岩手県大船渡市で発生した山林火災で犠牲となった柴田吉郎さん(90)の長男修幸さん(63)がFNNの取材に応じ、「自分が早く助けに行けたら、悔やんでも悔やみきれない」と悲痛な胸の内を明かした。吉郎さんは火災が起きた翌日2月27日、自宅近くの坂道で発見された。足が悪く、火の手から逃げ遅れた可能性があるという。修幸さんのインタビュー全文。

「受け止めることができなかった」

‐‐今回の山林火災で、男性の方が焼死体で見つかったということなんですが、ご関係としてはどういったご関係になるんでしょうか 

父親です。

‐‐警察の方からは、身元などは発表はまだないのですけれども、何か柴田さんには伝えられたりしましたか

来ました、来ました。きのう(3月6日)かな。きのう来て、DNA鑑定は父親で断定されて、それで報道の方にも名前がもしかして載せるかもしれないけど、そこはと言われたんですよね。

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 ‐‐もしかしたらという思いで、警察から聞いたと思いますけれども、改めてどんな思いで受け止めたんでしょうか 

最初は受け止めることができなかったですよね、やっぱり。火災後も仕事には行ってたんですけど、火災がもう最初どこで起きてるかも分からなかったので、最初、職場の人と陸前高田が鎮圧してすぐだったじゃないですか、職場の人と救急車走ってるけど、鎮圧したところから火が出たのかなと話はしてたんですよね。建物の中だったので、防災無線も聞きづらかったんですよね。それであの何時頃かな、3時近くだったかな、携帯アラート、緊急速報みたいなのが流れるじゃないですか。

それで、合足地区が火事だということで、向かったんですけど、合足地区の手前にトンネルがあり、警察に止められました。迂回して行ったのですが、綾里地区にもトンネルがあるんですよね、そこで警察の方に止められて迂回してくれと。迂回してすぐ行ったんだけど、今度、綾里地区にもトンネルがあるんですよね。そこのトンネルでまた止められて、実は父親と連絡が取れないから行きたいんだけどと言ったんだけど、これ以上は入らせられないからと。それで、警察の方も消防の方と連絡をとっていたみたいなんですよ。しばらく連絡が来るのかなと思って探したんだけど、連絡がなかなか来なくて、もしかして、避難所に誰か連れてってくれてるのかなと思って探したんだけれども、その日は避難所にはいなくて。もしかして、記入漏れ、父も歳が歳なので、記入漏れもあったのかなと思いつつ、また次の日も行ったんだけども、27日、その時もいなかった。27日の午後かな警察から電話があって、遺体で発見されましたみたいな電話が来て、確認をお願いしますかと、すぐ確認に行ったんですよね。 

「悔やんで悔やんで…」

‐‐お父様だったんですか 

うん、ちょっとね。焼け焦げて断定はできなかったんですけど、家から県道に上がってくる道路って、結構、坂道になっているんですよね。50メートルぐらいあるんですけど、そこのところで倒れて発見されたというから、あー父親だなと思って。 

‐‐今回の火災では、まだ名前等発表されてなくて、我々も誰が分からない状況の中でこういった形で探していて、今回の山林火災で、お父様が亡くなられたという知らせを聞いて、悔しいという思いは 

ありますよ。もうどうして、もっとちょっと自分が早く分かって助けに行けたらと思う、そればっかり悔やんで悔やんで、悔やんでも悔やみきれないないですよ。。遺憾でしかないです。 

「一生懸命、逃げようと…」

‐‐お父様はどんな思いで火災当時いたと思われますか 

結構うちの父って、足が悪いので歩くのも遅いし、心臓も若干弱い人だったんだよね。それで一生懸命登って来ようとしたんだろうけど、途中で煙か炎かに巻き込まれて、そういう感じじゃないですかね。 

‐‐おひとり暮らし  

俺も一緒に暮らしてたんだけど、俺は仕事に行っていて。 

‐‐朝の最後の言葉は? 

朝ね、俺結構早く出社するんで、親父は寝てたんだよね。いつも朝は会話という会話はないんだよね。俺、仕事早く出ちゃうから。 

‐‐ご家族の中では唯一、一緒に暮らして

そうです、そうです。 

‐‐最後の言葉は 

最後の言葉って、ほとんどないかな、覚えてないです。前の日の晩も飯食って、風呂入ったら疲れて寝ちゃう方なんで。 

父は「頑固」

‐‐どんな方だったんですか、お父様は 

うーん、頑固といえば頑固かな、うん。 

‐‐妹さんは、お父様を知ってもらいたいという思いと聞いたんですけど、修幸さんはどんな思いですか 

うん。

‐‐今回、これだけ山林火災の面積が非常に広い中で、まだ、自然発火なのか、原因がわからない状況ですが 

本当にね、3件続けてってのも信じがたいですよね。鎮火すれば次、別のところから火が出て、やれやれ鎮火したなと思えば、またでかい火事でしょ。こういうことがあってはならない。起こしてもならない。それでも犠牲者はうちの父一人だったので、犠牲者が出ないだけ良かったんじゃないですか。鎮圧に向けて、関係各者、頑張って消火活動にあたってますけど。 

