丸山大輔元長野県議が妻を殺害した罪に問われている裁判。検察側は「身勝手な動機で、計画的な犯行」として「懲役20年」を求刑し、弁護側は「直接的な証拠がない」として無罪を主張した。最後に丸山被告が証言台に立ち「私が妻を殺すわけがない」と話し、裁判は結審した。最終意見陳述は約25分間に及び、自身の潔白を訴えた丸山被告。法廷で何を語ったのか、詳しくお伝えする。

初公判で「無罪」を主張

元長野県議会議員の丸山大輔被告(50)。2021年9月に、長野県塩尻市の自宅兼酒蔵で妻・希美さん(当時47)の首を何らかの方法で圧迫し殺害した罪に問われている。

これまでの裁判で検察側は、不倫相手の存在や妻の実家からの借金などを理由に「妻を殺害するしかない状況で犯行動機があった」と主張。一方、弁護側は、「事件当時は夫婦間にトラブルはなく、殺害する動機はない」と主張している。

丸山大輔被告 イラスト:一色こうき
丸山大輔被告 イラスト:一色こうき
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丸山被告は、初公判で「妻を殺害したのは私ではありません」と起訴内容を否認し、被告人質問でも、事件前後の議員会館と自宅の往復を否定していた。

検察側は「懲役20年」求刑

18回目の審理となった11月26日の裁判。

続いて、検察側が論告で、現場の状況から「被告が犯人でないと合理的説明がつかず、被告人が犯人でないことはありえない」などと主張。その上で、「身勝手な動機で、計画的な犯行。反省の気持ちはみじんもない」などとして、懲役20年を求刑した。

丸山大輔被告(2022年9月取材)
丸山大輔被告(2022年9月取材)

一方、弁護側は、「被告は事件前日夜から当日朝は議員会館にいた」と改めて主張。その上で「直接的な証拠は全くなく、間接的な証拠も、合理的な疑いが残らない程度に証明できていない」として無罪を主張した。

被告「私が希美を殺すはずがない」

双方の主張の後、丸山被告が証言台に立った。

坂田正史裁判長から「最後に述べておきたいことはありますか」と問われると、証言台の前に立った丸山被告は―。

被告:
「当初、黙秘をしていたことについて話します。逮捕された時は怒りと混乱と、そんな気持ちの中にいました。私が希美を殺すはずがない、殺人なんて恐ろしいことをできるはずがない」

丸山大輔被告 イラスト:一色こうき
丸山大輔被告 イラスト:一色こうき

「一生殺人犯として生きていくことになるのか、人は生きていればどんな可能性もあるけど希美の可能性を奪うことなんてありえない。そして、また子ども達からかけがえのない母親を奪うことを私がするはずがないと、非常に強く思ったし伝えていきたいと思いもありまして、話をしたいと思っていたが、弁護士から口をそろえて話をしないでくれとおっしゃいました。担当検事からも事実を知りたいだけなんで何でも話してほしい。間違ったことを言ってもそれは理由があれば後で訂正できるからと言われ、同じ思いだと思い、弁護士さんにもその都度話したいと相談しました」

殺害された丸山希美さん
殺害された丸山希美さん

「しかし、その後、起訴になり、きょうに至るまで様々な証拠や供述を見る中で弁護士さんが言った通りだなと、それは私が何を話したとしても私にとって有利なものは使われないし、不利なものが都合よく使われる」

「1つ話すと、検死の報告を受けた時に警察官から首を絞められる時は苦しくなるので、首に引っ搔いた傷が残るはずなんで、それは両腕を抑えられてたんじゃないかと、その状況はすごく特異な状況、犯人がわざわざ両手を抑え込む必要がない、そうやってる間に希美が声を出したり抵抗したりするでしょうし、最初から首を絞めてしまった方が手っ取り早い。わざわざそういうことはしないだろうし、突然現れた犯人と、希美が全く警戒していない時に驚いた衝撃でそんな風になったのではないかと思った。珍しい状況にも関わらず検察は特に何かに役立てようとしてません。なぜなら私の有利になるからではないかと思います」

事件現場
事件現場

これまでの検察の捜査や裁判の内容について不満をあらわにした被告。

坂田裁判長から「そろそろまとめてください」と指示されると、被告は「あと20分くらいいただきたい」と述べ、法廷は一時休廷した。

犯行の動機について反論

休廷後、丸山被告は検察側が主張していた「犯行の動機」について反論した。

検察側はこれまでの裁判で、希美さんと離婚することで借金や選挙活動に影響が出ると主張していた。

丸山大輔被告(2022年9月取材)
丸山大輔被告(2022年9月取材)

これに対し―

被告:
「お金については、返済を求められても無いので返すことができないというほかない」
「選挙に関しても1000票くらい余裕があると思っていた。結果に影響しないと思っていた」「離婚できなかった根拠は何もないことをわかってほしい」

現場の状況と痕跡について

被告:
「希美はトイレに行った格好だったのでは」
「ガラス戸が開いていることが分かり、事務所に入って電気を付け、戸を閉めようとしたのではないか。その際、犯人と鉢合わせし、パニックに陥ってしまったのではないか」

事件現場
事件現場

希美さんのパジャマから家族以外のDNAが検出されたという弁護側の主張なども踏まえ―

被告:
「第三者が犯人だと証明していると私は思う」

リスクと実行可能性について

続いて、被告は、自ら犯行を行った場合に失敗する確率などについて説明した。

被告:
「違和感、リスクが多すぎると思いました」
「議員会館を誰にも見られずに出ること 2割」
「議員会館に防カメがある可能性 2割」
「飲酒運転で長野ー塩尻間を無事につく、警察に見つからないリスク 3割」
「Nシステムのリスク 3割」
「塀を乗り越えて侵入するリスク、けがをするリスクなど 3割」
「希美を事務所に呼び出すリスク 5割」
「希美に抵抗されずに。抵抗されてもケガをしないリスク 3割」
「無事に(議員会館に)帰るリスク 2割」
「誰にも見られず自室に入るリスク 2割」

丸山大輔被告(2022年9月取材)
丸山大輔被告(2022年9月取材)

被告:
「実行可能性は5%に満たない。残りの95%でどこかでつまづくことになる。2つ3つ条件を外しても、十数%しか数字は上がらない」
「私の感覚では、これより数字は低い」
「第一、私が実行することはない。仮に実行したとしても、どこかで失敗するありえないことを私がやったんだとされていることを考えてほしい」

被告「仕事を失い、ひどい恥も…」

最後に丸山被告は―

被告:
「仕事を失って、ひどい恥も受けた。母を失った子を見守ることが、これからやらなければいけないこと。希美もそれを望んでいると思い、長々と話しました」

丸山大輔被告 イラスト:一色こうき
丸山大輔被告 イラスト:一色こうき

25分ほどに及ぶ丸山被告の意見陳述を終え、裁判は結審した。

今後、裁判官と裁判員は非公開の評議で、判決の内容を検討する。

判決の言い渡しは、12月23日の予定。

(長野放送)

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