ボランティアサークルが取り組む小児がんの支援活動は2年目を迎えた。1年目の倍近く集まった支援金は、山形大学医学部に寄付された。支援活動のリーダーの思いは、患者とその保護者にまで向けられている。

「レモネードスタンド」で支援

山形大学医学部の小児科に、集まった支援金198万8419円を寄付したのは、支援活動のリーダーで大学生の平田寧々さん。

この記事の画像(12枚)

平田さんが所属するボランティアサークル「にここえ」では、イベント会場などでレモネードを販売し、売上の一部を小児がん支援に役立てる活動をしている。

「小児がん支援活動行ってます。レモネード1本いかがですか。1本につき71円が小児がん支援に寄付されます」

レモネードを販売し、売上の一部を小児がん支援に役立てる
レモネードを販売し、売上の一部を小児がん支援に役立てる

アメリカで始まった「レモネードスタンド」と呼ばれる活動。
「にここえ」のメンバーは、2023年3月から1本200円のレモネードの販売を通して、小児がんと闘う子どもたちの力になろうと活動してきた。

2024年2月には、1年目の活動で集めた支援金約103万円を山形大学医学部に寄付。その善意は山形県内での小児がんの研究費に充てられた。

平田さんは「レモネードスタンドが小児がん支援であること、小児がんでは子どもたちが日々病気と闘っている現状をたくさん知ってもらうことを軸に、今後も活動していく」という。

小児がんとは、15歳未満の子どもが発症するがん全体を指す。
血液のがんや脳の腫瘍など症状はさまざまだが、大人のがんに比べて治療の研究が進んでいないとされている。

思いは子どもたちとその家族にも

2025年1月、山形大学附属病院の小児科病棟に平田さんの姿があった。

平田さんが1番やりたかったことは、小児科病棟のプレイルームなどで「直接子どもたちに何か還元すること」だという。

「にここえ」の活動開始からもうすぐ丸2年。集めた支援金を再び病院に寄付する時期が近づいていた。

今回はお金だけでなく、その一部を使い「子どもたちを笑顔にする形あるものを一緒に贈りたい」と考えていた。おもちゃが良いのか?それとも別のものが喜ばれるのか?色々なアイディアが頭に浮かんだが…。

子どもたちの間で流行っている絵の具のおもちゃは保護者の寄付頼りだった
子どもたちの間で流行っている絵の具のおもちゃは保護者の寄付頼りだった

病棟保育士に聞くと、今子どもたちの間で流行っている遊びは「グラスデコ」という絵の具のおもちゃだそう。小さい子どもたちが夢中で遊ぶため減りが激しく、保護者からの寄付に100%頼り、病院が買い揃えていた。

「私がいた時は、風船とかおままごととかで遊んでいた記憶が、ずっとフライパンでこうやって…」と病棟保育士に話す平田さん。

実は、自身も9歳から小児がんと闘ってきた。
同じ病気の子どもたちにとって、症状が穏やかな時、友だちと遊ぶ時間がどれほど楽しく大切かを知っている。

平田寧々さん:
退院してから来ていないので、10年ぶりくらいに来ました。ちょっと感慨深い、不思議な気持ちで今ここにいます。

平田さんのがんは寛解し、今は症状が出ることも薬を飲む必要もない。
ただ、小児がんの経験があるからこそ、子どもたちの病棟での過ごし方やニーズを踏まえたものを贈りたいと、最後まで頭を悩ませた。

そして結局、プレゼントに選んだのは人気の絵の具のおもちゃとおままごとセット、そして年上の子たちに向けた病室で楽しめるDVDだった。

さらに平田さんの気遣いは子どたちだけでなく、付き添いの保護者にも向けられていた。

「24時間ずっとお母さんが付き添いでお子さんを見守っているという状況。お母さんたちが少しでも子どものそばを離れて、ほっとひと息つける時間がとれたらいいな」と、ドトールコーヒーショップのカードを選んだ。そのほかゼリー飲料なども。

平田寧々さん:
ゼリーは、お子さんの検査の付き添いなどで忙しいと、お昼も食べ損ねてしまうということで、いつでもすぐ栄養補給できる飲むタイプ。

病気と向き合う子どもたちを思う気持ちは、平田さんの最初の主治医だった山形大学医学部小児科の三井哲夫教授に託された。

三井教授は「本当に感慨深い。みんな一緒に遊べるといいなと思う」と話した。

かつて自分を支えてくれた看護師に

平田さんは今、大学の看護学科で猛勉強を続けている。
かつて自分を支え励ましてくれた看護師のように、次は医療者として子どもたちの力になることが目標だ。

平田寧々さん:
看護の勉強ができているということがすごく楽しくて充実感を感じている。大学で勉強したこともプロジェクトに活かしていけたらと、両立を目指して頑張っている。

小児がんと新たに診断されるのは全国で年間平均2500人、山形県内で年間平均15人。治療できるがんの種類も増えてきたが、それでも2~3割の患者が命を落としてしまうそう。

小児がんの場合、一つ一つの症状の患者の数が少ないため研究に必要な症例が揃わず、薬の開発が進まないことが課題となっている。

平田さんたち「にここえ」は、小児がんの研究環境を整えるためにも社会の理解が必要だとして、2025年3月から3年目に入る支援活動を続けていくと話していた。

レモネードスタンドに学校やサークル・企業単位で協力したいという人は、「レモネードスタンドプロジェクト(山形県青年の家)」(電話:023-654-4545)まで問い合わせください。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
さくらんぼテレビ

山形の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。