前駐日大使のラーム・エマニュエル氏が、次回2028年の米大統領選挙の民主党候補に名乗りを挙げるようだ。
政治専門サイト「ポリティコ」が12日、次のような見出しと小見出しで伝えた。
「ラーム・エマニュエルは大統領選に向けてギアを上げる」
「元シカゴ市長はすでに遊説を始め、トランプ主義を中道から攻撃する新しい道を模索している」
帰任後は公職につかず実質的な遊説開始
エマニュエル氏は、米国の政権交代に伴って1月に駐日大使を離任して、帰国した後は公職につかず、CNNのコメンテーターやワシントン・ポスト紙のコラムニストを務めながら各地で講演を行い、実質的な遊説を始めている。
Column: Rahm Emanuel wants to run. Yes, for the presidency, writes our politics bureau chief @jmart.https://t.co/G6TovGdxvx
— POLITICO (@politico) March 12, 2025
その目標だが、民主党全国委員会(DNC)議長や2026年選挙のイリノイ州知事、又は上院議員、シカゴ市長などはいずれも有力な候補者が居るので、残るは2028年の大統領選に賭けることだと「ポリティコ」は分析する。

エマニュエル氏はシカゴ市の出身で、大学院在学中から地元議員の選挙にボランティアで参加した後、ビル・クリントン政権に深く関わり、上級顧問として辣腕を振って「ランボー」とも呼ばれた。
また自ら下院議員として2002年から3期6年務めた後、バラク・オバマ大統領の主席補佐官を経てシカゴ市長、駐日米国大使と華やかな政治経歴を辿り、政界では「知る人ぞ知る」存在だが、全国的な知名度の開拓が課題とも言われる。
そこでエマニュエル氏は、「左寄りすぎる」とも言われる今の民主党の路線にあえて逆らって「中道路線」を打ち出し、2024年の大統領選挙で失った穏健な進歩派の有権者への訴えに力点を絞っているようだ。
エマニュエル氏が打ち出す「中道路線」
3日にシカゴ経済クラブで行った講演でも、エマニュエル氏は「民主党はDEI(多様性、公平性、包括性)にとらわれるあまり沈没してしまった」と次のように語った。
「もしあなたの子どもの3分の2が代名詞が何かを知らなかったらどうしますか?米国のこどもたちは読解力でここ30年で最悪の得点、数学でもここ30年で最悪の得点を記録したのに、私たちは(性同一性障害児の)トイレやロッカールームをどうするかの話をしている…。
教育にやり直しはありません。あなたがこの部屋にいるのは、良い教育を受けたからです。私は皆さん全員のことを知っているわけではありませんが、皆さんの子どもも良い教育を受けるべきです」
2008年に誕生したオバマ政権以来民主党の根幹的な政策になったDEIを真っ向から否定するこのエマニュエル氏の中道路線は、民主党の候補者選びの最大の争点にもなりそうだ。
その民主党の候補者選びに今名前が上がっている顔ぶれと支持率は次の通りだ。(Echelon Insights調べ)

カマラ・ハリス前副大統領 36%
ピート・ブティジェッジ前運輸長官 10%
ティム・ウォルズ前副大統領候補 9%
ギャビン・ニューサム カリフォルニア州知事 6%
アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(ニューヨーク州)5%
マーク・キューバン 実業家 3%
ジョシュ・シャピロ ペンシルべニア州知事 3%
ハリス、ウォルズ両氏はともかく、いずれも2024年の大統領選挙で主導的な立場をとった、言ってみれば「手垢のついた」面々で、エマニュエル氏の中道路線が何か斬新に映ることになるかもしれない。

ただエマニュエル氏はユダヤ系で、湾岸戦争の際にはイスラエル軍に民間ボランティアとして参加していた経歴もあり、ガザ紛争をめぐって反ユダヤ主義が強い折にどうその風当たりをかわすかという課題もありそうだ。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン・図解:さいとうひさし】