「幸福を運ぶ」ともいわれるコウノトリ。体長1.1メートル、両方の翼を広げると2メートルにもなり、国の天然記念物に指定されている。昭和30年代に初めて飛来して以来、住民らが生物多様性の保全活動に取り組んできた福井県の山間にある地区では、60年ぶりにコウノトリが飛来。住民からは歓喜の声が上がった。

越前市北日野地区に飛来したコウノトリ
越前市北日野地区に飛来したコウノトリ
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つがいのコウノトリが営巣、7年滞在

2025年2月2日、越前市北日野地区の田んぼで餌をついばむ一羽のコウノトリを地元住民が撮影した。この地区には昭和30年代につがいのコウノトリが住み、巣作りをしていた場所で、60年ぶりの飛来となる。

昭和32年に飛来したつがいのコウノトリ
昭和32年に飛来したつがいのコウノトリ

コウノトリが最初にやってきたのは、昭和32年。地区の田んぼの電柱に巣を作り始めたのがきっかけだった。当時、保護活動をしていた川崎善雄さんは「当時はツルが来たと騒いでいたが、実はコウノトリと分かった」と懐かしそうに話す。「農作業をしていた母が、横から人が来たのかと挨拶をしたらコウノトリだったと言っていた」と、大きな鳥であるがゆえのエピソードを話してくれた。

住民らがコウノトリの保護に立ち上がった
住民らがコウノトリの保護に立ち上がった

環境保護活動を続けてきた住民

当時、地元では保護会が作られ、餌になる小魚などをいけすに入れて確保するなど、コウノトリを歓迎し、見守っていた。その甲斐もあってか、つがいのコウノトリは約7年間、この地域に滞在していた。

15年前からは、集落営農組合が田んぼに水を張って餌になる生き物が生息しやすいようにしたり、農薬や化学肥料を減らしたりと、地域一体となって環境調和型農業に力を注いできた。

北日野地区のコウノトリ保護の歩み
北日野地区のコウノトリ保護の歩み

60年ぶりの飛来を歓迎

2014年には「人工巣塔」も建てられた。今回60年ぶりにコウノトリが飛来した場所が、この人工巣塔の周辺だった。川崎さんは「よう来たな、という感じ。村中で守っていかなければ」と力を込める。

越前市内で初めてコウノトリが訪れた北日野地区では、60年ぶりの飛来に住民の期待も高まっている。

福井テレビ
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