NHKの「大心理学実験」という番組では、綱引きを使って社会的手抜きをデモンストレーションしていました。

その1つとして、「綱引き連盟」に属するメンバーが参加した実験では、1人、3人、4人と集団サイズが増えても、1人あたりの力は下がりませんでした。

これは、普段から綱引きに慣れているだけではないでしょう。綱引き連盟のメンバーにとっては、一般の人よりも綱引き自体が重要な活動です。だから、集団でも真剣に取り組み、手抜きが生じなかったのだと解釈できるでしょう。

つまり、集団で行う課題に関しては、本人にとって意義深い課題を設定し、その重要性を強調することが重要となります。

目標を設定して課題への関心を高める

■1-b:目標を設定する
目標の設定もまた、課題への関心を高める上で重要です。

個人のモチベーションを説明する最重要理論に、目標設定理論というものがあります。この理論では、具体的で挑戦的な目標がパフォーマンスを向上させるとされています(※Locke & Latham(2002))。

目標設定は社会的手抜きを抑制する効果がある(画像:イメージ)
目標設定は社会的手抜きを抑制する効果がある(画像:イメージ)

これは個人のみならず、集団でもあてはまります。

目標を設定することは集団で生じる社会的手抜きを抑制する効果があることが示されています(※Schnake(1991); 小窪(2021))。

チームワークでも、目標設定は重要なものです。私たちの研究でも、チームワーク行動の1つである「目標を明確化し共有すること」は、チーム成果と明瞭な関連性が示されてきました(※縄田他(2015, 2024))。