元タレントの中居正広氏が女性アナウンサーの人権を侵害した事案を巡って、テレビカメラによる動画撮影を禁じた上に一部メディアの取材しか許可しなかった、フジテレビの会見の在り方に多くの批判が寄せられた。
一連の問題に関するフジテレビの検証プロジェクトチームは、この会見について言及したSNSでの書き込みに注目し、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻の鳥海不二夫教授に分析を依頼。一連の問題の内容よりも、“テレビカメラなし”で“クローズド”となった会見の形式や質問に回答する姿勢が批判の中心となった事が明らかになった。
1月17日の会見
問題の会見は、週刊誌などで中居氏と女性に関する報道が相次ぐ中で行われた最初の会見だった。フジテレビとして説明する場を設けなくてはいけないとの考えから、もともと1月31日に予定されていたテレビ局を担当する記者クラブとの懇親会を前倒しし、会見に変える形で開催することがまず決まった。
当初の会見予定日は1月21日だったが、一連の報道の影響で広告収入等約95億円の減収の可能性が浮上するなど状況が悪化していき、港浩一社長(当時)は15日、会見を前倒しし、2日後の1月17日に実施すると決断した。

問題は会見の形式だ。テレビ各社の社長は毎月定例で記者クラブ主催の会見に臨んでいるが、フジテレビに限らず、全社「カメラなし」で行われている。
そのため、今回の会見もテレビカメラの撮影を認めないものとなった。また、「ラジオ・テレビ記者会」「東京放送記者会」加盟社と、オブザーバーとして認められたNHKと民放キー局だけが参加し、フリージャーナリストなどの参加は認められなかった。
17日を境に急増するXのポスト
会見は午後3時から始まり約2時間にわたり行われた。会見はSNS上でどう受け止められたのか見てみる。
SNS分析ツール「Brandwatch」を使って、17日の前後にXで「フジテレビ」を含むポスト数を算出した結果は以下の通りだ。

13日 4万5451
14日 4万228
15日 10万2017
16日 16万3212
17日 27万9520
18日 28万9250
19日 30万6850
20日 24万8532
21日 22万124
会見をすると発表した16日からポストが増え始め、会見を実施した17日に急増。それ以降も会見前よりもポスト数が多くなっていて、注目されていた事が分かる。
では、どういう点が注目されていたのか。SNSなどの社会データ分析を専門とする、東京大学の鳥海不二夫教授に分析を依頼した。
擁護意見はほぼ皆無
鳥海教授には、1月16日から19日までの間、「フジテレビ」「会見」というキーワードでヒットするXのオリジナルポスト3万3744と、リポスト39万9533を対象に分析してもらった。
似た内容のポストを近くに配置する事で傾向を把握できる「ツイートネットワーク」を分析したところ、特徴的な結果が出たという。

鳥海不二夫教授:
「通常、批判と擁護という2つのパターンがある場合は、批判する人は批判しかしないですし、擁護する人は擁護しかしないので、大きく2つの塊ができることが多いことが分かっています。今回の場合は、この塊が基本的には「批判」の一つしかないということになっていました。要は批判的な意見しかなかったと言っていいんじゃないかなと思います」
SNS上では批判一色だったこの会見。ではどの部分が批判されていたのか。
批判の焦点は“閉鎖性”と“保身姿勢”に
鳥海教授の分析によると、会見前日の16日に動画撮影や生配信をNGとした会見を実施するとフジテレビが発表したため、会見の前は「NG」という単語が使われる事が多かったという。さらに会見後は、「閉鎖」「保身」などの単語が増加していたという。
鳥海不二夫教授:
「基本的には全期間に渡って、やはり閉鎖的であることを批判する、例えば『配信NG』であるとか、あとはそのまま『閉鎖的な会見』だったであるとか、『保身に走っていた』とか、そういったものが非常に多かったということが言えます」

また会見後には、「CM」や「スポンサー」という単語も急増していた。
鳥海不二夫教授:
「CMがなくなったり、スポンサーが撤退したりしたということが話題に上っていましたので、そういったものを、言い方はあまり良くないですけれども、フジテレビが困っている姿を喜んでいるというようなところが見てとれました。
要は、悪いことをしたフジテレビが懲らしめられているというのを見て、それでちょっとすっきりしているといったところはあるのかなと思います。その意味からも、やはりフジテレビに対して批判的だった人は多かったのではないかなというふうに思います」

またフジテレビはこれまで、報道機関として不祥事を起こした企業などにテレビカメラの前でオープンな会見をするように求めてきたにも関わらず、クローズドな会見を行った点を批判するポストも多かったとしている。
一連の問題の内容よりも、動画撮影を禁じて特定のメディアしか入れなかった会見のやり方や、質問に回答する姿勢が批判の中心となった事が分かった。
また、どういう人たちがポストしていたのかの分析については、「通常は特定の人たちが騒いでいるということが多いんですけれども、今回のデータを見る限りでは、一部の人たちが騒いでいるというよりは、世間一般で多くの人たちの関心を集めていたのではないかというようなところが見てとれています」との事だった。