歴史上起こった革命で、多くの国民が犠牲になった。
経済評論家の上念司さんの著書『保守の本懐』(扶桑社)では、現代における保守思想について数多く言及した歴史家の故伊藤隆氏(東京大学名誉教授)の考えに触れながら、“保守の本質”を解説している。
その伊藤氏によると「急進的な改革や革命思想に対して警戒心を持つという点が保守思想の基本姿勢」だという。
本書から、保守思想の基本姿勢とその対極にある思想について、一部抜粋・再編集して紹介する。
保守思想とは極めて実践的な思想
伝統を重視するということは、逆に急進的改革に対しては懐疑的な態度を取ることも意味します。
伊藤氏によれば、急進的な改革や革命思想に対して警戒心を持つという点が保守思想の基本姿勢とのこと。確かに、革命などの急激な社会的変化は、多くの場合、大衆の熱狂と暴走によってもたらされました。
しかも、それが社会に平和をもたらしたことは少なく、むしろ大きな社会的不安定をもたらしました。なぜなら、革命が既存の秩序や価値観を破壊するだけでそれに代わるものは何ももたらさなかったからです。
歴史上起こった革命では、その過程で多くの人が犠牲になりました。ロシア(旧ソビエト連邦)、中国、カンボジアなどでは多くの国民が革命の名の下に殺されたこと(粛清)もあります。
急進的な改革には大きなリスクが伴うことは歴史的な事実と言っても差し支えありません。
誤解を恐れずに言えば、保守思想は革命に反対する思想です。
しかし、それは変化そのものを拒絶する硬直化した原理主義ではありません。
むしろ原理主義的なのは革命勢力の方です。革命とはある理想を未来に見出したり、過去に見出したりして、現実や歴史的な連続性を無視して世の中を無理やりそれに近付けようとするものです。