岩手県大船渡市で発生した山林火災で犠牲となった柴田吉郎さん(90)の長男修幸さん(63)がFNNの取材に応じ、「自分しか責められない」「早く助けに行けたら、悔やんでも悔やみきれない」と悲痛な胸の内を明かした。吉郎さんは火災が起きた翌日2月27日、自宅近くの坂道で発見された。足が悪く、火の手から逃げ遅れた可能性があるという。修幸さんインタビューの続編。

「早く助けに行けたら」

‐‐お父様が犠牲になってしまって、どんな思いですか 

本当にやっぱり自分しか責められないですよね。もうちょっと早く助けに行けたのにって、それしか頭にないですよね。誰を責めるわけでもなし、責められるわけでもなし、本当に自分がもうちょっと状況をわかって助けに行けたら、こういうことにはなっていないと思うんで。 

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‐‐途中のトンネルで2度警察に止められたという話がありましたが、お仕事中に頭によぎったりしたことはあったんでしょうか。 

すぐだったから、陸前高田の山火事があったじゃないですか。あれで鎮火してすぐだったじゃないですか、あれもしかしてまた鎮火したところから火が出たんじゃないかって会社の人としゃべってたんですよね。そういっている間に現場というか中に入っちゃったんで防災無線も聞こえない、ただ仕事してたら携帯の緊急速報で見て、合足地区が火災になったと。それですぐ走って向かったんですけど、その時はもう、さっき言ったんですけど、トンネルで止められて迂回して来たんだけど、まだ入れなくてどうしようもなかったですよね。 

「家が無くなった人はどうすれば」

‐‐ごきょうだいは 

妹。 

‐‐おふたりきょうだい 

そうそう。 

‐‐お母様は 

震災前かな、亡くなってるので。 

‐‐お仕事は 

いま、建設関係ですね。 

‐‐避難所生活を送りながら仕事に行ったりとか 

仕事は行ってないです。父のこともあるし、まだいろいろやることもあるんで、まだ全然行けてない状態です。これからもいろいろやることもあるんで、それが収まってから、仕事に行くかそれとも、そのまま、自分、岩手じゃないんですよね。北海道なんですよね、家が。だからそのまま仕事を切り替え、いろいろ用事が終われば、そのまま北海道に帰るか、こっちにいても、仮設住宅がどうなるか、亡くなった人たちはどこに避難するのか、まだ全然、情報が入ってないんで。そういうこともあるだろうし、果たして住所が違うのに仮設に住めるかどうか全然わからないので。 

‐‐このあとのご予定は 

正午近く(3月7日)からちょっと葬儀社の方に用事があって行ってくるんですよね。 

‐‐越喜来甫嶺地区は避難指示解除の検討がされていますが、もし解除されたら(※取材の翌日3月8日に解除) 

解除されたらというより、その前に家が無くなった人たちはどうすればいいのか。そういう情報も入ってこないし、ただ解除と言われても、家がある人、なんともない人は解除されれば、家がどうなっているか見にいけるけど、ただ家が無くなった人はこれからどうしたらいいのか、そういった情報も入ってこないし、果たして市のほうで、対応はしてくれていると思うんだけど、全然情報が入ってこないんで。例えば、家が焼けた人は別の避難所にまとまって入るのか情報が入ってこないので。 

父親は逃げようとして…

‐‐お父様が倒れていた場所は 

家は県道があって、県道からちょっと50メートルぐらい下がっていくんだよね。下に海岸沿いに 

‐‐お父様は家の中ではなくて 

そうそうそう。 

‐‐状況からすると、火災から 

逃れようとして、自分で歩いて登ってきた時に煙に巻き込まれたのか、炎に巻き込まれたのかはわかんないんですけど、倒れてたと。そういう情報が警察の方から遺体の確認に来てくれませんかと言われて。

‐‐煙を吸って、一酸化炭素中毒のような 

司法解剖では焼死となっていました。 

‐‐自宅の方は  

確認しに行けないって。話に聞けば、全焼だと言われてます。 

「助けてやれなくて、ごめん」

‐‐推測になりますが、お父様の火災から逃れようとした思いというのは 

足も悪いし、心臓も悪かったので、父自体、一生懸命逃げようとしたんじゃないですか。それを思うと、やっぱり、もうちょっと、どうして俺が早く助けに行けなかったんだろうって、そればっかり悔やんでますね。 

‐‐悔しい思いというのは 

あります。あります。ずっと思ってます。 

‐‐今、お父様に声かけるとしたらどんな言葉を 

ただ一言ですよね。助けてやれなくてごめん。それだけです。 

取材:2025年3月7日

(岩手めんこいテレビ)

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