11日で、東日本大震災から14年を迎えた。
福島・大熊町では新しい家ができる一方で、除染土が積まれた広大な中間貯蔵施設や、廃墟のまま残る建物もあった。
大量の除染土は、2045年3月までに県外で最終処分することが法律で定められているが、最終処分地は未定のままで議論が進んでいないのが現状だ。

新しい暮らしと廃墟が混在する福島・大熊町

東日本大震災から14年がたった福島・大熊町を「イット!」の宮司愛海キャスターが取材した。

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宮司愛海キャスター:
福島県大熊町です。このように新しく建てられた家々が建ち並んで、道路もきれいに舗装されている一方で、向こう側に目をやってみますと、手つかずのままの住居がいまだ残っているといった現状があります。

大熊町は、福島第一原発が建つ原発の町だ。
今も「帰還困難区域」が残る故郷に戻ってきた女性がいた。

小泉良空さん(28):
ここがもう全部田んぼでした。昔は本当に想像するような原風景というか、田園がただただ広がってて、カエルの鳴き声がとんでもない時期もありました。

宮司キャスター:
自然に囲まれた暮らしで育ったんですね。

小泉良空さん(28):
本当に、自然にだけは囲まれてた自信があります。

原発事故が起きたのは、大熊町で生まれ育った小泉良空さん(28)が中学2年生の時だった。

小泉良空さん(28):
ここが玄関になるのでロープを外しますね。ここが玄関で、こっちに家族全員で過ごした居間があって、毎日そろってご飯を食べてました。

家族で暮らす実家があったのは、原発から約7kmの場所だ。
震災後も家屋は残っていたが、除染を理由に解体された。

小泉良空さん(28):
実際帰りたいと思っていたのがこの建物だったので、やっぱり見に行きたくないなという時期がありました。

東京の大学に進学した良空さんは、一度は福島市の住宅会社に就職したが、今は地元に戻り、震災と原発事故の経験を語り継いでいる。

宮司キャスター:
それだけ自分が生まれ育った場所を愛していて、好きってことですね。

小泉良空さん(28):
大熊町内には住んではいるんですけど、自分が生まれ育った所に帰って、初めて「ただいま」って言えるのかなという感覚がなんとなくあって。帰ってきてはいるけど、帰ってきてないみたいな。そこに生活するということが、長年の夢というかゴール。

大熊町と双葉町にまたがる帰還困難区域に原発を取り囲むように造られた「中間貯蔵施設」では、道路の両脇に原発事故後、福島県内の除染で発生した膨大な量の土などが積まれていた。
その敷地内に、震災当時のまま手つかずとなっていた老人ホームがあった。

宮司キャスター:
まだ当時のまま残っていますね。大きな地震を受けて散らばった事務用品がそのままになって残されていますね。奥の壁に掛けてあるカレンダーも、2011年のまま時が止まっています。

大熊町役場の武内さんは震災当時、この施設に家族が入所していたという。

大熊町役場・武内一恵所長補佐:
(震災当時)祖母が入所していまして、施設の方が必死になって移動させてくれました。

周囲には14年前のまま、車が置き去りにされていた。
中間貯蔵施設には、東京ドーム11杯分にものぼる除染土が保管されている。
除染土を積み上げた高台には、芝生を張った広場があった。

宮司キャスター:
実際に立ってみると、本当に広いのが分かります。

最終処分まで“20年”も…全国的な理解進まず

中間貯蔵施設の広大な敷地は、地元の住民たちが代々受け継いできた土地を一時的に国に提供したものだ。

処理水のタンクが並ぶ福島原発
処理水のタンクが並ぶ福島原発

宮司キャスター:
あそこが福島原発ですね。処理水のタンクもたくさん並んでいるのが分かりますね。

大熊町役場・武内一恵所長補佐:
実は、家は本当に近くなんです。

役場の武内さんも、家族と暮らした自宅に戻りたい気持ちを明かしてくれた。

大熊町役場・武内一恵所長補佐:
子どもを4人育てていた最中だったので、やはり思い入れもありました。

大量の除染土は、2045年3月までに県外で「最終処分」することが法律で定められている。
しかし、その期限まで残り20年となる中、全国的な理解や議論が進んでいないのが現状で、最終処分地の行方はまったく見えていない。

大熊町役場・武内一恵所長補佐:
20年後になりますと、私自身70歳くらいになる。町民としてすごく思い悩むところはあります。

14年の月日がたっても、故郷への思いはなお募る。

双葉町・浜野行政区 高倉伊助区長:
われわれ双葉町の場合は、ゴールが見えない場所です。帰りたくても帰れない。関東圏に100%ここで作ってる電気を送ってたわけですよ。そこを加味して議論してもらえればなとの思いは、地元住民としてはそういう気持ちだと思います。

双葉町で語り部として活動を続けている高倉さんは、議論が進まない現状についてそう訴えた。
(「イット!」3月11日放送より)

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