漁獲量の減少で価格高騰が続くサバ。水産庁は、漁獲枠を現在よりも7割から8割程度、減少させる検討に乗り出した。“庶民の魚”として長年親しまれてきたサバも更なる値上げで贅沢品になってしまうのだろうか。

仕入れ量少なく価格は約2倍高騰

福岡市の渡辺通りに本店を構える「梅山鉄平食堂」。旬の魚をメインとした50種類もの定食を提供している。中でも一押しは、九州産の新鮮なサバに濃厚なゴマダレを絡めた「ゴマサバ」の定食。地元の常連はもちろん、観光客からも人気の福岡名物だが、ここ最近、肝心のサバが手に入らないという。

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「なるべく魚屋にサバを搔き集めてもらって仕入れているが、1週間手に入らないこともざらにある」と話すオーナーの梅山さん。以前は、1日に40本ほど仕入れていたサバだが、最近は手に入らず、名物のゴマサバを提供できない日も多いという。

仕入れ価格は、この3年で2倍に跳ね上がり、元々、880円で提供していたゴマサバ定食を2倍近い1580円に値上げ(※日によって値段変動)。サバの塩焼きの定食も780円から1080円に値上げを余儀なくされている。大幅な値上げに梅山さんは、「非常に心苦しい」と話すも「企業努力でどうしようもなくなったら、再度、値上げしなくてはいけないと思っている」と切実だ。

梅山さんの店では、全て九州産のサバを使用していたが、最近は一部メニューで、まとまった量を確保できるノルウェー産に切り替えるなど、影響が広がっている。

福岡市民の台所、柳橋連合市場。竹森鮮魚店の竹森信介代表は、長崎・対馬産のサバの仕入れ量が少なく、サイズが小さいものも多いため、切り身で販売しているという。

「とにかく高い!大きさにもよるが、1匹の値段が2000円は超えている」と驚きを隠さない。サバの価格は、ここ数年で1.5倍~2倍に上がっている。「みんなサバが好きだから買いに来てくれるけど、お客に値段を言うのも申し訳ないような。もはや庶民の魚ではない値段です」と呆れ顔だ。

サバが獲れない! 漁獲枠8割減も

水産庁は2月、太平洋に生息するサバ類について、来シーズンの漁獲枠を今より8割ほど減らす案などを検討していることを明らかにした。2024年の漁獲枠35万3000トンから2025年7月から2026年8月の漁獲枠を8割減の約7万トンとする案と、約11万トンとする案が出ている。

背景にあるのは、サバの不漁だ。農水省の発表では、2018年のサバ類の漁獲量は、54万5000トン。年々減少していて、2023年は、26万1000トンと半減している。そのため、悪化するサバ類資源の回復に向けて漁獲枠を見直すことになったのだ。

餌少なくなりサバの成長が遅く

今、“庶民の魚”サバに何が起きているのか?専門家が指摘したのは、サバの成長速度だ。水産資源研究所グループ長の由上龍嗣さんは、「餌となるプランクトンが少ない状況なので成長が悪くなり、サバが親になるのに時間がかかっている」と話す。そのためサバが十分に成長する前に獲ってしまうため、全体として数が減っていると説明する。

今後、国の漁獲枠見直しで価格はどうなるのか?漁獲量の減少に伴いサバの卸売価格は、2014年の1キロ387円から2023年には565円に上昇している。しかし、由上さんは、今回の漁獲枠削減で、価格が急に上がる可能性は低いと予測する。「価格は今がピークに近いと考えている。漁獲枠の削減で順調に資源が回復すれば、価格は下がっていくものと考えている」。

水産庁は、2024年3月中にも来シーズンのサバの漁獲枠を決定する方針だ。

(テレビ西日本)

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