記録的なコメの価格高騰は山形県が誇る日本酒にも影響を及ぼしている。酒蔵が仕込みの計画変更を強いられるなどしている中、県は日本酒造りに欠かせない「酒米」について、値上がり分の一部を助成する方針を打ち出した。
「コメの値上げは死活問題」
3月4日、この冬の仕込み作業が終わった山形・南陽市宮内の酒蔵「東の麓酒造」では、新酒の出荷の準備が進められていた。

この蔵では、秋にその年の造りに必要な約60トンの酒米を発注している。
コメを磨き上げて造る日本酒。粒の7割ほどを惜しみなく削るものもあり、仕込む量が多いほど、コメの価格高騰が経営に大きく影響するという。

東の麓酒造の新藤栄一常務は「資本となるお金がなければ原料を仕入れられない、新しい酒を造れない。コメの値上げは死活問題」と話す。
酒蔵への助成に4000万円計上
県産の酒米である「雪女神」「出羽燦々」「美山錦」「出羽の里」の4品種は、2023年から2024年にかけて、60kgあたり1800円から2000円値上がりした。

こうした事態を受け、県は酒米の値上がり分の半額を酒蔵に助成する方針を打ち出した。県としては初めての事業で、2月補正予算案に4000万円を計上した。

新藤常務は「価格高騰を県や消費者が分かって感じてもらって『補助が必要』と思ってもらうのはありがたい。値上がり分の半分でも本当にありがたい」と話した。
高止まり続けば価格への転嫁も視野に
日本酒造りに使われるのは酒米だけではない。県のブランド米「つや姫」を使った商品もあり、これらにもコメの価格高騰は大きく影響している。

この蔵では、つや姫を原料に造った日本酒が人気商品の一つとなっていて、年間9トンほどのつや姫を使って仕込んでいる。
2025年は当初予想したより売れ行きが好調で、追加で仕込もうと計画していた。
しかし、つや姫の価格は約7割上がっていて追加で買い付けるにはあまりに高く、諦めざるを得ないという。

新藤常務は「つや姫の値上がりがめちゃくちゃすごい、大ダメージ。60kgで2万いくらだったのが3万6000円とか。もう『えっ』という感じ。本当にもっと作りたかった。これを絞っても秋口にはなくなる可能性が高い。残念」と悔しさをにじませた。
「自慢の酒を多くの人に味わってほしい」という思いと裏腹にコメの高止まりが続けば、量と質を保つために価格への転嫁を考えざるを得ない状況だ。
(さくらんぼテレビ)