持つ」と指摘する。

冷戦終結を受けた日本の政治改革を主導したの田中秀征氏が、「ポスト冷戦の終わり」を迎えた今の日本で高市総理に寄せる期待を語った。

■改革の最大の抵抗勢力は「大蔵省」だった

―政治改革の議論が盛んだったころ、田中さんは「まな板の鯉が包丁を持って改革するといっている」と表現されました。

田中: 「まな板の鯉」は大蔵省なんだよ。大蔵省がね、改革を省の中でやるためにチームを作るって言うから、「改革される対象が、なんで自分でできるんだ」と。ポッと委員会答弁で出てきたんだよ。「まな板の鯉が包丁を握ってる」って。

田中: 官僚は自己改革すると必ず言うんだよ。それは絶対できないよ。自分のことを改革するって絶対できない。改革したふりしかできない。官僚改革こそ政治のやることなんだよ。官僚は「いや、そこまでやらなくても我々がやります」と、やったようなふりするんだよ。(組織や制度の)名前を変えたりね。そんなものは改革じゃない。

そういう点じゃ高市さんはやっぱり、官僚制度にまで切り込むだけの、あれがあるよ。見ものだね。

―高市総理は財務省の言いなりにはならない?

田中:分かるもん、僕は。なんて言ったっけ、財務省の言いなりになっている人のこと?

―ザイム真理教ですか?

田中: そう、「ザイム真理教」の政治家は言ってることですぐ分かるんだよ。あ、財務省の入れ知恵だって。高市さんはそうじゃないよ。政治家はそこから脱しなきゃだめだよ、官僚の呪縛から。

―なぜ高市総理は「ザイム真理教」ではないとわかる?

田中: だって高市総理の言ってることは、財務省にとっては嫌なことだよ。消費税減税についても。野田(中道前共同代表)とか、安住(中道前共同幹事長)とか、民主党政権時代の財務相経験者だけど、全然だめだよ。もう財務省の出張所みたいになってるから。彼らの一言一言で分かるもの。

財政規律は大事だけど、税金は使うために集めるんだからね。それを有効に使うために集める。高市さんはなんていうかな、自分の政治生命を短くしてでも、これから頑固に政権運営するんじゃないかな。

■高市総理は「田中角栄と同じようにゼロからはいあがってきた」

―「新党さきがけ」では「民権政治」を掲げていました。今の政治状況は当時の理想に遠ざかっていますか。

田中: 「官権」の反対の言葉として「民権」という言葉を使ったんだね。重要な案件であればあるほど政治家は官僚の言うことを聞く、とういう話なんだけどもね。高市さんに対する期待がそこにあるんだよ。それを打ち破っていくことができる数少ない人だというふうに思うよ。彼女は創業者だから。僕と同じ感覚を持っているような気がするよ。田中角栄なんかもそうだけどね。ゼロからはい上がってきている。

彼女もいろんなところを僕よりうまい具合に渡ってきたと思うんだけども、そういう中で学んだことっていうのはものすごく多いから。それは田中角栄が学んだことと同じだよ。


■「チベット問題を日中首脳会談で口に出したんだよ。大拍手だよ」

田中: 高市さんが「右」と見られてることはなんの得策でもないね。僕はね、岡田(克也・元外務大臣)の台湾有事に関する国会質問をテレビ生で見てたんだよ。そのときね、テーブル叩いて、「そんなこと聞くな!」と、テレビに向かってどなりつけたんだよね。そのあとの高市総理の答弁聞いて「そこまで言うな!」って、またテレビに怒鳴っちゃった(笑)

この答弁はとんでもないことになるぞという感覚をどうして持たないのか。そういう感覚を持った人間を高市さんはそばに置かないんだな。

田中: 昨年10月の日中首脳会談のときに、習近平主席はこういう言い方したんだよ。「村山談話は広く検討する価値がある」と。

で、そのあと、高市総理が何を言ったか新聞各紙全部見たんだけど、どこにもそのあと返答が書かれてないんだな。彼女の側からの返答がないんだよ。それに答えなかったんだ。その言葉を受けて何か言ったってことじゃないんだな。

間を置いてね、今度は高市さんのほうから言ったんだよ。三つの談話について。村山、小泉、安倍談話(終戦50,60,70年談話)、その線で行きますって。

普通ね、習近平主席に対して言えないことを高市総理は言ったんだよ。ウイグルの問題とか、内モンゴルの問題とか、チベットの問題を首脳会談で口に出したんだよ。「自由が弾圧されてる」と。大拍手だよ。


■村山談話があったから習近平にモノが申せる

田中:だけどそれを言うためには、向こうから「あんたたち昔それやったじゃないか」と言われたらおしまいなんだ。村山談話はそれについてきちんと総括して、謝って、反省して、世界にそれを示しているわけだろ。(後の世代の総理は)「私もまったく同じ考えです」と言えばいい。

1989年に冷戦が終わり、こちらから戦争の性格、つまり「侵略戦争」「植民地支配」という言葉を使って、あの戦争に対する認識を明らかにしなければだめだという考えが当時あった。外から言わされてはいけないと。細川首相の最初の記者会見でそれを実行した。国内よりニューヨーク・タイムズなど海外の新聞の反響がすごかった。

あれをやっていなかったら、今ごろどうしようもなかった。その後、小泉談話、安倍談話と続くが、すべて村山談話を踏襲している。何度も謝ると逆に誤解を受ける。謝るのは一度でいい。本当にやっておいてよかったと思っている。

■「安倍派の高市から、みんなの高市に脱皮しなきゃ」

―保守的と言われる小泉さんや安倍さんといった歴代総理でも村山談話を踏襲されたことには重みがあります。

田中:小泉談話の時に僕は総理の私的な懇談会の座長を頼まれてそばにいた。小泉さんは、岸・福田の流れをくむが、イギリスに留学していたこともあって、あの戦争は侵略戦争だと断定していた。清和会系の中では珍しかったと思う。だから、細川さんや私と小泉さんの認識は全然違わなかった。

高市総理は旧安倍派のことは考えなくてもいい。みんなの高市になれば、いちいち頭をなでなでしなくても、仲間はちゃんと手伝ってくれる。いい仕事してくれりゃいいんで。“安倍派”の高市から、“みんな”の高市に脱皮しなきゃ。そういう意味では今回の総選挙が、そのきっかけ。まさに高市さんが言うように、力を与えてくれということ。

みんなの高市になるために総選挙やったんだ。それでいいんだよ。


※このインタビューは1月30日に行った。
(取材・構成:カンテレNEWSチャンネル編集長・佐藤一弘)

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