元タレント・中居正広氏と女性との間で起きたトラブルを巡り、フジテレビが開いた最初の会見から17日で1カ月。
先週開かれた番組審議会では、問題への一連の対応などを巡り、委員からフジテレビに対して、厳しい声が相次いだ。

元検事総長・但木敬一委員長:
私の意見を一言で申し上げると、全く時代錯誤だと。地方の系列局は今度のことで、ものすごい打撃を受けています。

「番組審議会」とは、放送法で全ての事業者に設置が義務づけられている審議機関。有識者である委員から放送全般について意見をもらい、そこでの議論が今後の番組制作にも活かされる。

番組審議会の委員長を務める但木敬一元検事総長は、中居氏の問題を幹部が把握した以降も番組への起用を続けたフジテレビに対し、「問題意識が低い」「視聴者に対する裏切り」と厳しく指摘した。

元検事総長・但木敬一委員長:
それ(中居氏の問題)を会社(フジテレビ)が重大な問題だと考えずに、これはプライベートの問題だと考えたのは全然ランクが違う。さらに先をいいますとね、1年6カ月、看板番組の看板スターとして(中居氏を)使ったということについて、本当にフジテレビは自分でどれだけ反省をしているのかというのが僕には分からない。視聴者に対する裏切りじゃないですか、だましですよね。こんなことをやった男を私たちはずっと主役で使いますよっていうのは、神経そのものが非常におかしい。

審議会ではさらに、1月17日の会見についても問いただす場面があった。

元検事総長・但木敬一委員長:
聞いている人たちに納得感を得させるための努力はどれだけやったのか。

トラブルを巡りフジテレビが1回目の会見を開いたのが、ちょうど1カ月前の1月17日。
この時フジテレビは、定例で行われる社長の会見を前倒しにする形で実施した。
取り決めにのっとり、出席したのは限られた社の記者で、動画の撮影は認められなかった。その結果、“閉鎖的”な対応に大きな批判が起こった。

フジテレビ出身の神奈川県の黒岩祐治知事は会見で、「映像もないと。それを聞いた瞬間にがく然としましたね。そんなことがあり得るのかなと」と述べた。

そして最初の“カメラなし会見”から10日後の27日、再び行われた会見は、一転、フルオープンで行われた。

この会見でフジテレビの港浩一社長(当時)は、「先日の会見につきまして、一部のメディアに限定し、かつテレビカメラを入れない形で行うという判断は、テレビ局としての透明性や説明責任を欠くものでした。これまでカメラを向けて疑惑を追及してきた弊社が、カメラから逃げたと言われても仕方のないことでした。メディアの信頼性を揺るがしたことを痛感しております。視聴者、国民の皆さまに多大なご迷惑をおかけしました。改めておわびいたします。申し訳ございませんでした」と謝罪した。

午後4時から始まった会見は、日付をまたいで翌日の午前2時半ごろまで、10時間半に及んだ。

1回目の会見がクローズの形で行われるなど、会見を巡り様々な混乱が生じたことについて、番組審議会の委員長から厳しい指摘が出た。

元検事総長・但木敬一委員長:
聞いている人たちに納得感を得させるための努力は、どれだけやったのか。カメラ撮ってはダメとか、この中に入ってないグループは入っちゃダメとか、そういうことしか考えない。そうじゃなくて、どれだけの納得を得られる説明をできるのかを考えるべきですよね、当たり前のことですけど。世の中の人に、本当に我々の考え方を分かってもらうためにどうしたらいいのかは、二の次、三の次になっていませんかと思うわけです。

また別の委員からは、1月27日の約10時間半に及んだ会見で、“女性保護のため”という主張が事案の説明を避けるための“隠れみの”になっていたのではないかとの指摘もあった。

また、トラブル発生後のフジテレビの対応について、但木委員長は、「彼女(当事者)がちょっとあんまり大げさにしないでくださいと言った時にどう応じるかの問題はあると思いますけれども、今は『人材が宝』だという時代なんですよね。その宝の人材に対して攻撃をかけてきた人に対する反撃をどうするかという問題を、ちゃんと会社が考えたのか」と指摘した。

また番組審議会委員である明治大学の齋藤孝教授は、一連の問題を通してフジテレビが対応を誤った「3つの問題点」を指摘した。

明治大学教授・齋藤孝委員:
まずそれを知り得た時点でコンプライアンス委員会に言う、そして中居氏本人に聞き取りを行う、これが1点目。2点目は、番組を継続しないで打ち切る判断をすべきだったということですね。3点目は、週刊誌報道があったときに、2024年の年末に第三者委員会の立ち上げというのをセットでコメントした方が良かった。この3点ですね。

また別の委員からは、1月に番組の終了が正式に決定した、中居氏が出演する「だれかtoなかい」の放送について、松本人志氏が2024年1月に休業を発表したことを契機に番組の終了を判断できたのではないかという指摘があった。

一連の問題の“根本的な原因”の認識を問われたフジテレビの清水賢治社長は、「一番の根本、問題点は、やっぱりコンプライアンス意識の不足。人権侵害が行われたであろうということに対する危機感の薄さが、当時の社内に、その報告を受けたもののラインの中にあった」と述べた。

ついで各委員から懸念が示されたのは、番組制作に関する様々な影響だった。

元検事総長・但木敬一委員長:
系列局は今度のことでものすごい打撃を受けています。もちろんスポンサーも引いてしまいましたし、ロケ地も使わせてもらえない。

明治大学教授・齋藤孝委員:
この後CM収入等減りますね、その時に制作会社にしわ寄せが行かないようにしていただきたい。実際に番組を作っている制作会社に予算の切り詰め等がいってしまうと、いい番組を作るのが難しくなってくると思うので、フジテレビの体力というものを制作会社の方にできるだけ振り向けていただきたい。

また、他の委員からは、今後の検証番組に求めるものについて言及があった。

特に指摘されたのは「表面的な内容ではなく、古い価値観・体質をあぶり出せるかどうか」「上層部のチェックのようなものをなくして、どこまでうみを出せるか」という点だった。

最後にフジテレビの遠藤龍之介副会長が次のように締めくくった。

フジテレビ・遠藤龍之介副会長:
この数年、やっぱりフジテレビは傲慢(ごうまん)だよという言葉をずいぶん私は聞くようになって。やっぱり80年代、90年代ですごく番組が当たって、そこで“全能感”のようなものが芽生えてしまった。私も多分その1人です。それがやっぱり、傲慢さとか、無神経とか、利己主義とか、寛容さのなさとかに段々変質していったのがこの10年くらいじゃないかと思います。ものの考え方というのが、80年代から2020年代にアップデートできれば、そういうタイミングにしなくてはいけないなと思います。

イット!
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