引っ越しなどで重い荷物を運ぶ機会が増える春先は、腰痛の患者が増える傾向にある。慢性的な痛みや急激な痛みなど、症状もさまざまな腰痛についてメカニズムや予防策を医師に聞いた。

腰痛のメカニズムは大きく2つ
取材したのは木田整形外科の院長、中嶋宰大医師。腰痛のメカニズムは「大きく前方要素と後方要素に分かれる」という。

▼前方要素は、前方の腰椎が折れてしまう圧迫骨折と、骨と骨の間にある椎間板の変成によってクッション性がなくなり腰痛を発症する。

▼後方要素は、関節が変成を起こしたり腰の骨がずれたりすることで、椎間関節に負担がかかり発症する。また「柱管狭窄症や椎間板ヘルニアによって、脊髄や神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されて発症する腰痛もある」と中嶋医師。腰痛の種類によって原因はさまざまだ。
雪かきで腰椎を圧迫骨折
中嶋医師によると、雪深い冬から春にかわる2月から3月にかけては腰痛を発症する人が多いという。福井県内では、2月に強烈な寒波が日本列島を襲い平地でも警報級の大雪となった。雪が一段落した頃に、腰痛を訴える患者が多く来院している。

中嶋院長が診察した70代の男性は、湿布を貼っていたが3週間経っても腰痛が治らず受診した。「5つある腰の骨のうちの第一腰椎が、他の骨と比べて高さが減って上の部分が凹んでいる。これを腰椎の圧迫骨折といい、雪かきの作業中に受傷したものと考えられる」
肥満など…“ギックリ腰”を繰り返しやすい人も
春先に腰痛を発症する人が多い要因は、雪以外にもある。中嶋医師は「3月は引っ越しシーズンなので、中腰で重いものを持ち上げたりする動作によって負担がかかり、腰痛を発症することが多い」と注意を呼び掛ける。引っ越し作業中に急性腰痛、いわゆる“ギックリ腰”になる人も少なくない。特になりやすいのは40代以降の人だ。

中でもデスクワークや立ち仕事などで長時間同じ姿勢でいる人、生活習慣が乱れている人、肥満の人は、一度ギックリ腰になるとその後も繰り返しやすくなる。

また、痛みの程度や期間によっては別の要因がある可能性も。中嶋医師は「歩けない、寝返りを打てない、安静にしていても腰痛がある人は、血管系の病気の可能性もあるので早めに医療機関を受診してほしい」と訴える。
腰痛予防に効くストレッチ
腰痛を予防するためには、普段から腰回りの筋肉を柔らかくしておく必要がある。理学療法士におすすめのストレッチを教えてもらった。

<脚のストレッチ>片方ずつ脚を抱えて腹に引き寄せ、そのまま尻や腰を伸ばす。(左右20秒ずつ)

<胸郭のストレッチ>四つん這いになって背中を真っすぐにした後、へそを覗くように背中を丸める。(10セット)

<腹部のトレーニング>腹が膨らむよう息を吸い、腹を凹ませながら息を吐き切る。(10回)
新生活に向け引っ越しなどで重い荷物を持つ人が増える時期。腰にかかる負担を少しでも減らすため、簡単なストレッチで予防につなげよう。