国際協力機構・JICAの海外協力隊は2025年で60年を迎える。この活動は、開発途上国の支援を目的にJICAが各国のニーズに対応できる技術や知識を持った人材を現地に無償で派遣するもので、派遣期間は最長で2年間。協力隊として活動する人の渡航費や現地での生活費などは日本側が負担する。これまでに延べ99か国に約5万7000人。大分からも600人以上が協力隊に参加している。今回、JICAの協力を得て、太平洋の島国『パラオ』で活動する隊員たちを取材した。
大分にゆかりのある隊員に聞く協力隊の魅力

1965年に「日本青年海外協力隊」の名称でスタートしたこの事業。隊員たちは、農林水産や化学、教育やスポーツなど幅広い分野で開発途上国の人々の暮らしを支援してきた。
今回、取材班が向かった先は日本から南に約3000キロ離れたパラオ。美しい海に囲まれた日本人にも人気の観光地である。遠く離れたこの国で、協力隊員はどんな思いで活動をしているのだろうか。
小学校から高校卒業までを、大分県中津市で過ごした川崎則彦さんだ。
川崎さんの職場は、パラオの公共インフラ産業省。日本で言うと総務省や国土交通省の役割を果たす省庁で、 データ管理の仕事をしている。
異なる文化や価値観で「常に新鮮なものを入手できる」

パラオの前にもケニアなどで2度、協力隊の活動に参加した川崎さん。その魅力について次のように語る。
「日本の常識は世界では非常識って言われたりするけどやはり考え方や価値観が違う。実際に住むと、『これがこの国の価値観だ、文化だ』みたいな形でいろんな面が吸収できるので、常に新鮮なものを入手できることは海外に住むいいことだと思う」
教師をきっかけにパラオに移住した女性も
また、途上国での仕事にやりがいを覚え移住した人も。JICAのパラオ事務所で働いている、大分市出身の伊藤藍子さんは、パラオの滞在歴は通算で約20年で、移住のきっかけは小学校の教師として協力隊に参加したことだったという。
2年間の活動の中で、日本の教育をパラオの子どもたちや教師に伝えた。

伊藤さんは「教え子の3年生が高学年の子と掛け算大会をすると、3年生が勝つんですよ。日本の教育で生活が向上したり、その人の人生や将来が広がることがあるので、パラオの人たちだけではなく海外の人もそうだが、お互いに得るものはたくさんある」と活動について話す。
途上国のためだけではなく「大きな将来の糧になるような経験ができる」
JICA海外協力隊が掲げる3つの目的の中には、「異文化の相互理解」や「ボランティア経験の社会還元」というものがある。
途上国のためだけではなく、隊員たちも新しい知識や価値観を得て、成長できることが、この事業の魅力なのかもしれない。

また、海外協力隊の事業担当者は、現地の人のために一生懸命汗を流す、それだけではなくて自分自身の人生の中でも大きな将来の糧になるような経験ができる素晴らしい制度だと思うので、ぜひ挑戦してほしいと話している。
派遣前には現地の文化などについて学ぶ合宿を実施
ただ、興味はあっても、言葉の壁や生活習慣の違いなどに不安に感じて応募に躊躇してしまうという人もいるかもしれない。
そこでJICAでは派遣前訓練として現地の言語やその国の文化などについて学べる約70日間の合宿を実施しているという。

協力隊になるためには必ずしも特別な経験や技術が必要というわけではないという。興味のある方は挑戦してみてはどうだろうか。
協力隊の募集は春と秋の2回あり春の募集については3月21日からとなっている。
(テレビ大分)