一番大変な不動産と預貯金の手続き

本来、一人ひとりの財産は独立しているので、親子であっても財産を共有する必要はありません。あくまで親の個人の財産という位置付けになります。

ところが、親が亡くなってしまえば、当然のことながら財産の所有を続けることはできません。すると、個人の財産は“故人の遺産”へと形を変えることになります。そして、その遺産は相続人たちの共有となります。

そして、その遺産を相続人の間でどのように分けるかを決め、引き継ぐのが「相続」なのです。

相続では相続人の間で財産をどのように分けるかを決めなければならない(画像はイメージ)
相続では相続人の間で財産をどのように分けるかを決めなければならない(画像はイメージ)

遺産相続は、“争続”と言われるほど、もめ事が起こることはよく知られています。それに加え、とにかく時間がかかり、何十日も何年も、場合によっては何十年も続くことがあります。中には、途中で諦めて放置しているケースも見受けられます。

時間がかかればかかるほど、相続人の肩の荷が下りない状況が続きます。心理的負担がのしかかったまま、日常を過ごすことになってしまいます。

そのように遺族にとって負担が大きい相続ですが、中でも一番大変なことは何か?と問われれば、「不動産と預貯金の手続き」が挙げられます。

他にもやるべきことはありますが、死亡届は葬儀社が代行してくれます。年金の停止、保険証の返却、葬祭費の請求といった役所で行う手続きも、役所に行けば通常は1日で終わります。

その一方で、「不動産と預貯金の手続き」は、故人の財産を漏れのないように“すべて”調べなければならないため、あらかじめ把握しておかないと、多大な時間と手間がかかるのです。

財産はプラスだけとは限らない

“すべて”という言葉を強調したのは、すべての財産を把握した上で相続を進めないと、後々トラブルになることがあるためです。相続人同士で、後に発見された遺産の分け方を巡って争いになったり、協議のやり直しの必要性が出てきたりすることがあるのです。

遺産と一口に言っても、その内容は多種多様です。遺産となる個人の財産は、預金の他にもたくさんの種類があります。

財産は預貯金だけではなく株など多岐にわたる(画像はイメージ)
財産は預貯金だけではなく株など多岐にわたる(画像はイメージ)

土地や建物といった不動産、投資信託、株、手元に遺った現金、金などが挙げられますが、これらプラスとされるものだけではありません。生前の借り入れや買掛金のようなマイナスのものも相続で引き継ぐべきものとなります。

故人から何も聞いていなければ、果たしてプラスのものは何なのか、マイナスのものはないのかを、一つひとつ調べていかなければならないのです。

普段調べることがないものを調べるというのは、思っていた以上に大変な作業となることがあります。

例えば、親の銀行口座がどこにあるかよく分からない場合は、銀行に照会をかけ調べてもらうことができます。ところが、銀行は土日が休みです。仕事が休みの日に確認したいと考えても、土日だと対応してもらえません。

さらに、平日の窓口業務は15時(ゆうちょ銀行は原則16時)までとなっているので、仕事帰りに行ってもシャッターが閉まっています。

故人がどのような財産を持っていたのかわからない状況でこのような作業を進めることは困難を極めるでしょう。