「自分しか責められない」

‐‐お父様が犠牲になってしまって、どんな思いですか 

本当にやっぱり自分しか責められないですよね。もうちょっと早く助けに行けたのにって、それしか頭にないですよね。誰を責めるわけでもなし、責められるわけでもなし、本当に自分がもうちょっと状況をわかって助けに行けたら、こういうことにはなっていないと思うんで。 

‐‐途中のトンネルで2度警察に止められたという話がありましたが、お仕事中に頭によぎったりしたことはあったんでしょうか。 

すぐだったから、陸前高田の山火事があったじゃないですか。あれで鎮火してすぐだったじゃないですか、あれもしかしてまた鎮火したところから火が出たんじゃないかって会社の人としゃべってたんですよね。そういっている間に現場というか中に入っちゃったんで防災無線も聞こえない、ただ仕事してたら携帯の緊急速報で見て、合足地区が火災になったと。それですぐ走って向かったんですけど、その時はもう、さっき言ったんですけど、トンネルで止められて迂回して来たんだけど、まだ入れなくてどうしようもなかったですよね。 

「家が無くなった人はどうすれば」

‐‐ごきょうだいは 

妹。 

‐‐おふたりきょうだい 

そうそう。 

‐‐お母様は 

震災前かな、亡くなってるので。 

‐‐お仕事は 

いま、建設関係ですね。 

‐‐避難所生活を送りながら仕事に行ったりとか 

仕事は行ってないです。父のこともあるし、まだいろいろやることもあるんで、まだ全然行けてない状態です。これからもいろいろやることもあるんで、それが収まってから、仕事に行くかそれとも、そのまま、自分、岩手じゃないんですよね。北海道なんですよね、家が。だからそのまま仕事を切り替え、いろいろ用事が終われば、そのまま北海道に帰るか、こっちにいても、仮設住宅がどうなるか、亡くなった人たちはどこに避難するのか、まだ全然、情報が入ってないんで。そういうこともあるだろうし、果たして住所が違うのに仮設に住めるかどうか全然わからないので。 

‐‐このあとのご予定は 

正午近く(3月7日)からちょっと葬儀社の方に用事があって行ってくるんですよね。 

‐‐越喜来甫嶺地区は避難指示解除の検討がされていますが、もし解除されたら(※取材の翌日3月8日に解除) 

解除されたらというより、その前に家が無くなった人たちはどうすればいいのか。そういう情報も入ってこないし、ただ解除と言われても、家がある人、なんともない人は解除されれば、家がどうなっているか見にいけるけど、ただ家が無くなった人はこれからどうしたらいいのか、そういった情報も入ってこないし、果たして市のほうで、対応はしてくれていると思うんだけど、全然情報が入ってこないんで。例えば、家が焼けた人は別の避難所にまとまって入るのか情報が入ってこないので。 

坂道で巻き込まれたか

‐‐お父様が倒れていた場所は 

家は県道があって、県道からちょっと50メートルぐらい下がっていくんだよね。下に海岸沿いに 

‐‐お父様は家の中ではなくて 

そうそうそう。 

‐‐状況からすると、火災から 

逃れようとして、自分で歩いて登ってきた時に煙に巻き込まれたのか、炎に巻き込まれたのかはわかんないんですけど、倒れてたと。そういう情報が警察の方から遺体の確認に来てくれませんかと言われて 

‐‐煙を吸って、一酸化炭素中毒のような 

司法解剖では焼死となっていました。 

‐‐自宅の方は  

確認しに行けないって。話に聞けば、全焼だと言われてます。 

「助けてやれなくて、ごめん」

‐‐推測になりますが、お父様の火災から逃れようとした思いというのは 

足も悪いし、心臓も悪かったので、父自体、一生懸命逃げようとしたんじゃないですか。それを思うと、やっぱり、もうちょっと、どうして俺が早く助けに行けなかったんだろうって、そればっかり悔やんでますね。 

‐‐悔しい思いというのは 

あります。あります。ずっと思ってます。 

‐‐今、お父様に声かけるとしたらどんな言葉を 

ただ一言ですよね。助けてやれなくてごめん。それだけです。 

取材:2025年3月7日

(岩手めんこいテレビ)

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